リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第66回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2024.1.17)(フリーテーマ)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第66回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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録音はこちらからどうぞ↓

(今回は私のキャスからうまく配信できなかったため、たけちゃんのキャスから配信しております。)

 

今回は「フリーテーマ」でした。

 

 

今回のメニューはこちら

 

 

1人目は@リンコ

Reasons for Discontinuing Treatment with Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors in Patients with Diabetes in Real-World Settings: The KAMOGAWA-A Study

J Clin Med . 2023 Nov 9;12(22):6993.

PMID: 38002608

こちらは、日本の糖尿病患者におけるSGLT2iの治療中止の理由を調査した後ろ向き観察研究です。何気なく読んでみた論文でしたが、結果から考えることが多かったので紹介してみました。

調査の対象者はSGLT2iを開始した糖尿病患者766人であり、服用開始から2年間に中止した97人が評価されております。2年間なのでもっと中止率は高そうな気がしていましたが、意外と少ない印象です。

結果としては、頻尿が一番多く19.6%、次が性器感染症で11.3%、腎機能障害8.2%、尿路感染症7.2%となっておりますが、不明が23.7%あることには注意です

SGLT2iは有効性が高い分、できるだけ脱落しないように薬剤師ができることは多い気がしています。

頻尿は仕方ないのかなとも思いますが、特に投与開始初期に表れやすいので、十分注意喚起をしておく必要があると感じています。性器感染症も十分な予防策を伝えておきたいものです。

また、腎機能障害や尿路感染症は副作用ではない可能性もあると思いますので、慎重に判断したいですね。腎障害に関してはinitial dipは起こりうるものとして注意したいですし、どちらかというと腎保護的には働きますし、尿路感染症のリスクはほとんど高まらないと報告されていますので。

体重減少に関しては十分に想定できますので、体重減少がリスクになるような患者には投与しない方がいいのかもしれません。

血糖コントロールが改善した際のどの薬剤を中止するかというのも悩ましいですね。長期服用後にコントロール良好で中止になるケースが多いようですが、そこまで脱落せず続けることができたのであれば、SGLT2iは残して、他の薬を止めるという選択肢もいいのではないかと思います。

 

 

2人目は@程々な薬剤師

Comparison of the Efficacy of Ezetimibe Combination Therapy and High-Intensity Statin Monotherapy in Type 2 Diabetes

J Clin Endocrinol Metab . 2024 Jan 4:dgad714.

                            PMID: 38175670

こちらは、2型糖尿病患者にて高用量スタチン単独群と低用量または中等量スタチンにエゼチミブを加えた群とで心筋梗塞や脳卒中、死亡への影響を評価した後ろ向きコホート研究です。

結果としては、中等量スタチン群ではエゼチミブ追加にてHR0.85と有意にイベント発生を減らしました。LDL-Cはエゼチミブ併用群の方が有意に低下していたようです(74mg/dL vs 80.8mg/dL)。一方、低用量スタチンでは有意差がなかったようです。

アブストラクトしか読めてないので、気になるところが多い試験です。エゼチミブは、これまでの報告では、効果はあっても効果量は大きくなかった印象です。

結果としてのLDL-Cに差があり、ベースラインのLDL-Cも分かっておらず、エゼチミブ追加がよかったのかどうかが分からないこと、LDLの差に比べてイベント発生率の低下が大きいような印象を受けること、NNTが分からないことなど気になりますね。

あまり真に受けすぎない方がいい気はしますし、全文読めるようになれば読んでみたいですね。

 

 

        PMID: 37852649

こちらは、冠動脈疾患患者におけるロスバスタチンとアトルバスタチンの有効性と安全性を評価したオープンラベルRCTです。先ほどの論文に引き続き、韓国で行われた研究です。用量としては平均でロスバスタチン群17.1mg、アトルバスタチン群36.0mg使われており、日本より用量がかなり多いことに驚きました。

さて結果として、全死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合アウトカムは両群で差が認められず、それぞれ個別で見ても差はありませんでした。一方、安全性では治療を要する2型糖尿病の発症や白内障手術がロスバスタチン群で有意に増加しておりました。

LDLの低下はわずかにロスバスタチン群の方が大きかったようですが、イベント発生のアウトカムには寄与しなかったようです。

両剤を比較した試験はあまりなかったので、このような差が出ることには驚きました。白内障に関しては、スタチンがリスクになることすら知らなかったので、勉強になりました。すでに報告もあったんですね(PMID:24052188)。

糖尿病に関しては、気にするのであればピタバスタチンを使ったらいいと思いますし、白内障は多くの高齢者で発症するので、遅かれ早かれの問題なのかなと思ったりもします。

今年作成した院内フォーミュラリでは、LDL-Cを下げる効果の高さと副作用に差はないだろうとの判断から、ロスバスタチンを優先するようになっているので、この論文がでてちょっと焦っております。再現性があるのかを確認したいところです。

@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓

 

 

    • 4人目は@にいやん

      Janus Kinase Inhibitors and Adverse Events of Acne: A Systematic Review and Meta-Analysis

      JAMA Dermatol . 2023 Dec 1;159(12):1339-1345.

