リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

最近読んだ本;「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」

界隈ではアンサングシンデレラのドラマ化で盛り上がっておりますが…

葵みどりもいいけど、毒島花織もいいぞ!
むしろ個人的にはこちらの方が好きかもしれません。
 
今回読んだ「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」は、「薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理」の続編で、薬を題材としたちょっとしたミステリー(?)小説となっております。
トリックを暴くには薬学的な知識が必要なことが多いので、一般の方でも楽しめるのかな?とは思いますが、薬剤師である私は十分に楽しめました。
普段このような小説は読まないので、余計そのように思うのかもしれませんが。確かに、一般的なミステリー小説よりは物足りないかもしれません。
 
ということで、今回は薬剤師十数年の知識を最大限生かして推理をしながら読んでみました!
その結果は…
 
1話完敗
→全く思いつかなかったですね。(エビデンスが若干怪しいですが…)
2話惜敗(負けは負けです。。。)
→視点はばっちりだったのですが、もう一歩でした。
3話ミステリーはなさそうに思ったけど…
ただただ麻雀がやりたくなる話でしたね。実際にここを読み終えてオンライン麻雀をやってしまいましたし(笑)
4話勝利。いくつかミステリーが隠されてましたが、テレビで見たことがあって知っていたのと、知識として知っていて見抜けました。
→話の展開までは読み切れなかったので、そこまで読み切れたら最高でしたね。
 
てことで、1勝2敗でした。2話が悔やまれます…
あれは思いつかないといけないですね…
 
 
この小説では薬のことがかなり深く調べられているように思うので、読んでいて薬剤師としての+αの知識が付くのでありがたいですね。また、毒島の性格としてハッキリものを言うのですが、実際にここまでズバズバ現場で言うことは難しいと思うので、代弁してくれてる気がして嬉しいです。また、要所要所で薬剤師の職能とか知識の深さをそれとなくアピールしてくれているのもいいですね。それに、こういった小説はあまりないので、薬剤師目線で推理をしながら読み進めるのは単純に楽しいです。
 
それに何より、この小説のプロローグが魅力的なのです!
 
個人的には、このプロローグでの会話の内容が薬剤師として医療者としてとても嬉しかったというか。心の中で考えていてもなかなか口に出して言えないことをズバッと言ってくれています。秩序のない現代医療にドロップキックをしてくれているような(ミスチルファンの皆様すみません)。
その部分をいくつか引用していきます。
中の薬を出して説明する。咳止めと痰切りだけなら問題ないが、抗生剤が出ているのが気になった。風邪の原因はウイルスだから、抗生剤を飲んでも効果はない。ただし患者が子供の場合、風邪をきっかけに中耳炎を起こすケースがある。
→こんな感じで、抗菌薬適正使用の啓発がいくつかなされています!素晴らしいです!
 
「一口に医者と言ってもいろいろな考えや主義主張の人がいますからね。癌の治療やワクチンの取り扱いだって、正反対の方針を主張する医師が存在するわけで、ただ、無条件に医師の言うことだけを聞いていればいいという時代ではもうないんです。患者の側も最低限の医療や薬の知識を身につける必要があると思います」と花織は考え深げに言葉を続ける。
→ほんとそうです。医療者任せではいけなくなってきています。患者も勉強して賢くならないといけません。
 
「男女にかかわらず、自分の体のことなのに、病気や薬のことに関心を持たない人が多すぎます。これだけ情報を得やすい時代になったのだから、興味を持ちさえすればいくらでも知識を得ることができるんです。それなのにどうして興味を持とうとしないのですかね。」と花織は悔しそうに口にする。
→この部分には激しく同意します。自分のことなのにどこか他人事。こんな患者はたくさんいますね。それを自分事にしてもらうのも医療者の大切な仕事なのだとは思いますけどね。
 
「薬剤師って、本当に大変な仕事だと思います。一包化とか、疑義照会とかの作業もあるし、でも世間的には薬剤師の仕事って、ただ薬を渡すだけだと思われている。私もそれが悔しくて、知り合いやママ友にも機会があればそんな話をしているんですが、あまり反応がないのがもどかしいところです。」(薬局の事務スタッフのセリフ)
→ありがとうございます!ありがとうございます!まあでも、なかなか分かってもらえませんよね…
 
他にも紹介したい部分がありましたが、それは読んでのお楽しみということで。
 
さらなる続編を楽しみにしています!