リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第48回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2022.7.20)(テーマ:貧血)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第48回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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今回の録音はこちらからどうぞ↓(2回に分かれております)

 

 

今回のテーマは「貧血」でした。

 

今回のメニューはこちら

 

 

まずは@zuratomo4

Randomized controlled trial of twice-daily versus alternate-day oral iron therapy in the treatment of iron-deficiency anemia 

Ann Hematol . 2020 Jan;99(1):57-63.

PMID: 31811360

こちらは、硫酸第一鉄の連日投与と隔日投与での効果を比較したRCTです。

連日群が「400mg/日」なのに対し、確実群が「400mg/2日に1回」と、そもそも用量が異なるようで謎ではありますが…

結果は、Hb2g/dL以上増加した人の割合において、連日投与群の方が隔日投与群より投与3週間後および6週間後で多くなっておりました。一方、有害事象は連日投与群にて多くなっておりました。

用量が異なるのでそりゃそうでしょ感がありますが、早く効果を上げたければ連日投与した方がいいのかもしれません。ただ、副作用としての吐き気の発現率は高そうなので、低用量から開始するのもいいかもしれません。

キャス中に検索して見つけた論文も参考にすると、どうやら鉄剤の投与にて血清ヘプシジンが増加し、それが鉄剤の吸収を妨げているようで、2日に1回の投与が検討されているようです。

参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29032957/https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31413088/

これらを総合して考えると、隔日投与するのであれば2日分の投与をしないと連日投与を上回れず、分2よりは分1の方がヘプシジンの上昇時間を短く抑えられるので効果的かもしれないようです。あまりしっかり読めてないので、参考程度としてください。

 

 

次は@リンコ

Effect of Oral Iron Repletion on Exercise Capacity in Patients With Heart Failure With Reduced Ejection Fraction and Iron Deficiency: The IRONOUT HF Randomized Clinical Trial

JAMA . 2017 May 16;317(19):1958-1966.

PMID: 28510680

こちらは、HFrEF患者への経口鉄剤投与が運動耐用能を改善させるかどうか検討したRCTです。

心不全と鉄欠乏の関連を目にすることが多く、実際に鉄剤を投与されている方も多くいらっしゃいますが、実際効果はどうなのかと思い調べてみました。

まず、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」を確認しました。

経口鉄剤は推奨クラスⅢ、エビデンスレベルBで効果は期待できないかもしれない…

とういことで、この推奨の元になっている論文としてガイドラインに記載されているのが今回紹介する論文です。

結果として、鉄剤投与群ではプラセボ群と比較して16週後の最大酸素摂取量や6分間歩行距離に有意な差は見られませんでした。血清鉄濃度やTsatは有意に改善させておりました。

これを見る限りではあまり効果はなさそうですね。ただ、投与期間が短い気もするので、もう少し長期間の投与での効果を見てみたい気もしました。

あとは比較的若年層で肥満の方が対象となっている研究なので、やせ型の高齢者では結果が異なるかもしれません。

一方で、静注鉄であるカルボキシマルトース(フェインジェクト🄬)の有効性についてもガイドラインには記載されております。以下の2つの論文が引用されております。

Ferric carboxymaltose in patients with heart failure and iron deficiency

Rationale and design of the CONFIRM-HF study: a double-blind, randomized, placebo-controlled study to assess the effects of intravenous ferric carboxymaltose on functional capacity in patients with chronic heart failure and iron deficiency

これらの論文では、やや症状の改善がみられており、使うのであれば静注の方がいいのかもしれません。

 

 

次は@猫になりたい薬剤師

The Efficacy and Safety of Vitamin C for Iron Supplementation in Adult Patients With Iron Deficiency Anemia: A Randomized Clinical Trial

JAMA Netw Open . 2020 Nov 2;3(11):e2023644.