      PMID: 37851459

      こちらは、JAK阻害薬の有害事象としてのニキビ(ざ瘡)リスクを評価するために行われた、JAK阻害薬の第Ⅱ相及び第Ⅲ相試験のプラセボ対照RCTのメタ解析です。25試験、10,839人が対象となっております。

    • 結果としてはJAK阻害薬全体でOR 3.83と大幅にリスクが上昇しております。薬剤によってややオッズ比は異なりますが、試験が異なりますので、直接の比較は難しいと思います。
    • アブストラクトしか読めないので、どの論文がピックアップされたのか等が分からないのが残念ですが。
    • 実際どのくらいの割合なのかをバリシチニブ(オルケディア🄬)とウパダシチニブ(リンヴォック🄬)のIFを見てみると、バリシチニブにおいてはアトピー性皮膚炎の臨床試験では2%程度、円形脱毛症の試験では5%程度、RAやCOVID-19の試験では記載がなく、ウパダシチニブにおいてはアトピー性皮膚炎では10%、RAや乾癬、潰瘍性大腸炎では記載がなく、対象患者によって異なるのかなという印象です。
    •  

 

5人目は@zuratomo4

Penile fractures: the price of a merry Christmas

BJU Int . 2023 Dec;132(6):651-655.

PMID: 37905382

こちらは、クリスマスが陰茎骨折の危険因子であるかどうかを調べた研究です。

2005年から2021年までに陰茎骨折で入院したドイツ人3,421人を調査し、クリスマス(12/24~26)や正月(12/31~1/2)等の陰茎骨折リスクを評価しております。

結果としては、クリスマスが0.78人/日と、年間で最もリスクが高くなっておりました。月ごとでは夏休みのある6月が0.62人/日と最も多く、3月が0.48人と最も少なくなっておりました。

何でも調べる人がいるんだなと思うとともに、盛り上がり過ぎには注意しましょう…

 

 

6人目は@たけちゃん

Doxycycline Prophylaxis to Prevent Sexually Transmitted Infections in Women

N Engl J Med . 2023 Dec 21;389(25):2331-2340.

PMID: 38118022

こちらは、シスジェンダー(性自認(自分の性をどのように認識するか)と生まれ持った性別が一致している人)女性におけるドキシサイクリンによるHIV予防のための暴露後予防(PEP)の性感染症(STI)予防効果を標準治療と比較したRCTです。本試験は、HIV曝露前予防(PrEP)を行っている18~30歳のケニア人女性が対象となっております。

スライドにあるように、すでにシスジェンダー男性とトランスジェンダー女性ではドキシサイクリンによるPEPにて標準治療と比較して大幅にSTIを減らすことが確認されており、今回も50%程度の改善が期待されていたようです。

この試験の経緯が全然分からなかったのですが、@猫になりたい薬剤師のツイートを引用すると、「HIV感染予防のためのPrEP↑→コンドーム使用率↓→性感染症(STD)↑→抗生物質を用いたPEP↑(特にドキシサイクリンを用いたDoxy PEP(dPEP)↑)→CDCがPEP推奨」という経緯があるようです。

PEPは、コンドームなしの性交後72時間以内にの薬剤内服と定義されております。

なお、標準療法はPrEPとしてテノホビル(1日1回300mg)/エムトリシタビン(1日1回200mg)が行われており、ドキシサイクリンPEP群でも継続されております。

PEP、PrEPについてはこちらをご参照ください↓

PrEPに関しては、こんな動画もありました。

さて結果としては、性感染症の発症率はドキシサイクリン治療と標準治療群で有意差はありませんでした。クラミジアと淋菌のいずれにおいても差はなかったようです。有害事象にも大きな差はなかったようです。

本試験では、ドキシサイクリン使用の客観的測定のために毛髪が提出されていますが、ドキシサイクリンPEP群から無作為に選択した50例の毛髪200検体のうち、ドキシサイクリンは29.0%からしか検出されておらず、ドキシサイクリンPEPを受けるよう割り付けられた参加者の44%がドキシサイクリンを服用していない可能性が示唆されております。もしかするとアドヒアランスが悪かったのかもしれません。

この分野のことは素人なのですが、これまでの報告とは異なる国で行われていることも結果が違った要因になっているのかもしれませんし、アドヒアランスが低かったのであれば、その影響は大きいようにも思います。

他の試験とは異なる結果ですので、解釈には注意が必要な気がしています。

@たけちゃんのブログでの解説↓

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は2/21(水)22時より、「テーマ:心不全」にて配信予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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