こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第72回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
録音はこちらからどうぞ↓
今回は「フリーテーマ」でした。
今回のメニューはこちら
1人目は@程々な薬剤師
Cost-effectiveness evaluation of gefapixant for refractory or unexplained chronic cough
Academic Technology Assessment Group (ATAG) Reports 2023;1(1)
PMID: 未収載
こちらは、慢性咳嗽に対するゲーファピキサントの費用対効果を評価した研究です。ゲーファピキサントの第Ⅲ相試験であるcough-1,cough-2試験がベースとなっているようです。
cough-1,cough-2試験については、私が以前にエビテンで取り上げましたね。↓
第53回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2022.12.21)(テーマ:呼吸器疾患) - リンコ's diary
結果としては、ゲーファピキサントによる治療群のICERは1,700万円程度となり、日本のICERの閾値である500万円を大幅に上回っておりました。なお、今回の研究におけるQOLは、文献未発表のEQ-5D-5Lから推定されております。ソフトエンドポイントを対象とした費用効果分析の論文はあまり読んだことがなく、評価が難しいように感じました。同じ金額による比較でいいのかどうか。
ゲーファピキサントは副作用が多いためその扱いが気になったのですが、「有害事象の治療費用は、治療中止により改善するとの仮定に基づき0円と推計された」と記載されております。調べてみると、P2X3製剤は他にも存在していて、副作用リスクの低い薬剤もあるんですね。
あまり費用対効果は良くない薬剤のようですので、必要性は見極めていかないといけませんね。薬価が下がれば評価も変わるのかもしれませんが。
2人目は@リンコ
Dupilumab for COPD with Type 2 Inflammation Indicated by Eosinophil Counts
N Engl J Med . 2023 Jul 20;389(3):205-214.
PMID: 37272521
こちらは、COPD患者におけるデュピルマブの有効性を評価したRCTです。デュピルマブは、アトピー性皮膚炎、結節性痒疹、特発性の慢性蕁麻疹、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の適応にて発売されているIL-4/13受容体モノクローナル抗体です。
これまで、COPD患者における抗体製剤の有効性に関する臨床試験は失敗が続いておりましたが(PMID: 28893134, PMID: 31112385)、今回は果たして…
結果としては、デュピルマブ群で中等度または重度の増悪の年間発生率が有意に減少しておりました。差は0.3回/年くらいですので、3人に1人くらいで年に1回の増悪を防げる計算になります。有害事象に関しては、特に目立つものはなさそうです。
これまで失敗続きですので、いい結果が出て驚きでした。つい最近この試験の追試が行われ、同様の結果が得られております(PMID: 38767614)ので、信憑性は高そうです。
また、適応の追加申請もされているようです。
https://www.sanofi.co.jp/assets/dot-jp/pressreleases/2024/240426.pdf
次の一手の可能性が示されたのは大変嬉しい事です。薬価をどう考えるかを考えていく必要はあるかもしれません。
-
3人目は@たけちゃん
Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes
N Engl J Med . 2024 Jul 11;391(2):109-121.
PMID: 38785209
こちらは、2型糖尿病にCKDを合併している患者におけるセマグルチドの腎アウトカムへの影響を評価したRCTです。主要転帰は、主要な腎臓病イベントとし、腎不全(透析、移植、eGFR<15 mL/分/1.73 m2)、eGFR のベースラインから50%以上の低下、腎関連死亡または心血管死亡の複合、追跡期間の中央値は3.4年でした。
結果としては、主要評価項目がセマグルチド群18.7%、プラセボ群23.2%で発生し、セマグルチド群で有意に減少しておりました。アウトカム別では、あまり差はないのかなという印象です。
有害事象の懸念はあまりなさそうですので、皮下注用のセマグルチドはCKD患者にも適応できそうです。アウトカムの発生率の差はさほど大きくないかもしれませんが、比較的若い方が対象になっていることを考えると、効果は大きいのかもしれません。
4人目は@zuratomo4
Medicina (Kaunas) . 2024 May 2;60(5):758.
PMID: 38792941
こちらは、陰茎増大手術の手技に関する系統的レビューです。主要アウトカムは、陰茎寸法(長さと胴回り)の変化、手術合併症の発生率、QOLへの影響でした。
結果としてはスライドの通りとなりますが、それぞれの手技により長さや太さに効果があったようです。一部感染が認められたものもあるようです。
QOLに直結する分野ではありますが、できるだけ有効に、安全に行ってほしいものです。
5人目は@猫になりたい薬剤師
J Infect . 2024 Jun 17;89(2):106202.
- PMID: 38897240
こちらは、日本の大規模病院データベースを用いたランソプラゾールとセフトリアキソンの併用の心室性不整脈および心停止リスクを評価した後ろ向きコホート研究です。
去年JAMAに1報類似の研究が報告され、インパクトが強かったのを覚えています(PMID: 37883084)。
エビテンでも取り上げましたね。
第64回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2023.11.15)(フリーテーマ) - リンコ's diary
さて結果としては、セフトリアキソン投与中のPPI投与とスルバクタム/アンピシリン投与中のPPI投与とを比較して、心室性不整脈および心停止リスクが有意に増加しておりました。また、セフトリアキソン+オメプラゾールでも有意に増加しております。
確かにセフトリアキソン+ランソプラゾール群で増加は認められましたが、オメプラゾール群でも増加しており、一概にランソプラゾールの影響が大きいとは言えない結果かと思います。また、イベントの発症数がかなり少ないので、それもlimitationの1つかなと感じております。
気になるテーマではありますので、引き続き追っていきたいと思います。
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は8/20(水)22時より、「テーマ:夏」にて配信予定です。
よろしければご視聴くださいませ!