リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第59回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2023.6.21)(テーマ:認知症)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第59回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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録音はこちらからどうぞ↓

 

 

今回のテーマは「認知症」でした。

 

メニューはこちら

 

 

1人目は@程々な薬剤師

Non-Pharmacological Interventions for the Hallucinations in Patients with Dementia. A Cross-Over Randomized Controlled Trial

J Clin Cases Rep . 2022;5(4):139-148. Epub 2022 Jan 31.

PMID: 36061372

こちらは、 認知症の幻覚の治療における3つの非薬理学的介入の組み合わせを比較検討したクロスオーバーRCTです。3つの非薬理学的介入は、「A:心理教育プログラム(話題を変えるなど)、B:回想療法(昔の写真を見せるなど)、C:音楽療法」で、この介入の順序を検討しております。

結果としては、「A→C→B」の順序がもっとも幻覚症状を改善させました。ただ正直なところ、よく分からない結果だな、という印象があります。他と比べて差があるような無いようなという結果のようにも思えますし、順序を変えるだけでそんなに変化があるものなのかなと。

薬物療法はどうしても副作用を伴いますので、こういった非薬物療法の研究が充実してほしいなと感じております。

 

 

2人目は@たけちゃん

Effectiveness of Nootropics in Combination with Cholinesterase Inhibitors on Cognitive Function in Mild-to-Moderate Dementia: A Study Using Real-World Data

J Clin Med . 2022 Aug 9;11(16):4661.

              PMID: 36012898

こちらは、軽度から中等度の認知症におけるChEIと向知性薬の併用による認知機能改善効果を検討した、リアルワールドデータを用いた研究です。

向知性薬としては、コリンアルホスセラート、イチョウ葉エキス、アセチルカルニチン、ニセルゴリン、オキシラセタムが用いられました。追跡期間は1年程度だったようです。

結果としては、認知症の全スコアや認知症の分類別において有意差は認められませんでした。しかし、アルツハイマー型認知症におけるコリンアルフォセレートとイチョウ葉エキスのサブグループにおいて、他の向知性薬と比較して、MMSE言語サブスケールのスコアにおいてより有意な改善を示したようです(Supplementary Materialsに詳細が載っています)。

全体としては差がありませんでしたが、サブ解析の向地性薬別では、コリンアルフォセレートとイチョウ葉エキスにおいて差が認められました。全部まとめてではなく、個別で解析した方が良かったように思いますが…

薬剤師としては、イチョウ葉エキスには抗血小板作用があるので、相互作用が心配ですね。

 

 

3人目は@リンコ

Emotional Loneliness Is Associated With a Risk of Dementia in a General Japanese Older Population: The Hisayama Study

Gerontol B Psychol Sci Soc Sci . 2021 Oct 30;76(9):1756-1766.

      PMID: 33170218

こちらは、孤独感が認知症リスクになるかどうかを評価した、久山町コホートを用いた前向きコホート研究です。久山町コホートはこんな研究にも使われているんですね。

孤独感は、「社会的孤独」「感情的孤独感」の2種類が評価されており、それぞれの内容は以下のようになっております。

社会的孤独感(3点満点。1点以上で孤独感あり)

〇困ったときに頼れる人がたくさんいますか?

〇完全に頼れる人がたくさんいますか?

〇親しみを感じる人が十分にいますか?

※はい:0点、いいえ:1点

感情的孤独感(3点満点。1点以上で孤独感あり)

〇一般的な空虚感を経験していますか?

〇周りに人がいないことが寂しいですか?

〇しばしば、拒絶されたと感じますか?

※はい:1点、いいえ:0点

結果としては、いずれかの孤独感があることは将来の認知症リスクとなり、特に感情的孤独感があることがリスクを高めるようです。

また、感情的孤独感ありの中でも、「パートナーあり」「非独居」「友人と話す頻度が月にほとんどない」群でリスクが高まることが報告されました。

孤独感が認知症リスクを高めることはそうなのかなと思いますが、「パートナーなし」「独居」の方がリスクは高そうでしたが、そうではなかったので意外な結果でした。

そういえば以前、「同居なのに孤食の男性で死亡リスク1.5倍」というJAGESからの研究が報告されていたことを思い出しました。

Eating Alone Yet Living With Others Is Associated With Mortality in Older Men: The JAGES Cohort Survey(PMID:28093448)

せっかく同居しているのに、その中で孤独感が生じることは将来の何かしらのリスクにつながる可能性がありそうですね。

こちらは、認知症患者の緩和ケアスタッフに対する研修介入の有効性を検討したクラスターRCTです。IMPETUS-Dトレーニングと通常のトレーニングとで、予定外転院や院内死亡への有効性を比較したようです。(IMPETUS-Dトレーニングについては調べてもよく分からなかったのですが、シミュレーショントレーニングの一種のようです。)

結果としては、予定外転院と院内死亡のいずれにおいてもIMPETUS-Dトレーニングの有効性は示せませんでした。国の高齢者基準の変更があったことも要因となり、スタッフの研修への参加率の低さが効果の上がらなかった原因の一つになっているかもしれないとのことです。

認知症患者の緩和ケアというのは悩ましい課題だと思います。実施方法や研修内容の見直しをして、またチャレンジしてほしいなと感じました。

 

 

最後は@zuratomo4

Ambient air pollution and clinical dementia: systematic review and meta-analysis

BMJ . 2023 Apr 5;381:e071620.

PMID: 37019461

こちらは、大気汚染と認知症の関連を評価した研究のメタ解析です。

まさかのzuratomo先生が寝落ちしておりまして…一応雰囲気で論文は読んでみました。

結果としては、いずれの物質による大気汚染も認知症リスクを高めませんでした。ややリスクを高めるような印象もありますが、95%信頼区間が1付近ですので、影響があったとしてもほとんどないと言えそうです。

解析に含まれた論文が多くあったので、注目されているテーマのようには感じました。ただ、今回の論文を読む限りではほとんど影響がないといえるのではないでしょうか。

 

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は7/19(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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