リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第47回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2022.6.15)(フリーテーマ)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第47回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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今回の録音はこちらからどうぞ↓(久しぶりに配信がうまくいかず…6回に分かれております)

 


 

今回は「フリーテーマ」でした。

 

今回のメニューはこちら

 

 

まずは@程々な薬剤師

Phase 3 randomized, placebo-controlled, double-blind study of lasmiditan for acute treatment of migraine

Brain . 2019 Jul 1;142(7):1894-1904.

PMID: 31132795

こちらは、ラスミジタンの片頭痛への有効性と安全性を評価したRCTです。先日発売されましたレイボー🄬錠の国外第3相試験ですね。プラセボ群を対照群として、3つの用量で検討されております。添付文書上の用量は、ベースラインが100mgで、50~100mgの間で調節可能となっております。「5-HT1F受容体作動薬」という新たな作用機序で注目されているようです。

結果として、服用2時間後に頭痛から解放された患者はラスミジタン群で有意に改善し、用量が多いほど改善率は高かったようです。割合としてはプラセボ群で21%、ラスミジタン群でそれぞれ28%、31%、38%となっておりました。

また、最も不快な症状(MBS)から解放に関してもラスミジタン群で有意に改善し、こちらも用量が多いほど改善率は高かったようです。割合としてはプラセボ群で33%、ラスミジタン群でそれぞれ40%、44%、48%となっておりました。

有害事象としては、浮動性めまい、傾眠、錯覚感が多く認められたようです。

有効率は十分あるようにも思いますが、効かない人も半数以上いることに片頭痛治療の難しさを感じます。新たな作用機序ということで禁忌の要件がかなり緩和されておりますが、一方で既存薬ではみられなかった有害事象が目立っている印象です。

既存薬が使えない方や既存薬の効果が不十分な方には試してみる価値はあるのかな、という印象です。

片頭痛の治療薬は、抗CGRP抗体が発売されて劇的に変化していますが、今回のラスミジタンの発売もあり注目の領域ですね。治療が一歩先へ進むことを嬉しく思います。

 

 

次は@猫になりたい薬剤師

Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss

N Engl J Med . 2022 Apr 21;386(16):1495-1504.

PMID: 35443107

こちらは、肥満患者を対象に、カロリー制限にオートファジーダイエットの追加による体重減少効果を検討したRCTです。

オートファジーダイエットとは、16時間の断食をするダイエットの方法のことで、本研究では8時から16時の間に食事をし、それ以降は翌日の8時まで食事を摂らない手法となっています。

さて結果は、カロリー制限単独群と比較して、オートファジーダイエット追加群で有意に体重減少が認められ、その群間差は1.8kgとなりました。

差は付きましたが、この差をどう捉えるのかは人によって違うのかなと思います。

全然知らないダイエット方法でしたが、NEJMに掲載されているので期待されているのかなと。@猫になりたい薬剤師もオートファジーダイエットをされたことがあるようで、手法としては朝食を抜いて行ったとのことでした。

さて、私も最近太ってきたわけではありますが、できれば他のダイエット方法がいいです…16時間の断食は耐えられません…

@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓

 

次は@にいやん

Effect of Increased Daily Water Intake in Premenopausal Women With Recurrent Urinary Tract Infections: A Randomized Clinical Trial

JAMA Intern Med . 2018 Nov 1;178(11):1509-1515.

PMID: 30285042

こちらは、通常の飲水量に加えて1.5L追加飲水した際の膀胱炎の再発頻度への影響を検討したRCTです。女性のみ140名が対象となっております。

結果として、1.5Lの追加飲水は、追加飲水しない群と比較して12か月間の膀胱炎の再発頻度が3.2回から1.7回へ大幅に減少しておりました。また、それに伴い抗菌薬レジメンの回数にも減少が認められました。

飲水量を増やして尿量を確保することが重要なことであると再認識しましたし、再発を繰り返している方にアドバイスもできそうですね。

ただ、1.5L増やすのはかなり大変です。私自身が尿路結石をやっていますので飲水量を増やすことを勧められているのですが、なかなか難しい。1.5Lは相当な量なので、無理のない範囲で飲水量を増やすのがいいのかなと思います。

あとは、疾患によって飲水量を増やすことができない方もいらっしゃるので注意が必要ですね。

キャス中に紹介していただいた以下のメタ解析では、200mL以上の追加飲水にて尿路感染症の再発が抑えられたようです。1.5Lも追加飲水しなくてもいいかもしれません。

Increased fluid intake to prevent urinary tract infections: systematic review and meta-analysis

 

 

次は@たけちゃん

Finerenone in Patients With Chronic Kidney Disease and Type 2 Diabetes According to Baseline HbA1c and Insulin Use: An Analysis From the FIDELIO-DKD Study

Diabetes Care . 2022 Apr 1;45(4):888-897.

