リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

月刊ブログ 田舎の地域医療を志す薬剤師(2024.4)(「プライマリケア視点からの病院薬剤師の役割」(日本薬学会第144年会))

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

 

日本薬学会第144年会(横浜)シンポジウム56「薬剤師にとってプライマリ・ケアとは  ~住み慣れた場所でその人らしい人生を支えるには~」にて、「プライマリケア視点からの病院薬剤師の役割」という題でお話をしてきました。

すごい人たちの中に紛れ込んでしまいました。。。

 

せっかくですので、話した内容や考えたことなどをブログに書いておきたいと思います。

 

本題の前に、

敦賀から北陸新幹線で行ってきました!

敦賀駅のホームが広くてきれいでした!北陸新幹線は初めてだったのですが、長野や栃木を通過して、何か盛大な日本旅行をした気分になりました。何より東京まで乗り換えなしで行けたのが良かったです。(結局、横浜まで行ったので東京で乗り換えましたし、ちょっと遠回りでしたが)

 

 

 

では、シンポジウムの話へ。

スライドを紹介しながら解説していきます。

まずは当院と町の紹介から。福井県にある100床未満の小規模な病院です。

まずはプライマリケアの5つの理念から、病院薬剤師のプライマリケアとの関わりについてお話ししました。これは完全に私見ですので、異論は認めます。

近接性に関しては、圧倒的に薬局薬剤師が上回っていると思いますし、病院薬剤師は決して近しい存在ではないと思います。薬剤師外来や入退院の繰り返しなどでは近しい存在になっている薬剤師もいるかもしれません。包括性においては、病院では予防や治療、リハビリなど様々な医療を提供しておりますし、どのような疾患やどのような世代でも関わりがあります。協調性では、チーム医療の一員として他職種との連携はしやすい環境ですが、一方地域住民との関わりや社会的医療資源との関わりはあまり大きくありません。継続性に関しては、近接性と同じように薬剤師としてのメインは薬局薬剤師ですが、入退院における関わりでは病院薬剤師の役割も大きいと感じております。責任性に関しては、医療者全員が担っていることだと思います。

 

「ときどき入院、ほぼ在宅」という言葉が、地域包括ケアにおいてはよく言われまして、プライマリケアにおける病院薬剤師の重要な役割は、この「ときどき入院、ほぼ在宅」をシームレスに移行するためのつなぎ役であると考えています。

患者さんにとっては在宅が日常であり生活の場です。一方、入院は非日常であり、一時しのぎの場です。そのため、我々病院薬剤師は日常である退院後の生活を想像しながら仕事を行っていくことが大切と考えております。病院と在宅では環境が異なります。在宅ではすぐ近くに医療者はいませんし、薬に関しては飲み忘れも発生します。心不全等においては、入院と在宅では食事や生活スタイルも変わるため、必要な薬の量が病院と在宅で異なることがあります。

当院には、地域包括ケア病床があり、私の主なプライマリケア実践の場となっております。地域包括ケア病床は退院までさほど急がなくてもよく、リハビリや生活環境の調整に時間を費やしているため、平均在院日数が長めとなっているのが特徴です。また、当院はサブアキュートでの入院がほとんどで、在宅生活で急に具合が悪くなった際の入院場所となっているのが現状です。具体的には、尿路感染症、誤嚥性肺炎、心不全、腰椎圧迫骨折などの入退院を繰り返しやすい疾患が多くを占めており、再入院を防ぐことにも注力しております。

 

次からは、当院での取り組みについて紹介していきます。

まず退院前カンファレンスです。退院カンファはどこでもやっているかと思いますが、病院薬剤師が参加していないという苦情を時々聞きますね。退院後の環境調整が必要な際に行われ、家族やたくさんの医療・介護関連の職種が参加されます。現状を共有し、退院後の環境を多職種で検討するとても重要な機会です。在宅をしている薬局が近隣にないため、薬局薬剤師は現在参加できておりません。

