こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第42回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
今回の録音はこちらからどうぞ↓
今回のテーマは「2021年に発売された薬」でした。
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まずは@リンコ
Cancer . 2018 Feb 1;124(3):606-616.
PMID: 29205286
今回はアナモレリン(エドルミズ🄬100mg)の国内第2相試験を取り上げました。
アナモレリンは、「下記の悪性腫瘍におけるがん悪液質:非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌」において承認されております。がん悪液質では食欲低下、体重減少、骨格筋量減少等が認められます。
さて、本試験ではステージⅢ/Ⅳの非小細胞肺がん患者の悪液質を有する患者を対象にアナモレリンの有効性と安全性を検討しました。
結果として、アナモレリン群で除脂肪体重(LBM)の有意な増加が認められました。また副次的評価項目では食欲や体重の有意な増加が認められましたが、QOLや握力、6分間歩行試験の改善は認められませんでした。なお、生存期間の中央値は、8.02か月 vs 8.21か月(HR:1.17;95%CI:0.82-1.67)で差はなかったようです。
また有害事象もいくつかの項目でアナモレリン群で高くなっていましたが、試験への参加者数が少ないため、これだけではわからない部分も大きいと思います。
いわゆるソフトエンドポイントのみの改善が認められました。これが週末期のQOL改善に寄与できているのであれば使用する価値はあると思いますが…一度試してみる価値はあるのかなと感じました。
次は@にいやん
Galcanezumab in chronic migraine: The randomized, double-blind, placebo-controlled REGAIN study
Neurology . 2018 Dec 11;91(24):e2211-e2221.
PMID: 30446596
ガルカネズマブ(エムガルティ🄬皮下注)は「偏頭痛発作の発症抑制」を効能効果として承認されました。他にも、フレマネズマブ(アジョビ🄬皮下注)、エレヌマブ(アイモビーグ🄬皮下注)が同類薬として発売されました。
さて、本研究では頭痛が月15回以上(うち偏頭痛が8回以上)の患者を対象にガルカネズマブの有効性と安全性が検討されました。
結果として、ガルカネズマブ群でプラセボ群と比較して2回程度の頭痛の減少が認められました。添付文書には他の試験もいくつか紹介されておりますが、だいたい似たような効果の大きさですね。
月に頭痛が15日以上あるうちの2,3日の減少ですので、これがどこまで効果があるのかどうかは患者にしか分からない部分も大きいように思います。薬価も高い(45,000円/本/月)ですしね。
芸能人ではオードリーの若林さんが使用されたことが知られています。
なお、ガルカネズマブは「最適使用ガイドライン」が発出されておりますので、ご留意ください。使用できる医師が専門医に限定されているので注意が必要です。
Vericiguat in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction
N Engl J Med . 2020 May 14;382(20):1883-1893.
PMID: 32222134
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ベルイシグアト(ベリキューボ🄬錠)は「慢性心不全※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」の効能効果にて承認されております。たけちゃんはたくさんの心不全の薬剤を紹介してくれてます!
- 心不全の薬剤が次々と承認される中で、やや埋もれている印象があります。
こちらは、ベルイシグアトのHFrEF患者への有効性を検討した論文です。
結果としては、CVD死と心不全の最初の入院の複合アウトカムは有意に減少していましたが、個別では有意差はありませんでした。複合アウトカムの減少は心不全入院に引っ張られている印象です。追跡期間の中央値は10.8か月ですね。血圧にはほとんど影響がないようです。
他の新不全治療薬がインパクトのある結果を残しているだけにやや物足りない印象があります。なかなか最初の段階で使用する薬剤ではないと思いますので、どの薬剤との組み合わせがより有効なのか検討していく必要があるのかなと感じました。
キャス中にはベルイシグアトのHFpEF患者への投与の論文も紹介されました。
ソフトエンドポイントですが、有効性は確認できなかったようです。
次は@猫になりたい薬剤師
Diabetes Care . 2021 Apr;44(4):952-959.
PMID: 33574125
イメグリミン(ツイミング🄬錠500mg)は「2型糖尿病」の効能効果にて承認されております。
こちらはイメグリミンの2型糖尿病患者における有効性と安全性を検討した論文です。
結果としては、24週間の投与にてプラセボ群と比較してイメグリミン群(1,000mg×2)でHbA1cが0.87%の有意な減少を認めました。特に目立った有害事象の差はなかったようです。
まだ新薬ですのでここまでのことしか分かっておりません。それなりにHbA1cを下げることがあることが分かったくらいですね。メトホルミンの後継薬としての期待もされているようですが、まだなんとも言えません。
キャス中にはメトホルミンへの追加投与の試験が紹介されていました。HbA1cへの影響については上乗せ効果が期待できそうです。
ただ、他剤では心血管イベントへの影響が検討されており、最低減それが確認されるまでは使わなくてもいいようにも思います。
次は@zuratomo4
Early Treatment for Covid-19 with SARS-CoV-2 Neutralizing Antibody Sotrovimab
N Engl J Med . 2021 Nov 18;385(21):1941-1950.
PMID: 34706189
ソトロビマブ(ゼビュディ🄬点滴静注液500mg)は「SARS-CoV-2による感染症」の効能効果にて承認されております。エビテンではいくつかのCOVID-19関連薬の紹介をしてきましたが、こちらはまだ紹介しておりませんでした。
さてこちらは、ソトロビマブのCOVID-19による入院及び死亡に対する影響を検討した論文です。
結果としてはソトロビマブ群の方が大きく入院および死亡を減らすこととなりました。有害事象もさほど変わりなかったようです。ただし、中間解析時点で有効性が十分に認められたため試験が中止となっていることに注意が必要です。また、未接種者が治験の対象となっていることも理解しておく必要があるでしょう。
カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ🄬静注)のオミクロン株への効果減弱が明らかとなり、ソトロビマブの出番が今後増えてくるかと思います。まだまだ使用できる薬剤が少ないですので、存分に力を発揮してほしいものです。
最後は@程々な薬剤師
Lancet . 2020 Jul 25;396(10246):255-266.
PMID: 32711801
アブロシチニブ(サイバインコ🄬)は「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」の効能効果にて承認されております。JAK阻害薬としては他にバリシチニブ(オルミエント🄬)とウパダシチニブ(リンヴォック🄬)が同じ適応で承認されています。
さてこちらはアブロシチニブの中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者を対象にした第3相試験です。
結果として、アブロシチニブ群の方がアトピー性皮膚炎の皮膚病変スコアである「IGAスコア」をプラセボ群と比較して有意に改善させたようです。改善の割合の差が大きいので、十分に効果が期待できるのではないかと思います。
勉強不足で他のJAK阻害薬との違いはよく分かりません…
ただしJAK阻害薬という薬剤の特性上、また薬価の問題もあり、軽々しく使える薬剤ではないと思います。既存の治療で効果が不十分な患者に対してであれば、使う価値は十分にあるのではないかと感じました。
なお、2021年に発売された薬に関しては、「新薬情報オンライン」でまとめられておりますのでご参考にされてください!
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は2/16(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信する予定です。
よろしければご視聴くださいませ!