こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第64回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
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今回は「フリーテーマ」でした。
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1人目は@猫になりたい薬剤師
Am J Cardiol . 2023 Nov 1:206:42-48.
- PMID: 37677884
こちらは、心不全患者の入院と死亡率に対するフロセミドとトラセミドとの有効性を比較したRCTのメタ解析です。
有料論文のため、アブストラクトのみしか読めないのが残念でした。
結果としては、全死亡率には両群間に有意差は認められませんでしたが、心血管関連入院や心不全入院、全入院のアウトカムに関してはトラセミド群で有意にリスクが減少しております。
先にTRANSFORM-HF試験が報告されており、今回のメタ解析にも含まれているかと思いますが、TRANSFORM-HF試験で差のなかった心不全入院において、今回のメタ解析では差がついておりました。
大規模なRCTとメタ解析で結果が違う時の解釈が悩ましいなと感じております。今回のメタ解析は合計4,100人となっておりますが、TRANSFORM-HF試験が2,800人のため、多くはTRANSFORM-HF試験の参加者となってそうです。全文が読めていないので、もしかしたらメタ解析に含まれていない可能性もあるかもしれません。
@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓
2人目は@程々な薬剤師
Am J Clin Dermatol . 2023 May;24(3):443-451.
- PMID: 36855020
こちらは、バリシチニブの円形脱毛症への有効性を評価した2つの第3相試験であるRCTをまとめた報告です。対象となったのはSALTスコア(頭皮脱毛割合)50%以上の頭皮脱毛を有する成人の円形脱毛症であり、バリシチニブの有効性と安全性を52週間の継続投与を通じて評価されており、主要アウトカムはSALTスコア20%以下を達成した患者の割合となっております
結果として、バリシチニブ2mg群で主要アウトカムであるSALTスコア20%以下は、それぞれの試験で21.2%と24.4%、また4mg群では、40.9%と36.8%となりました。
印象としては、かなりインパクトのある結果だなと感じております。論文にはビフォーアフターの写真も載っておりますが、見た目にもかなり違いがあることが分かります。インパクトのある症例を選んで載せているのかもしれませんが…
本剤はプロペシアとは異なり保険適応もありますので、使いやすいのかもしれません(ただし薬価は高いので、同じくらいの負担になるかもしれませんが…)。一方でJAK阻害薬であるため、免疫抑制作用による有害事象には十分な注意が必要でしょう。
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3人目は@リンコ
JAMA Netw Open . 2023 Oct 2;6(10):e2339893.
PMID: 37883084
こちらは、ランソプラゾール(LSP)とセフトリアキソン(CTRX)の併用による心室性不整脈や心停止、死亡へのリスクを、他のPPIと比較した後ろ向きコホート研究です。 - 先日SNSで話題になっていたので読んでみることにしました。先行研究ではLSPとCTRXの併用はQTc間隔の延長と関連しており、どちらか一方の薬剤を単独で投与された患者と比較して、QTc間隔が男性で平均12ミリ秒、女性で平均9ミリ秒延長したことが報告されています(
- さて結果は、LSP併用群で、心室性不整脈または心停止のリスクが調整後リスク比として2.2、院内死亡としては調整後リスク比として1.6となり、LSP群で有意にアウトカムの発生リスクが高くなりました。
- これはなかなかの衝撃的な数字ですが…リスク差を考慮すると、心室性不整脈または心停止のNNHは59、院内死亡のNNHは14となります。そんなわけが…というのが第一印象です。
- いくつか気になった部分があるのですが、まずはベースラインの大幅なずれです。補正されてるとはいえ、さすがにこんなにずれていてもいいものかと、疑いたくなってしまいます。また、Limitationには、先行研究の結果からすると差が大きすぎるのではないかとの記述もあります。
- また今回の対照群のPPIはほとんどが日本で発売されていないパントプラゾールとなっています。日本では使えませんので、他のPPIでもよいのかが気になります。
- 使用日数については、キャスの時に答えられなかったのですが、Supplmentに記載されておりました。CTRXは中央値が4日、PPIは6日となっており、かなり短いです。これでそんな差が出るのでしょうか…
まだ1つの観察研究のみの報告なので、続報を待ちたいと思いますが、事実であれば大きな処方動向の変化があるかもしれません。当院はCTRXの使用量が多いですし、PPIのフォーミュラリでは推奨薬がランソプラゾールになっておりますので、影響が大きそうです。
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4人目は@zuratomo4
Association between self-reported mobile phone use and the semen quality of young men
Fertil Steril . 2023 Nov 1:S0015-0282(23)01875-7. - PMID: 37921737
こちらは、自己申告による携帯電話の使用と若年男性の精液の質との関連性を評価した横断研究です。18~22歳の兵役適性検査参加者のスイス人が研究対象となっております。研究としては、スマホの使用頻度やスマホの置き場所と精液パラメータの関連が評価されております。
結果としては、スマホの使用頻度と精子パラメータとの関連では、スマホの1日20回以上の使用で精子の数が有意に減少しましたが、それ以外ではスマホの使用頻度と精子の質としての量・濃度・数に有意差は認められませんでした。使用頻度増加とともにそれぞれの項目がややマイナスに傾いている傾向もありますが、有意な差ではなかったようです。
また保管場所としては、ジャケットでもズボンでもパラメータに変化は見られませんでした。ズボンは影響を受ける気もしましたが、大丈夫そうですね。
全体として、関連は薄そうなので、使用頻度や置き場所に関しては心配しなくてよいのかなと感じました。
5人目は@にいやん
Geriatr Gerontol Int . 2019 Jul;19(7):571-576.
PMID: 30864298
こちらは、アルツハイマー病患者の食事摂取低下や少ない食事摂取に対するリバスチグミンパッチの有効性を評価したシングルアームの前向き観察研究です。リバスチグミンはBChE阻害作用を持つのが特徴ですが、BuChEは食欲を増進させる消化管ホルモンであるグレリンを分解する作用があり、リバスチグミンパッチにて食事量が改善するのではないかと期待されたようです。
結果としては、リバスチグミンパッチ使用前と使用後では食事摂取量(g)が有意に増加し、食事摂取割合としても有意な改善が認められたようです。
さすがに参加者が少ないですし、シングルアームということで鵜呑みにはできませんが。リバスチグミンパッチの開始直後の用量が少ない段階から明らかな改善が認められているのも気になります。効果は用量依存になるのが一般的な気がします。
認知症患者の食事量低下は問題になることが多いですので、質の高い研究が出てきてほしいと思う一方、高齢者の食事量低下を薬で解決しようとするのはどうなのかな…といつも感じております。
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は12/13(水)22時より、「テーマ:出荷調整薬」にて配信予定です。
よろしければご視聴くださいませ!