リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第20回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2020.3.18)(フリーテーマ)

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第20回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

録音はコチラから↓


今回は「フリーテーマ」でした。

 

メニューはコチラ↓

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まずは@にいやん

Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease.

N Engl J Med. 2017 May 4;376(18):1713-1722.

PMID: 28304224

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にいやん先生が紹介してくれたのはPCSK9製剤であるエボロクマブ(レパーサ®皮下注)の国際共同試験です。

結果としては、プラセボと比較して複合アウトカムを有意に15%減少させております。

しかし追跡期間の中央値2.2年での絶対差は1.5%(=NNT:67)であり、薬価(140mg:24,000円、420mg:47,000円)であることを考えると、効果としては微妙かもしれません。ちなみに添付文書を参考にすると、日本人集団ではイベント発生率12.44% vs 5.88%;HR 0.47(0.24-0.92)となっており、もしかしたら日本人にはより効果的なのかもしれません。

こういったあたりをしっかり理解しておいて、むやみやたらに処方するのは避けたいものです。

 

 

次は@リンコ

Warfarin and the Risk of Death, Stroke, and Major Bleeding in Patients With Atrial Fibrillation Receiving Hemodialysis: A Systematic Review and Meta-Analysis.

Front Pharmacol. 2018 Nov 6;9:1218.

PMID: 30459610

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透析患者に対するワーファリンの処方はよく目にするので、当たり前に十分なエビデンスがあると思っておりました。しかし先日発表されたメタ解析(PMID: 31976865)では透析をしているAF患者へのワルファリンは、脳卒中および/または全身血栓塞栓症の有意な減少と関連しなかった(HR:0.91;95%CI:0.72-1.16)となっており、かなり驚きました。ちょうどこの論文を読んだ医師と情報交換をしたこともあり、一度しっかり論文を読んでおく必要性を感じました。まだRCTは報告されていないようなので、今回は透析患者へのワルファリンの有効性と安全性に関する観察研究のメタ解析を読んでみることにしました。

結果は、全体としては死亡や虚血性脳卒中への効果は認められず、出血リスクが高まるのみでしたが、抗血小板薬の併用がない群では虚血性脳卒中のリスクを有意に抑制しました。使用するにしてもかなり慎重に使わないといけないという印象です。

「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」には、

「心房細動に対する安易なワルファリン治療は行わないことが望ましいが,ワルファリン治療が有益と 判断した場合には PT-INR<2.0 に維持する(2C)」

と記載されております。やはりかなり慎重な印象です。

また、先日発表された「2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」では以下のような記載となっております。

維持透析導入後の患者においても安易なワルファリン治療は行わないことが望ましい。透析患者にワルファリンを投与することは、出血を増やすのみならず、塞栓症をも増やす可能性が指摘されている。そのため、日本透析医学会では、維持透析導入後の患者に対するワルファリン投与を原則禁忌としている。本ガイドラインにおいても,維持 透析導入後の患者に対するワルファリン投与は原則禁忌として扱う。

現在、AVKDIAL試験(心房細動を合併した血液透析患者を対象としたビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を検討するプラセボとの比較試験(NCT02886962))が進行中であり、その結果次第ではガイドライン等に変更がありそうです(今までRCTはなかったようです。)。

さらにはDOACの透析患者への投与についても現在研究が進んでおり、いくつかの試験は報告されておりますがまだ鵜呑みにするべきではないと考えておりますので、ガイドライン等での報告を待ちたいと思います。

 

 

次は@程々な薬剤師

Brain training game boosts executive functions, working memory and processing speed in the young adults: a randomized controlled trial.

PLoS One. 2013;8(2):e55518.

PMID: 23405164

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先月はzuratomo先生がテレビゲームによるリハビリへの効果を検討した論文を紹介されましたが、今回程々先生が紹介されたのは2種類の脳トレ関連のゲームの認知機能への効果を検討した論文です。

正直、この論文は統計解析がややこしくて私には解釈がかなり難しいのですが…

いくつかある評価項目のうちrST(逆ストループ効果(参照:wikipedia→ストループ効果))を取り上げております。

結論としては本文中に「To conclude, this study produced scientific evidence demonstrating that the commercial brain training game had beneficial effects on cognitive functions (executive functions, working memory, and processing speed) in healthy young adults. 」と記載されておりますので、ある程度の認知機能への効果が確認されたようです。どうしてもこういった脳トレは「高齢者向け」(結局、高齢者への効果はどうなのだろうか…)という気がしますが若い人にとっては効果的なのかもしれません。

 

 

次は@たけちゃん

Ejaculation Frequency and Risk of Prostate Cancer: Updated Results with an Additional Decade of Follow-up.

Eur Urol. 2016 Dec;70(6):974-982.

PMID: 27033442

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たけちゃんらしい論文の選択ですね!

1992年に射精頻度についてのアンケートに答えた31,925人(平均年齢59歳くらい)に対して、2010年まで追跡が行われたようです。

結果としては射精回数が4~7回/月と比較して21回/月以上の群の方が前立腺がんを発症するリスクが20%程度低減したようです。8~12回、13~20回では有意差はついておりません。

前立腺がんのリスクを下げるために…というのは少し難しいかもしれませんが。。。

あとちょっと気になったのは、前立腺がんを発症する割合の高さです。日本は10万人年当たり100人程度のようですが、本調査はアメリカでの調査であり、アメリカでは日本よりも発症率がかなり高いようなので、この数字も妥当かと思います。

 

 

最後は@zuratomo4

Acute effects of traditional Japanese alcohol beverages on blood glucose and polysomnography levels in healthy subjects.

PeerJ. 2016 Apr 4;4:e1853.

PMID: 27069795

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私は下戸なのでこの分野のことはよく分からないのですが…

結果として、REM睡眠潜時では酒の種類によって差がついたようですが、その他の評価項目である平均総睡眠時間、睡眠効率、アルファ波の割合では差がなかったようなので、多数のアウトカムの中で偶然に差がついた可能性もあります。n数もかなり少ないので、まだ仮説の段階といえるでしょう。それにしても、脱落するほど酒に弱い人を組み込んだらダメでしょ。。。私は余裕で脱落ですね。

この研究のメインのアウトカムは、酒の種類による血糖値への影響の違いや酔いの状態の違いですので、興味がある方は是非全文を読んでみてください。

下戸の私が言うのもなんですが、お酒は楽しく、人に迷惑をかけずに飲んでくださいね~

 

 

今回は以上になります。

次回は特別企画!!薬剤師ONAiR(@yakuzaishionair)とコラボをします!

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4/22(水)の21時30分から「高齢者医療」をテーマにて行う予定です。

よろしければご視聴くださいませ!