リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

月刊ブログ 田舎の地域医療を志す薬剤師(2022.1)(「患者中心の医療の方法」の輪読会;6章「第3の構成要素:共通の理解基盤を見出す」)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!


今年になって同僚の医師と一緒に「患者中心の医療の方法」という書籍の輪読会を月1回行っております。(羊土社のホームページで一部公開されており読むことができます。)

「日本語訳での序」より

本書で述べられている「患者中心の医療の方法」は,過去50年にわたり,医療者が患者のためにケアの質を向上させることの助けになってきました.この方法は,公平性と思いやりの道徳的基盤の上に構築されました.生物医学のみに焦点を当てた方法から,患者がもつ問題の社会,感情,発達,そして家族の側面についての焦点も加えた方法へ-そのような新しい方法でケアを行いたいと考える臨床家によって,そのような臨床家のために,この方法は考案されました.医療者と患者が出会う時 ,医学の世界と患者の世界が重なります.この医療の方法は,これら2つの世界の間のギャップを埋めるために「共通の理解基盤を見出す」と呼ばれる案内を提供します.重要なことは,「患者中心の医療の方法」が患者と医療者の間にある,継続的かつ徐々に深まる人間関係を前提としていることです.

「患者中心」という用語は,しばしば明確な定義なしに使用されますが,本書では明確に定義されています.本書を読むことにより,一連の研究エビデンスによって支持され,そして医学教育で教え学ぶことが成功している「患者中心の医療の方法」について理解を深めることができるでしょう.

「患者中心の医療の方法」を使用することを支持する一連の科学的エビデンスについては,強調する価値があります.日本を含む世界で行われた研究が,患者が患者中心のアプローチを望み,それを期待していることを示しています.また,患者中心の医療の方法は,患者の健康とアウトカムを改善するのに効果的であることが示されています.そして重要なこととして,患者中心のケアは保健医療の費用を抑制する効果をもたらします.

『Patient‒Centered Medicine : Transforming the Clinical Method』の第3版にあたる本書の翻訳は,「患者中心の医療の方法」の概念と実践に没頭してきた葛西龍樹 博士と日本プライマリ・ケア連合学会の若手メンバーの献身的な仕事に委ねられました.そして彼らはそれを成し遂げました.1992年,葛西博士は,カナダのBritish Columbia大学での家庭医療専門研修中に,選択研修としてWestern大学を訪れ,Ian McWhinneyや筆者らと学びました.それが私たちの長い友情の始まりであり,その後も日本とカナダの間で多くの訪問を両方向で重ね,多くの実りある議論を生み出しました.これからも,その成果は私たちみんなへ栄養を与え続けることでしょう.

 

一緒に輪読会をしている医師たちは家庭医療医であり、これまでにこの分野を十分に勉強してきておりますが、私は初心者ですのでついていくのに必死です。いつも教えてもらいながら進めております。海外の書籍を翻訳しているため日本語としてはややこしい部分もあり、また抽象的な表現も多く、こうったのは私は得意でないので、なかなかに苦戦しております。

 

1か月に1章ずつ読み進めており、全19章なので1年半かかる計算ですね。月ごとにファシリテーター役を決めて進行しており、今回の第6章「第3の構成要素:共通の理解基盤を見出す」が私の担当でした。

せっかくですので、今回の勉強会のまとめと考えたことなどを簡単に書いていきたいと思います。

前回(第3章)のまとめはこちらから↓

 

それでは始めます!

 

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これまで医療における「医療者」の役割について考えることはありますが、「患者」の役割についてはこの「患者中心の医療」を読み始めて考えるようになった気がします。

患者の役割についてはこの章で多く取り上げられているのでその都度コメントしたいと思うのですが、まずここで患者は「自分の専門家」として取り上げられております自分のことは自分でしか知りえないですし、それをしっかり伝えていくという役割がありますね。そしてその専門家同士で、最初から患者も参加しながら共通の理解基盤を作り上げていく必要があります。

あと、患者にとって薬剤師とはどういった存在なのか、ということを問われたので考えてみました。患者にとって、医師の役割はある程度明確なんだと思います。しかし、薬剤師を含めてコメディカルの役割はぼんやりしているか、もしかしたら何の期待もないかもしれません。しかし、我々が患者にできることはたくさんあります。私たちに何ができるのか、役割が何なのかを患者に伝えていくことが、まず我々と患者との関係のスタートなのかもしれません。こんなふうに考えました。

 

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患者側に立つと、医療者から十分な説明がないというのが最もよくある不満の原因のようです。やや引用されている論文が低いので現在では改善されてきているかもしれませんが、注意しないといけないなと感じました。

 

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この書籍を読み始めて、医者にとって「診断」というのは本当に大切な仕事なんだと感じています。患者はこの診断を受けラベル付けされることで安心する方も多いのではないかと思います。それにより今の状態の説明ができ、今後の想定ができるようになるのが大きいですね。

ただ簡単に診断できないケースもあるかと思います。いくつかの可能性を列挙しながら説明をすることもあるようです。

 

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問題を定義する段階での患者と臨床家の役割について書かれておりました。

患者は何よりも情報源となることが重要です。自分自身しか知りえない情報ですので、それをしっかり伝えるのが患者の役割です。一つの情報の有無で診断に繋がるかどうかということもありますしね。それこそメモを病院に持って行ってしっかり伝えることも重要かと思います。

