リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

月刊ブログ 田舎の地域医療を志す薬剤師(2022.7)(初めての学生実習受け入れ)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

 

先日、初めて薬学生の実習生の受け入れを行いました。認定実務実習指導薬剤師は数年前に取得していたのですが、なかなか環境が整わず今回が初めての受け入れとなりました。

現在薬学生の実習は、まず薬局実習11週間、次に病院実習11週間の計22週間となっております。私の住んでいる県では、病院実習を2つの病院で受けることとなっており、前半の5週間と後半の6週間に分かれます。今回は前半の5週間の受け入れを行いました。

私自身は4年生卒であり6年生の実習のことをあまりよく知らなかったので、後輩に教えてもらいながら準備をしておりました。本当にありがたかったですね。

 

さて実務実習初日は、当院の紹介をしたり、病院薬剤師の業務内容を紹介したりとオリエンテーション。「えっ、当直ないんですか!?」と言われてしまいました。やっぱり病院って当直のイメージがありますよね。まあうちは薬剤師の常勤が2人ですから日当直をすればたぶん死にます(笑)。当直のない病院もあることを知ってもらえてよかったなと。当直がないのは働き方として楽ではありますが、給料がね…

 

1週目は、薬局では扱わなかった注射の業務や教育をメインで行いました。と言っても、当院には安全キャビネットがなく、外来ケモはなく、薬剤師が混注することはない病院ですので基本的なことだけ。1週目は他にもカルテの見方を教えたり、検査値の学習もしましたね。

毎週テーマを設定してレクチャーを行ったのですが、1週目は「注射・輸液」、2週目は「肝腎」、3週目は「抗生剤」、4週目は「EBM」、5週目は「高齢者医療(認知症・せん妄・ポリファーマシーなど)」をテーマにしました。できるだけ当院の業務に合わせて基本的なことを中心にテーマを決めました。教えたいことはたくさんありましたけど、キリがないですからね。絶対に国試には出ないよな、と思うことも多々あったのですが、働いていく上では必要な知識ではありましたので、「絶対に国試には出ないけど」といって教えていました。

EBMに関してはブログ書いたりエビテンを配信したりしているのですが、なかなか教育の機会がなく不安だったのですが、やってみると…

やっぱり得意でした(笑)

実際に実習生と一緒に呼んだ論文を以下に紹介しておきます。

・RCT

Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes

・前向きコホート研究(これ盛り上がりました!)

Long-term alcohol consumption in relation to all-cause and cardiovascular mortality among survivors of myocardial infarction: the Health Professionals Follow-up Study

・症例対照研究

Proton pump inhibitor and histamine 2 receptor antagonist use and vitamin B12 deficiency

メタ解析も読みたかったのですが時間がなかったので、次はメタ解析もやりたいですね。

 

他には、毎朝一緒にカルテを見ながら症例の紹介をしたり、治療の方針を説明したり、フォローのポイントを解説したりしました。基礎的な知識が十分ではないので補いながら進めました。それは仕方ないと思いますし、逆にいえば薬剤師として働いていくには多くの知識が必要なんだと改めて実感しました。

その他、カンファレンスや回診などの多職種が集まる機会には積極的に参加してもらっていました。当院のカンファレンスの特徴は、「薬の話があまり出ない」ことです。入院中に特別な治療が必要なケースは多くなく、むしろ治療後の自宅での生活が議論の中心となることが多いです。入院をきっかけにADLが低下したり、また入院前からギリギリの環境で生活していたりするので、退院後に生活できるように環境調整が必要なことが多いです。薬剤師としては物足りないのかもしれませんが、実際患者さんの生活な中で薬が関わるのはごく一部ですので、それを理解することは重要だと思います。その中で薬剤師がどのように関わっていくべきかを考える必要があります。

 

調剤は薬局で十分に行っていたようでスムーズにできていました。なので調剤は少なめにしました。調剤するよりは現場でしか学べないことを多く学んでほしかったのでちょうどよかったです。

服薬指導に関してはあまり慣れてないようだったので、積極的に行ってもらいました。ただ当院は認知症患者の割合が多いので、それほど件数は上がらなかったです。患者とのコミュニケーションスキルは薬剤師にとって非常に重要なものであると認識していますし、経験するしかないですからね。

 

実習の教育方針としては、当院でしか学べないこと、私の得意なことを重点的に教えることにしました。去年の新人教育とは全く逆の方針でしたね。新人教育の際は、当院でやっていることが全てではないし、当院での業務内容やルールに捉われないでほしいと思い、できるだけ幅広く、いろんなやり方があることを伝えていました。今回の実習では、病院はこの後にもう1施設ありますし、病院の機能は様々ある中で、当院では薬剤師がどのような働きをしているのかを伝えるのかが重要だと思いました。小規模病院の特徴を十分に理解してほしいという思いがありました。せっかく2施設で学ぶのですから、それぞれの特徴をしっかり捉えられた方がいいかなと。将来の就職の際の参考にもなると思いますし。