1回の退院カンファレンスがだいたい1時間程度になりますが、その中で薬の話は数分程度、その他は主に在宅での生活や環境調整の話になります。そのため、時々「薬剤師必要かな?」と思うこともありますが、自宅での生活状況や患者さん・家族の想いを聞くことで、薬剤の変更が必要な場合もありますし、想いを薬剤師も共有しておくことが重要だと考えています。また、薬剤師がチームの一員であることを家族にも他職種にも認識してもらう意味でも出席することが重要だと考えています。

 

次は施設間情報提供書です。シームレスな在宅移行にかかりつけ薬局との情報共有はかかせません。患者さんが退院される際には、入院の契機や経過、退院処方、また検査値などをかかりつけ薬局へ施設間情報提供書にて情報提供しております。私自身が薬局薬剤師だった時に退院後に来局された患者さんの薬の内容が大きく変更されており、患者さんから入院中の薬の変更を詳細に聞き取るのは難しかったために戸惑った経験が何度もありました。「入院をブラックボックスにしない!」という強い思いが私の中にあります。

 

プライマリケアにおける包括性という視点からは、「マルチモビディティカンファレンス」を行っております。参加者は医師、研修医、薬剤師で開催しております。のカンファレンスでは、「マルチモビディティ」と「慢性臓器障害」の2つの概念を用いて実施しており、再入院を防ぎ、また在宅で質の高い生活ができるよう、患者情報を整理していきます。

同じ疾患で再入院することもありますし、別の疾患で入院となることもあります。在宅でのサポート状況が十分でないために入院となるケースも少なくありません。薬剤の観点からだと、薬の副作用で、また薬が飲めなくて入院となるケースもあります。

腎機能に対して不適切な薬剤はないか、副作用リスクの高い薬剤はないか、まだ評価できていない臓器にリスクはないか、どの臓器が予後に影響を与えそうか、今後どのくらいの予後が想定されるか。そして最後のマルチモビディティのバランスモデルを使って、患者や家族に確認しておきたいことをピックアップし、患者さんのできそうなことやサポートをなるべく増やして、治療負担をなるべく減らせるよう議論します。

「マルチモビディティカンファレンス」では以下の概念を用いてカンファレンスをしております。今年中には詳しくブログに書きたいなと。

マルチモビディティ:ケースで学ぶマルチモビディティ(大浦誠先生) | 連載一覧 | 医学界新聞 | 医学書院

慢性臓器障害:慢性臓器障害の診かた、考えかた(佐藤健太先生)

 

プライマリケアを実践していく上では、将来の医療者を育てることも重要です。去年からは当院にて薬学生の実習の受け入れを始めましたし、他の職種と一緒に中学校に出向いて薬剤師の仕事の紹介をしたり、県薬剤師会主催の中高生の職場体験会の受け入れを行ったりもしています。子供達や地域住民に薬剤師の役割を知っていただくことも重要だと思っています。

過去の関連ブログ↓

 

プライマリケアという視点から考えると、地域住民との関わりは重要です。

患者さんは、病院では「病人」にカテゴライズされておりますが、自宅に帰ると「住民」として生活しています。我々も、どうしても病院では「病人」として扱ってしますし、おそらく彼らも「病人」として振舞っているのではないかと思います。「病人」と話すのと「地域住民」と話すのでは話す内容や態度が全く異なります。「病人」として接していると、自宅での生活のイメージがわかないことがありますが、地域に出ると、「病人」が元気に生活しており、そこには大きなギャップを感じることがあります。それを理解するためにも地域に出ていく必要があると感じています。

 

ここからは私が業務内、業務外で関わっている地域での取り組みについて紹介していきます。

当院では地域の皆さんの健康づくりの一環として、「出前講座」を行っております。一般的な薬の使い方や健康食品のこと、医療情報のことなどをお話ししております。薬剤師の役割を知ってもらう絶好の機会にもなっております。