PMID: 33136134

こちらは、鉄欠乏性貧血の経口鉄補充へのビタミンC製剤併用の有効性を検討したRCTです。

今回は@猫になりたい薬剤師が不在でしたので、先生のブログを見ながら進めていきました。

結果としては、ビタミンC併用群と非併用群を比較したところ、3か月投与の2週間後においてヘモグロビン値の変化は有意差がなかったようです。有害事象も変わりはなかったようです。

@猫になりたい薬剤師のブログでは下のように解説されております。

食べ物からの鉄は非還元型であるFe3+で存在しており、ビタミンCや有機酸によりFe2+に還元されることで体内への鉄吸収が増加すると考えられます。一方で、医療用医薬品は、還元型の鉄Fe2+として体内に供給可能な硫酸鉄徐放剤や有機酸鉄(フェロミア®️やフェルム®️など)です。理論的には、これらの医療用医薬品にビタミンCを併用しても吸収効率の増加は期待できないと考えられます。

世の中的には鉄剤処方時にビタミンC製剤が処方されることも多くあったようですが、残念ながら意味はなさそうです。

 

 

次は@程々な薬剤師

Effects of erythropoietin on cycling performance of well trained cyclists: a double-blind, randomised, placebo-controlled trial

Lancet Haematol . 2017 Aug;4(8):e374-e386.

PMID: 28669689

  • こちらは、エリスロポエチン製剤が自転車の競技能力を高めるかどうかを検討したRCTです。エリスロポエチン製剤はドーピング禁止物質であり、スポーツファーマシストとしてはすごく興味深い論文です!

  • エリスロポエチン製剤として、エポエチンαを週に6000IUを8週間投与する群とプラセボ群とで比較しております。
  • 結果としては、最大運動負荷(maximal power output)や最大酸素摂取量(maximal oxygen consumption)は有意に高くなっておりますが、この差が何を意味するのかがイマイチ分かっておりません。レースタイムとしては有意差が出なかったようです。
  • もっと明らかな効果が出るのかなとも思いましたが、意外とそうでもなかったです。投与期間としては、ヘモグロビンの上昇も見られているので十分な気がします。投与量はもっと多ければ違う結果になったのかもしれません。

ドーピングの禁止物質は作用機序から禁止とされることが多いので、投与しても運動能力を高めないということがはっきりすれば、禁止物質から除外されることもあるのでしょうか。機序だけに目を向けず、実際のアウトカムはどうなのかにも目を向けたほうがいいのかもしれません。でも、用量が無限に使えるようになるのも問題ですし、やっぱり一律規制する方がいいのかもしれません。

こちらは、鎌状赤血球症の方が勃起不全になりやすいかどうかを検討した疫学的な研究です。

鎌状赤血球症( 異常ヘモグロビン症)は,ほぼ黒人だけに生じる慢性溶血性貧血である。ヘモグロビンS遺伝子がホモ接合性に遺伝することによって生じる。鎌状の赤血球は血管の閉塞を引き起こし,溶血を起こしやすいことから,重度の疼痛発作,臓器虚血,および他の全身性合併症につながる。急性増悪(クリーゼ)が頻繁に起こることがある。感染症,骨髄無形成,または肺病変(急性胸部症候群)を急性発症し,死に至ることがある。貧血がみられ,通常は末梢血塗抹標本で鎌状赤血球が明らかに認められる。診断にはヘモグロビン電気泳動を要する。疼痛発作は鎮痛薬およびその他の支持療法で治療する。ときに輸血を要する。細菌感染に対するワクチン,抗菌薬の予防投与,および積極的な感染症治療は延命につながる。ヒドロキシカルバミドによりクリーゼおよび急性胸部症候群の頻度が減少する場合がある。

(MSDマニュアルプロフェッショナル版より)

また、

若い男性では、しばしば痛みを伴う持続性の勃起( 有痛性持続勃起症)が起こることがあります。持続勃起症の発症により、陰茎が二度と勃起しなくなるほどの回復不能な損傷を受けることがあります。

(MSDマニュアル家庭版より)

とのことです。

始めて聞いた病名ですが、比較的重篤な疾患のようですね。

こちらのnoteにて疾患について@たけちゃんが詳しく書いてます。

さて本研究では、過去6ヶ月に2回以上虚血性持続勃起症のエピソードの方を対象に勃起不全かどうかを調査したところ、鎌状赤血球症の方ではそうでない方と比較してOR 4.7と、鎌状赤血球症の方で勃起不全をきたすリスクが高まることが分かりました

辛い症状がたくさん見られる疾患なんですね。勉強になりました。

@たけちゃんのブログでの解説↓

 

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は8/24(水)22時より、テーマは「費用効果分析」にて配信する予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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