こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第57回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
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今回のテーマは「抗うつ薬」でした。
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1人目は@zuratomo
Selective serotonin re-uptake inhibitors for premature ejaculation in adult men
Cochrane Database Syst Rev . 2021 Mar 21;3(3):CD012799.
PMID: 33745183
こちらは、早漏に対するSSRIの有効性を評価したRCT論文のメタ解析です。こんな使い方が試みられているなんて初めて知りました。
ベースラインの射精潜伏期間(IELT)は0.16~1.11分であり、SSRIとしては種々のSSRIの投与がなされています。
結果としては、プラセボと比較して満足度が有意に高く、IELTの平均差は3.09分の改善が認められています。ただし、有害事象はRR3.8と多くなっていたようです。
どうやらセロトニンに興奮を鎮めるような作用があり、SSRIによりその作用が増強され、早漏の改善に効果があるようです。
大幅な改善効果が認められており、切実な悩みの種にもなりうる症状だと思いますので、有害事象のリスクはありますが、試してみる価値はあるのではないでしょうか。
2人目は@程々な薬剤師
Clin Pharmacol Ther . 2021 Aug;110(2):443-451.
- PMID: 33811324
こちらは、抗うつ薬を先発品から開始した場合のジェネリック変更時後に先発品へ戻るリスクをジェネリックから開始した場合とで比較した観察研究です。保険請求データベースを用いた10万人規模の研究となっています。
結果としては、エスシタロプラム、デュロキセチン、ベンラファキシンのいずれもにおいて、先発品からの開始群でオッズ比が大幅に高くなっております。しかし本文中には「This study suggests a low overall switch-to-brand prevalence and may support therapeutic equivalence between brand and generic antidepressants.」との記載があり、このオッズ比はさほど大きくないと捉えられているようでした。
再度の先発品への変更は精神的な影響が大きいと思いますし、特に抗うつ薬はその影響が大きいのではないかと考えられます。ジェネリックで開始した方がよさそうですし、やはり継続することが重要な薬剤だと思いますので、先発品に再変更することはやむを得ないようには思います。
3人目は@にいやん
Front Psychiatry . 2022 Oct 28;13:1012644.
PMID: 36386987
こちらは、双極性障害または大うつ病患者を対象として抗うつ薬の過多月経リスクを評価した後ろ向きコホート研究です。
抗うつ薬としてはSSRI、SNRI、NaSSaなどの様々な抗うつ薬が対象となっております。
結果として、いずれの抗うつ薬においてもプラセボと比較してオッズ比が高くなっておりました。またバルプロ酸の併用にてそのオッズ比はさらに高くなる傾向が認められましたが、95%信頼区間がかなり大きくなっております。
セロトニンには血小板凝集能を抑制する作用があり、実際に出血リスクの報告も多いのでその影響かなと思ったのですが、本文のdiscussionには抗うつ薬によって女性ホルモンに影響が出るからではないかと書かれております。バルプロ酸の影響に関しては不明な部分が多いようですが、同様の機序が考えられているようです。
機序に関しては不明な点があるようですが、過多月経の傾向が認められるのは事実のようですので、リスクを注意喚起したり、確認していく必要がありそうです。
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4人目は@リンコ
BMJ . 2009 Aug 11;339:b2880.
PMID: 19671933
こちらは、抗うつ薬による自殺リスクをプラセボと比較したRCTのメタ解析です。FDAから自殺リスクに関する注意喚起が出た時の根拠となった論文かと思われます。
結果として、自殺念慮と自殺行動の複合アウトカムについては25歳未満のリスク差が有意に上昇しており、25歳-64歳、65歳以上の群ではオッズ比、リスク差のいずれもで有意に減少しておりました。個別のアウトカムでは、25歳未満で自殺念慮に差はなかったものの、自殺行動で有意に上昇しておりました。
年齢1歳ごとのオッズ比の変化についても解析されており、それぞれのアウトカムで有意に減少傾向があることが分かりました。
一人一人の観察期間が短い(8-10週間の研究)こと、Funnel Plotなし、その他のバイアスのリスクを検討する記載も少ないこと、異質性が評価されていない対象患者がうつ以外も含まれていること、対象となったRCTが多すぎることなどが気になった部分ではあります。
全体として、25歳未満ではリスクが上昇する傾向にある一方、25歳以上の年齢層ではリスクが軽減することが示唆されました。若年層には注意が必要だと感じた一方、高齢者にはメリットが上回る可能性が高いことも分かりました。
古い論文だったので続報を調べたのですが、若年層に関しては他の論文も同じような結論になっていました。高齢者に関しては続報が見つからず、今回の結論で落ち着くのかなと感じました。
5人目は@猫になりたい薬剤師
JAMA Netw Open . 2023 Feb 1;6(2):e230147.
PMID: 36808239
こちらは、治療抵抗性うつ病患者への標準治療に加えてのシンバスタチンの効果をプラセボと比較して評価したRCTです。いくつかのパイロット試験でスタチンの有効性が示唆されたため、今回のRCTが実施されたようです。シンバスタチンはスタチンの中でも最も親油性が高く、血液脳関門を通過する可能性が最も強いと考えられたことから選択されたようです。
結果として、12週間におけるうつ病評価尺度総スコアの変化は、プラセボ群とシンバスタチン群で有意な差は認められませんでした。
残念な結果でした。アウトカムの妥当性、サンプル数、併用薬の問題などがあるかもしれませんが、これ以上進めていくのは難しいかもしれません。
最後は@たけちゃん
Erectile and Ejaculatory Dysfunction Associated with Use of Psychotropic Drugs: A Systematic Review
J Sex Med . 2021 Aug;18(8):1354-1363.
PMID: 34247952
こちらは、向精神薬の使用に伴う勃起障害と射精障害への影響を評価したRCTのメタ解析です。zuratomo先生と被り気味ですが、少し異なるアウトカムが検討されています。
こちらの研究では、SSRI、SNRIだけでなく、クエチアピンやアリピプラゾールなどの抗精神病薬も解析の対象となっているようです。
結果としては、性機能障害、勃起不全、射精障害のオッズ比がいずれも有意に上昇しておりました。先ほどのzuratomo先生の紹介した論文とは逆方向のアウトカムだと思うのですが、早漏が改善する代わりに、こちらの機能障害が発現するのかなという印象です。
google scholarで検索したら全文が読めたのですが、SNRIではプラセボと比較しての勃起不全のリスク上昇が認められた(OR6.96;95%CI:2.68-18.08)一方、SSRIでは勃起不全リスクにプラセボとの差が認められておりません(OR1.25;95%CI:0.63-2.46)。もしかすると作用機序で差があるのかもしれません。
少なからず性機能への影響はありそうですので、なかなかインタビューしにくい内容ではありますが、若い患者さんを中心に気にしておく必要はあるかもしれません。
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は5/17(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信予定です。
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