2019年の出前講座の様子については、以下のブログで紹介しております。

また、町内の医療介護専門職間の連携や知識向上を目的とした勉強会である「たかケアネット」も地域での活動の1つです。当院と町、近隣の診療所とで協力し、通年のテーマを設定して年3回研修会を行っており、特に3回目に関しては地域住民も交えたグループワークを行っております。様々な立場の方が参加しますので、普段接点のない方とコミュニケーションを取ることができ、連携が深まったり、自分たちの職種をアピールすることにもつながっています。病院薬剤師をしていると病院外の関係者と接する機会が少なく、大変貴重な機会となっております。

 

次は「けっこう健康!たかはまわいわいカフェ(通称:健高カフェ)」(http://kenko-machizukuri.net/kenkocafe/index.html)です。健高カフェは毎月第3火曜に行われておりますが、毎月お題を決め、ワールドカフェ形式でおしゃべりをする場です。コロナ前は写真のような形で行っており、医療・介護関係者、行政関係者、一般住民などの様々な立場の人が集まっておりました。新型コロナウイルスのパンデミック中からは、オンライン形式で行われております。

 

その「健高カフェ」から生まれたのがこの「赤ふん坊や体操」です。「健高カフェ」のとある会で、町独自の介護予防体操が作れないか?という話から始まりました。

最初は介護予防体操を目的に作られたのですが、いつからか町民体操を目指すようになり、保育所で啓発を行ったり、町役場の始業時に体操が行われたりしております。

赤ふん坊や体操の動画↓

2年ほど前からは、毎週水曜日の朝7時から、町の中心にある公園に集まり、赤ふん坊や体操を行う朝活をしております。朝活では、体操をして、その後にコーヒーを飲みながら談笑して、計30分くらい参加者と共に時間を過ごしております。

平日の早朝に、車で駆けつける人も多いのですが、なぜわざわざみんな集まってくるのでしょうか?体操をして健康になりたいのか、コーヒーを飲みたいのか。それもあるかもしれませんが、やっぱり人と話をしてコミュニケーションを取りたいのだろうと思います。

この活動を通してソーシャルキャピタル(社会的つながり)を醸成することが我々の真の目的です。いわゆる地域志向的なアプローチもプライマリケアでは重要です。

 

こちらがまとめになります。

今回はプライマリケアに関する様々な私が参加している取り組みを紹介してきました。もちろん院内での活動に関しては、薬剤師が考えて積極的に取り組んでいかないといけません。ただし、院外での取り組み、とりわけ地域を巻き込んだ取り組みは、なかなか自分から展開していくのは難しいと思いますので、私のようにチャンスが来たら積極的に飛びついて関わっていくという手法もいいのではないかと感じております。そして何より、自分が楽しむことが大切だと思います。

 

 

さて、その後の総合討論では「学生教育の中でプライマリケアをどのように教育していくのか」「学生実習でのカンファレンスでどのような点を議論できるとよいのか」について議論をしました。まずプライマリケアの教育については、現場を見るに越したことはないと思いますので、実習が大切かと思います。5年次の実習だけでは当たりはずれがあるようにも思いますので、それ以外でいわゆる地域医療の実習を充実させる必要があるように思います。教員に十分な臨床での経験があればいいのですが…。また、実習でのカンファレンスに関してはマルチモビディティカンファレンスでよく議論をする内容であるACPや患者さんの生活・介護環境の議論を充実させることを提案しました。

 

全体を通しての感想ですが、薬学会は教育者と学生の参加がほとんどでしたので、いつもと雰囲気が違いましたし、質疑応答も教育の内容が中心でした。もうちょっとそちら向けの話をしないといけなかったかなと少し反省しています。発表した面々は活躍中のみなさんですので、素晴らしい取り組みの数々でした。まだまだ教育が行き届いていないことを実感しましたが、私自身も勉強不足であり、今後教育をどうしていけばよいのかは悩ましく感じました。特にプライマリケアの基礎については知識も考え方も十分である気づきました。また、学会での発表などを含めて、もっと発信していく必要性についても感じました。

今回は大変貴重な経験となりました。お誘いいただきました皆様、ありがとうございました。

 

プロ野球のシーズンとなりましたね。ハマスタに寄ってきました。

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

 

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