この段階における臨床家の役割は、患者が情報源としての情報を十分に発言できる雰囲気を作ることです。書かれているように、好奇心を持つこと、適切な質問をすることが重要ですし、臨床家からするとおかしな発言でもそれを馬鹿にするような態度ももちろんいけません。

そしてOslerの名言につながるわけです。

医療の場を出て、例えば車を買うときとか、保険に入るときとかのことを考えてみました。自分の希望をすべて伝えるのが難しかったり、変なこと聞いてないかなと不安になったりすることもあったように思います。やはり場づくりや適切な質問をすることが重要だと感じました。

 

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最後の一文にものすごくインパクトを感じました。確かにそうなんですよね、最終的に決めるのは患者ですね。納得しているようでしてないケースもよくあるんじゃないかと思います。薬を処方されたけど途中で止めた患者なんて今まで何人も見てきました。山のようになっている残薬も時々見ます。そんなことが起こらないように我々薬剤師に何ができるのかを改めて考えてみました。基本的に薬剤師の出番は医師の診察の後ですので、目標を確認して、必要な服薬指導・患者指導を行い、寄り添っていくことが重要なのかなと。簡単じゃないですけど、手を抜かずにやらないといけませんね。

 

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こちら研究は、「まあそうでしょうね」という印象ですね。患者によって、疾患や状態によって指導の方法は変えていく必要があるでしょう。

 

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指導の際、「予防」に関しては「治療」よりも難しいですよね。未知の見えないリスクの予防ですから、そう簡単に納得が得られるものではないと思います。医療者としてはより明示的な推奨をしないと理解を得るのが難しいでしょう。ただ患者の状況によって推奨度も考え方も大きく異なりますので、全員一律ではなく、その患者の今の状態に応じた的確な指導が重要となります。これもなかなか難しいですが、1回の面接ですべてを決めなくても、対話を続けながら導いていくこともできるのではないかと思います。いわゆる「ナッジ」を有効に使っていきたいですね。

また健康増進や予防を啓発する場はたくさんあります。定期受診以外でも、例えば健診だったり、健康フェアみたいな場でもいいと思います。今は町なかで活動する医療者も増えてきましたし、接点のある場で教育ができれば素晴らしいですし、常に準備しておきたいものです。

 

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これはよく見るやつですね。「同一化」というのは初めて見ましたね。ググっても全然出てこなかったですが、おそらくは維持期のさらに上の段階で、十分に行動変容ができた段階なのかなと推測します。

ステージによって伝えるべきメッセージは違いますから、面接時に的確に捉えてメッセージを出していきたいものです。

 

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今ちょうど新型コロナウイルスのワクチンの接種がなされており、予防とリスクについては考える機会が多くなっております。医療者と一般の方ではやはり考え方が少し違うのかなと感じることも多いです。個人的には、コロナ禍で非常に勉強になりました。

そして最後の一文ですね。(もしかしたら解釈が違うかもしれないのですが…)医療者はあれもこれもリスクだといいがちです。食生活、運動、喫煙などなど。そんなに規制されたら楽しくないですよね。あとは健診や検査の推奨もそうなのかもしれません。そもそもそれは予防できたり、早期発見できたりするかもしれませんけど、それだけじゃどうにもならないことも多いですし。運の要素も強いですからね。言い過ぎないようには注意しないといけないですね。薬はたまに飲み忘れてもいいですよ

 

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いわゆる「家庭医」としての医師は患者と長年の付き合いになります。患者はその間に様々な問題を抱えることになり、その時々によって医師の役割は異なってきます。元気な時があればそうでないときもある。ただ最も大切なのは、病気の時にそばにいて寄り添うことだということですよね。医師だけではなくすべての医療職に言えることだと思いますが、寄り添ってくれる人がいるだけで患者はずいぶん楽になるんじゃないかと思います。

一方患者の役割は、共通の理解基盤を見出す上で積極的に関わることと紹介してきましたが、すべてでそうでなくてもいいようです。積極的な関わりが難しいこともありますからね。医療者にプランを立ててもらい、それに従うという段階も重要なのだと思います。

 

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全体のまとめになってきました。ここで大事なのは「もし患者の価値観や好みに適さない場合、治療のアプローチを再考し改めるという誠実な申し出でなければならない。」だと思います。せっかく作ったプランでも患者から拒絶されることもあるでしょう。

押し付けたい気持ちは分かりますが、それをグッとこらえて。たまに勝手な理由をつけて断ってくる人もいますが、その時は…

 

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今回の章で「動機づけ面接」がたくさん登場したので最後に紹介しておきます。動機づけ面接では、対象者本人の中にあるものを引き出すのが重要で、医療者はそのサポート役を担います。余計な口出しをしたり、無理やり変化を促すことはいい結果につながらないことが多いので、十分に注意していきたいものです。

 

 

3章あたりまでは内容が抽象的で分かりにくい部分が多かったのですが、慣れてきたことも含めてだいぶ読みやすくなってきましたし、理解も深まってきている気がします。いい意見交換もできています。普段考えないようなことも考えられているので、すごく充実している気がします。

継続して学びを深めていきたいです。

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

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