こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第63回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
録音はこちらからどうぞ↓
今回のテーマは「運動」でした。
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1人目は@たけちゃん
JPRAS Open . 2023 Jul 1:37:92-101.
PMID: 37457991
こちらは、女性の乳房サイズと運動習慣の関連を評価した研究です。
ランニングコミュニティのメンバーである、乳癌既往のない女性1,9871人が対象となり、その中に乳房縮小術を受けた女性が56人、豊胸手術を受けた女性が26人含まれました。
結果としては、乳房サイズの大きな女性の方がランニングの平均速度は遅くなっており、大きくなるにつれ運動習慣が減少する傾向にありました。また、乳房が大きい女性は、乳房サイズを小さくすることで運動パフォーマンスや運動参加率が向上すると考えており、乳房サイズが運動の種類に大きく影響することが示されました。さらに、乳房縮小を受けた女性は、集団で運動する頻度、楽しみ、意欲が全体的に高まったと報告しされました。
乳房サイズが大きいことで胸、肩、首などに痛みが出ることが運動習慣が少なくなる一員のようですね。そのような原因で運動したくてもできない場合は、乳房縮小術をすることが有用かもしれません。オーストラリアでは、政府により乳房縮小施術が補助されるようです。
@たけちゃんのブログでの解説
2人目は@程々な薬剤師
Effects of beta-blockers on archery performance, body sway and aiming behaviour
BMJ Open Sport Exerc Med . 2021 May 7;7(2):e001071.
- PMID: 34040794
こちらは、β遮断薬がアーチェリーのパフォーマンスに影響を及ぼすかどうかを検討したプラセボ対照クロスオーバー試験です。
対象薬としてはビソプロロール5mg、プラプラノロール40mgが選択され、コントロール群、プラセボ群も含めて4回競技が行われたようです。血中濃度を考慮して、服用2時間後と4時間後に競技が行われていることなど、試験デザインとしては比較的十分なデザインのような気がしています。
アーチェリー等の競技では、βブロッカーは競技会においてドーピング物質として禁止されております。βブロッカーが交感神経を抑制することで緊張を和らげたり、震えを抑える効果があるためと認識しております。アーチェリーはすごく繊細な競技ですよね。
本研究の結果として、安静時心拍数や射撃時心拍数はプラセボと比べてβブロッカー両群で有意に減少したようですが、射撃成績に差はありませんでした。
模擬の競技だったということが関連しているかもしれませんし、実際に心拍数が減少しているので、影響は少なからずありそうなので、こういった精神面が重要な競技では避けた方がいいように思います。ただ、このような競技ではいわゆる「アドレナリンが出る」ことで競技成績が向上することもあるとは思いますが、それをβブロッカーが邪魔をするかもしれないですね。
3人目は@猫になりたい薬剤師
EClinicalMedicine . 2023 Jun 22:61:102056.
- PMID: 37425375
こちらは、元アマチュアおよび元プロのコンタクトスポーツ選手における認知症リスクを評価したコホート研究のシステマテックレビュー&メタ解析です。種々のスポーツが取り上げられておりますが、こちらではアメフトとサッカーを取り上げております。
結果としては、研究数は少ないですが、アメフトのプロ選手とサッカーのプロ選手、アマチュア選手でそれぞれ認知症リスクが有意に高くなっております。別々の研究なので一概には言えませんが、アマチュア選手よりもプロ選手の方がリスクの高い傾向が見受けられます。
プロ選手の方がコンタクトが激しいのことや、競技期間も長いことが要因の可能性はあるように思います。ただ、コンタクト以外の要因もありますし、認知症の種類も分からないようなので、解釈には注意が必要かと思います。
このリスクがあるからスポーツをしない、ということにはならないと思いますが、頭の片隅に置いておきたいですね。
@猫になりたい薬剤師のブログでの解説
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4人目は@zuratomo4
Heading Frequency and Risk of Cognitive Impairment in Retired Male Professional Soccer Players
JAMA Netw Open . 2023 Jul 3;6(7):e2323822. - PMID: 37459095
こちらは、45歳以上の引退した男性プロサッカー選手におけるヘディングの頻度と認知症リスクを評価した横断研究です。ヘディングの頻度は試合・練習別で集計されております。
結果としては、試合中および試合で0-5回をreferenceとし、試合・練習でいずれも「中」以上であれば認知症リスクが増加しました。またポジション別での解析では、DFのリスクが最も高く、FW、MF、GKと続いておりました。DFは一番ヘディングの機会が多いですし、GKはほとんど機械がないポジションですね。さらに、記憶を失う脳震盪の経験も認知症リスクの増加と関連したようです。
様々な未補正の交絡因子もあるような気はしますが、それでもヘディングの回数別やポジション別で予想通りの結果が出たことが、結果に信憑性を持たせているような気がします。
猫になりたい薬剤師の紹介した論文と重なる部分も多い論文ですが、サッカーをする上では致し方ない部分は大きいように思いますので、リスク因子として頭に入れておきたいですね。
5人目は@にいやん
Budesonide Versus Acetazolamide for Prevention of Acute Mountain Sickness
Am J Med . 2018 Feb;131(2):200.e9-200.e16.
PMID: 28668540
(※キャス後にスライドを修正しました)
こちらは、急性高山病予防におけるブデソニド(吸入)とアセタゾラミド(内服)およびプラセボの有効性を比較したRCTです。先行研究にてブデソニドの有効性が示唆されており、今回の研究につながったようです。急性高山病の判定には、Lake Louise質問票が用いられております。
結果としては、急性高山病予防においてブデソニド群はアセタゾラミド群に劣っており、プラセボ群と差がなかったようです。明らかにアセタゾラミドと差がありますので、今後の研究は難しそうな印象です。
しかしまあ、なかなかハードな試験ですね。重症急性高山病がアセタゾラミド群ですら30%も発症しております。脱落がなかったのはすごいです。今後同様の研究をする際は、プラセボ群は止めた方がいいような気がします。かわいそうなので…
最後は@リンコ
Sci Rep . 2021 May 19;11(1):10612.
PMID: 34011984
こちらは、高齢者のスポーツ観戦と抑うつリスクとの関連を評価した横断研究です。日本のJAGESからの研究です。現地観戦の有無、テレビ・インターネット観戦の有無にて評価されました。
結果としては、現地観戦に関しては観戦なしと比較して、年に数回および年に1-3回の観戦で抑うつリスクが有意に減少しました。また、テレビ・インターネット観戦においては、観戦なしと比較していずれの観戦群でも抑うつリスクは有意に減少しました。
私にとってもスポーツ観戦は元気の源だったりしますし、一喜一憂したり、みんなで盛り上がることは抑うつリスクを下げる要因になるのかなと思います。楽しいがあるのはいいことですよね。推しのチームが弱ければ逆効果になるかもしれませんが…
高齢になると自分でスポーツをするのは難しくなってきますので、見て楽しむこともいいのではないでしょうか。
JAGESのプレスリリース↓
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は11/15(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信予定です。
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