リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第53回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2022.12.21)(テーマ:呼吸器疾患)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第53回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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今回の録音はこちらからどうぞ↓

 

今回のテーマは「呼吸器疾患」でした。

 

メニューはこちら

 

 

まずは@zuratomo4

Clinical Findings among Patients with Respiratory Symptoms Related to Moisture Damage Exposure at the Workplace-The SAMDAW Study

Healthcare (Basel) . 2021 Aug 27;9(9):1112.

PMID: 34574886

こちらは、職場における湿害曝露に関連した呼吸器症状を有する患者における臨床所見についての報告です。職場の湿度障害に伴う呼吸器症状を理由に紹介された患者99名を対象としており、その多くが女性となっております。

臨床症状としては、喘息症状があるのが30%、耳鼻科の内視鏡での36%認められ、アレルギーとしてチモシーが23%、白樺が20%ありました。

今回は症状がある人を集めてきただけなので、相関関係は不明ですが、様々な症状との関連があるようです。

職場の衛生環境を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

 

次は@たけちゃん

Fluticasone Furoate/Umeclidinium/Vilanterol (FF/UMEC/VI) Triple Therapy Compared with Other Therapies for the Treatment of COPD: A Network Meta-Analysis

Adv Ther . 2022 Sep;39(9):3957-3978.

PMID: 35849317

こちらは、COPD治療におけるFF/UMEC/VI(Fluticasone Furoate/Umeclidinium/Vilanterol)3 剤併用療法と他の治療法とを比較したネットワークメタ解析です。FF/UMEC/VIと他の3剤併用療法および2剤併用とを比較した23試験が解析の対象となっております。

たけちゃんとしては、3剤から2剤に減らすのであれば、どの組み合わせが一番効果を落とさずに済むか、という観点でこの論文を読んだようです。

結果としては、増悪率としてFF/VIが最も近く、発生率比(IRR)0.85、次いでUMEC/VIが0.75となりました。抗コリンを除いたFF/VIの方が、ステロイドを除いたUMEC/VIよりも効果が近似していたことは意外でした。

キャス中にはネットワーク図がないのではないか?という話になったのですが、Supplementaryにありました。成分の組み合わせがたくさんあったので、かなり複雑になっている印象ですし、closed loopは少ないですね。(https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1007%2Fs12325-022-02231-0/MediaObjects/12325_2022_2231_MOESM1_ESM.pdf)

全体として見てみると、FF/UMEC/VIの効果が高く、特にVIが寄与していそうな印象ですが、それはそれで寄り過ぎてるんじゃないかと思ったりもしますが、どうでしょうか。

 

 

次は@にいやん

Analysis of Neuropsychiatric Diagnoses After Montelukast Initiation

JAMA Netw Open . 2022 May 2;5(5):e2213643.

PMID: 35608857

こちらは、モンテルカストと精神疾患との関連を評価したコホート研究です。

モンテルカストと精神疾患についてはFDAから警告が出されてますね。

さて論文の結果ですが、モンテルカスト暴露群において不眠症、不安・関連疾患、抗うつ薬の処方が有意に増加しておりました。確かに関連はありそうですが、NNHは一番低い不安・関連疾患や抗うつ薬の処方でも140程度になるので、それほど強い関連ではないのかもしれません。

モンテルカストと精神疾患との関連は、気にするようにしていますが、まだ中止に繋がる提案をしたことはありません。これからも注意深く観察していこうと思います。

 

 

 

次は@程々な薬剤師

SMART and as-needed therapies in mild-to-severe asthma: a network meta-analysis

Eur Respir J . 2020 Sep 10;56(3):2000625.

PMID: 32430423

こちらは、中等度から重度喘息患者におけるSMART療法の有効性を必要時のLABAやSABAと比較検討したネットワークメタ解析です。ICSの用量別で、LD(low dose)、MD(midium dose)、HD(high dose)に分けられております。なお、SMART療法のステロイドとしてはほとんどがブデソニドでしたが、一部他のステロイドも解析に組み込まれています。

結果としては、いずれのステロイドの用量群においても、SMART療法の方が必要時のLABAやSABAと比較して喘息の重症化リスクを軽減させる傾向となっております。一部有意差のついていないものもありますが、95%信頼区間が広く、症例数の問題のような気がしています。ただ、必ずしもSMART療法でなくてもいいことを意味するのかもしれません。

今回は副作用の評価がなかったのですが、SMART療法はステロイドの暴露が多くなりますので、副作用も気になるところです。

なお、キャス中にSMART療法の吸入間隔についての話題がありましたが、ブデホル「ニプロ」の指導箋には「数分あけて」との記載がありました。

 

  • こちらは、乾式粉体吸入器(DPI)の吸入アドヒアランスを検討した前向きコホート研究です。アウトカムとしては、アドヒアランスと吸入技術の両方を客観的に評価できる電子モニタリング装置(EMDs)を用いた評価とドーズカウンター、残薬カウント、治療日数をもとにしたアドヒアランスが評価されております。
  • 結果としてはEMDsでの評価は42.7%でしたが、その他のアウトカムはほぼ100%となっており、評価方法での乖離が見られました。また手技エラー率は30.1%であり、複数回の吸入や薬剤充填のみ、デバイス操作の失敗などが挙げられました。
  • 吸入手技の定期的な確認の必要性を再認識する論文ですね。吸入を持参した患者さんの吸入指導に行くと、手技が十分でないことは珍しくありません。定期的に薬局で確認していただけるとありがたいですね。
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    最後は@リンコ

    Efficacy and safety of gefapixant, a P2X3 receptor antagonist, in refractory chronic cough and unexplained chronic cough (COUGH-1 and COUGH-2): results from two double-blind, randomised, parallel-group, placebo-controlled, phase 3 trials

    Lancet . 2022 Mar 5;399(10328):909-923.

    PMID: 35248186

こちらは、慢性咳嗽患者におけるゲーファピキサントの有効性と安全性を検討した論文です。ゲーファピキサントは今年の4月に発売されたリフヌア錠ですね。

こちらの論文では、COUGH-1とCOUGH-2という2つの試験について報告されており、それぞれ12週後および24週後の24時間咳嗽頻度の平均変化量がアウトカムとなっております。なお、この2つの試験はリフヌア錠のIFに詳細が書かれておりましたので、今回はほとんど論文は読まずに、IFを参考にしております。

結果としては、プラセボと比較して15mg1日2回群では有意な改善が認められなかったものの、45mg1日2回群では有意な改善が認められております。

ただ、この薬剤には有害事象がかなり多く、味覚障害関連の有害事象が6割程度報告されております。

なかなか治療方法がなく、今回の研究でも平均咳嗽期間が11年とかなり長期間苦労されている印象の疾患です。効果はまずまず期待できそうですので、有害事象が許容できるのであれば使ってみてもよいのではないでしょうか。

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は1/18(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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