PMID: 35061867

こちらは、2型糖尿病とCKDを併存している患者に対すフィネレノンのベースラインのHbA1cやインスリンの有無により複合腎アウトカムへの影響が異なるかどうかを検討したRCTのサブ解析です。

フィネレノンは、先日ケレンディア🄬錠として発売されました。適応症は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」となっております。

さて、本試験はHbA1c7.5以上か未満か、インスリンを使用しているかどうかでアウトカムへの有効性を評価しております。ちなみに複合腎アウトカムは、「90日以上の慢性透析、腎移植、少なくとも4週間後に確認されたeGFRが15mL/min/1.73m2未満の持続、少なくとも4週間以上ベースラインから40%のeGFR低下が持続、または腎臓死の複合」と定義されています。

結果としては、HbA1cおよびインスリンの有無でアウトカムに差は認められませんでした。HbA1cは7.5未満では、腎アウトカム自体にプラセボと比較して差はなかったようでしたが、サブ解析なのであまり気にしなくてもいいのかもしれません。

サブ解析なので解釈が難しい部分もありますが、ベースラインによるアウトカムへの大きな差はなさそうかなという印象です。

@たけちゃんのブログでの解説↓

 

次は@リンコ

Time to Clinical Benefit of Intensive Blood Pressure Lowering in Patients 60 Years and Older With Hypertension: A Secondary Analysis of Randomized Clinical Trials

JAMA Intern Med . 2022 Jun 1;182(6):660-667.

PMID: 35532917

  • こちらは、60歳以上の高血圧患者への血圧の強化療法と通常療法を比較し、そのtime to benefitを検討した6つのRCTのメタ解析です。このRCTにはSPRINT試験、HYVET試験が含まれており、あとの4RCTは再解析がなされたようですが、その中にはSTEP試験も含まれておりました。
  • 結果としては、ハザード比0.79(95%CI:0.71-0.88)となり、通常療法と比較して強化療法で有意にMACEの発生率を減少させておりました。100人あたり1人のMACEを予防するために必要な時間(ARR=0.01)は34.4か月となっておりました。また、ARR=0.05では19.1か月、ARR=0.002では9.1か月でした。
  • time to benefitはARR=0.01を議論の中心として考えることが多いようです。約3年で100人に1人ということなので、寿命が3年未満だったら有益性に乏しいということができるかと思います。
  • 3年間服用して100人に1人となるとかなり有益性は低いようにも感じてしまいますが、高血圧患者が日本には1000万人単位でいますので、その観点からとらえると毎年何万人かのMACEを防いでいるともいえるので、インパクトは大きそうです。さらに、高血圧の薬は十年単位で服用することも多いので、それを考慮すると個人への影響も大きいのではないかと感じております。
  • 今回は60歳以上が対象ですが、高齢になればなるほどtime to benefitの期間は長くなると思いますので、それも考慮して治療方針を考えていった方がよいのかもしれません。
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    最後は@zuratomo4

    Verbal learning in the context of background music: no influence of vocals and instrumentals on verbal learning

    Behav Brain Funct . 2014 Mar 26;10:10.

    PMID: 24670048

こちらは、言語学習におけるBGMの種類による学習効果への影響を検討したRCTです。

コントロール群とinstrumental群(vocalなし;高強度 or 低強度)とvocal群(高強度 or 低強度)の5群に分けられておりますが、最終的にはコントロール群とinstrumental群、vocal群の3群にて比較されております。

結果としては、グラフを見る限りではややvocal群が劣っているようには見えますが、統計解析上では学習効果に大きな差はなかったようです。解析は複雑なのでよく分かりませんが…

これは人によって違うのかなという印象です。個人的には言語学習だったらinstrumentalの方が好きですかね。学習の種類によっても好ましいBGMは変わるのかなと思っております。

たしかにどれがいいのかなと考えたことはありますが、こうやって研究をすることは素晴らしいことだなと感じましたね。

こんな論文も紹介してくれたのでよろしければ↓

BGM のテンポの違いが作業効率に与える影響

 

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は7/20(水)22時より、テーマは「貧血」にて配信する予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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