当院は規模が小さい病院ですので、学べないこともたくさんあります。それは後半のより規模の大きい病院に任せました。当県での実習は2つの病院を実際に中に入ってみることができるので、ほんといいなと思います。

 

昔を振り返ってみると、私の受けた病院実習は印象が最悪で、絶対に病院には就職しない!と決心したほどでした。かといって薬局実習が充実していたかと言われると、そうではなかったのですが。正直なところほとんど記憶はないのですが、調剤とか製剤とかしてましたかね。あとはひたすら自習していた記憶です。何かを教えてもらった記憶はあまりなく、病棟には行ってないですし、他職種との絡みはなかったような気がします。ずっと狭くて暗い調剤室に閉じこもって仕事をしている印象で、全然楽しそうじゃなかったんですよね。15年前の病院薬剤師はそんなものだったのかもしれませんが…

私自身が実習開始まで、薬剤師が何をする仕事かよく分かっておらず、心構えも含めて実習を受ける準備が全くできていなかったことにも問題があったのは間違いないですが。

このような経験があるので、病院薬剤師は楽しい!仕事するって楽しい!と思ってもらえるような実習になるように心がけました。

 

 

今回の実習での教育には、後輩にもたくさん関わってもらいました。薬剤師常勤2名体制での受け入れですから、私がずっと教えていたら私の仕事が全然終わりませんからね。

それに、教育することは多くの学びがあります。教育しようとすれば基礎から学び直すきっかけになったり、考えを整理することにもなり、気づくことも多いですからね。分からずに放置していたことも勉強しないといけません。資料を作るのも勉強にもなります。常勤2名体制なので後輩にはなかなか教育の機会がなく、このままいけば永遠に私の下っ端ですので、今回の実習はいい機会になったのではないかと思います。

そういやこんなことをツイートしてましたね。

これにつきますね。ほんと受け入れてよかったです。

終わった後も、「楽しかった!」と言ってました。私はヘロヘロでしたが(笑)

 

教育の資料作りは大変でした。実習までに準備しなかった私が悪いのですが、どうも追い込まれないとやる気が出ないようで。初めてだったのでかなり悩みながら毎日毎日作ってました。疲れました…

ただ、今や動画の時代ですので、youtubeを始め様々な媒体で優秀な動画がありましたので最大限活用しました。特によかったのがこの動画ですね。

かの有名な解質輸液塾がyoutubeでしかも無料で勉強できます。

本当におススメです。

書籍はこちら↓

感染症のレクチャーでは、「薬剤耐性(AMR)対策 eラーニングシステム」内の動画をいくつか活用しました。

あと、私が所属している学会や研究会の動画も活用させていただきました(よくない事かもしれませんが…)。

自分より上手に説明してくれる動画があるのですから、積極的に活用しないと損ですね。おかげで楽をさせてもらいましたし、より充実したレクチャーになったのではないかと思います。もちろん私も見ている動画ですので、分からない部分の補足は行いました。

そういえば、フェニトインの非線形について説明しようと思ってたら、ケアネットでこんな動画を見つけました。みんなで爆笑しながら見てました。

 

全体として実務実習を振り返ってみると、すっごく大変でしたね。初めてでペースが掴めず、どこで手を抜いていいのかが分からなかったのが大きかったですかね。薬剤師が2名しかいませんので、常にどちらかについている感じでした。

まあでも楽しかったですね。やっぱり教育は楽しいなと再認識しました。初めてだったので質を問われると反省点はあるのですが、できることは十分にやったかと思います。5週間じゃ全然時間が足りなかったですけど、不足部分は後半の病院で補ってもらえているはずですので。

反省点としては、患者さんや多職種と接する機会が少なかった点ですね。レクチャーの時間や薬剤部で過ごす時間が長すぎたように思います。病棟業務を行っていないので仕方ない部分はあるのですが。あとはSBOの項目が頭に十分入っていなかったので、SBOをもう少し意識して研修を組み立てることができればよかったように思います。

病院の規模が小さいことで、予定が立てづらかったのが辛かったですね。本当は事前に詳細なスケジュールを出すべきだと思いますが、何が起こるのかが分からないのが小規模病院でして。年に1回あるかないかのイベントも多いですし。でもその年に1回のイベントをいくつか引いていたので、引きが強い子だなと。

 

それと今回の学生実習に当たっては、ブログで何度か書いております「患者中心の医療の方法」の輪読会をしていることが大変役に立ちました。

「患者中心の医療の方法」の第3部(8~12章)は「患者中心の医療の方法の学習と指導」であり、学生・研修医教育についてちょうど学んだところでした。ここで学んだことを思い出しながら実習を進めておりました。

長くなるので、それについてはまたの機会にでも書いていきたいと思います。

 

さて、学生実習は秋にも受け入れがあります。今度は病院実習の後半6週間を受け入れます。今回の反省を活かしながら、楽しい研修ができればと考えております。

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

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