こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第46回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
今回の録音はこちらからどうぞ↓
今回のテーマは「胃腸薬」でした。
今回のメニューはこちら
まずは@たけちゃん
Front Med (Lausanne) . 2022 Jan 17;8:780127.
PMID: 35111776
こちらはCKD患者へのエロビキシバット(グーフィス®)の有効性を検討した前後比較試験です。対象患者のうち4割程度が透析患者だったようです。
結果としては、1日の排便回数が0.5回から4週後には1.1回へ増加しておりました。2日に1回が毎日になった感じですね。前後比較試験のため解釈が難しいところですが、それなりに効果はあるのかなという印象です。便秘は精神的な因子も関わってきますので、ある程度プラセボ効果もあるのではないかと感じております。
また副次的評価項目のLDL-Cは減少、HDL-Cは増加しておりました。これは第3相試験でも示唆されておりますので、それが再現された形かと思います。どちらかというとメリットのある副次的評価項目だと思いますので、知っておいて損はないと思いますし、プラスαで狙うのもありかと思います。
@たけちゃんのブログでの解説↓
次は@リンコ
JAMA . 2021 Oct 5;326(13):1268-1276.
PMID: 34609452
今回は、死前喘鳴に対するブチルスコポラミンの予防的皮下投与の有効性を検討したRCTを紹介します。
死前喘鳴は,中咽頭および気管支に貯留した分泌物を空気が潜り抜けることで起きる大きな呼吸音で,しばしば数時間または数日以内に起こる死亡の前兆である。死前喘鳴は,臨死患者における不快感の徴候ではないが,家族や介護者を不安にさせることがある。死前喘鳴を最小限に抑えるために,介護者は患者の水分摂取量(例,経口,静注,経腸)を制限し,患者を横向きまたは半腹臥位にするべきである。
論文中に紹介されているSR(PMID:23790419)によると、死前喘鳴の発生率は12~92%(重み付け平均35%)だったと報告されております。
本研究では、臨死期にある患者に対しブチルスコポラミン20mgの1日4回の皮下注の有効性をプラセボと比較しております。
結果としてグレード2以上の喘鳴は、E群13%、C群27%と大幅に減少しておりました。サブ解析では、死亡までの時間の延長も認められました。
また、抗コリン性の有害事象は症状によりややばらつきが見られておりますが、さほどプラセボ群との差が大きなものはなかったようです。
効果は十分にありそうですので、適応外ではありますが使ってみる価値はあるのかなと感じております。特に在宅等で家族が看取る際に、家族や介護者の不安にならないように対してのニーズが大きいのかもしれません。
ただ1日4回の投与は大変だと思いますので、投与回数を減らしたり、持続投与にしたりすることも検討の余地はあるのではないでしょうか。
次は@猫になりたい薬剤師
J Gastroenterol Hepatol . 2019 Sep;34(9):1517-1522.
PMID: 30919492
こちらは、DAPT実施患者における消化性潰瘍に対するレバミピドの効果を検討したRCTです。
結果としては、レバミピド群にてプラセボ群よりも12か月間の食道胃十二指腸内視鏡検査における新たな粘膜障害の発症率が減少傾向にありました。有意差はついていないですが小規模の研究であり、20%以上減少していることからも効果は期待できるのではないでしょうか。
また、5mm未満または色素班を伴う5mm以上の消化性潰瘍の発生も大幅に減少しております。
十分な効果は期待できそうですが、PPIやH2RAと比較すると劣るんじゃないかなと(RCTがあるわけではないですが…)。なので、キャス中に議論もしましたが、PPIやH2RAを使えないときに使うことに検討することになるとは思いますが、いずれも使えないケースはかなり稀有なのではないかと。
キャス中にはクロピドグレルとPPIの相互作用の話にもなりましたが、結局まだ結論は出てなさそうですね。未だに結論が出てないということは、影響があったとしてもさほど大きくはないのかもしれません。オメプラゾールとエソメプラゾールを避ければいいだけのような気もしますが。ボノプラザンとクロピドグレルのうわさも出てきていますね…
@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓
次は@zuratomo4
Aliment Pharmacol Ther . 2019 Apr;49(7):864-872.
PMID: 30843245
こちらは、びらん性食道炎に対するテゴプラザンの有効性を検討した第3相試験です。
日本で発売されているボノプラザンと同じ作用機序で、韓国で先行発売されているようです。日本では第1相試験段階とのことです。
本試験では、テゴプラザン50mgまたは100mgとエソメプラゾール40mgとでびらん性食道炎の治癒率を比較しております。
結果としては、いずれの群も有効率は98.9%となり、非劣性が示されました。いずれの群も対象者約90名のうち治癒しなかったのが1名のみだったようです。
ボノプラザンの時もそうでしたが、そもそも既存のPPIの有効率がかなり高く、示せたとしても非劣性になってしまいますね(むしろボノプラザンの有効性の方がが下回っているアウトカムもありましたし…)。さほど重症ではない症例に関しては、既存のPPIで十分な気もしますし、使いどころが肝心なように思います。
次は@程々な薬剤師
BMJ Open . 2021 Feb 15;11(2):e041543.
PMID: 33589451
-
こちらは、PPIと併用薬によるAKI発症リスクを評価したコホート内症例対象研究です。
- 日本の健康保険の医療費請求データベースを用いた研究で、PPIとNSAIDs、また代表的な抗菌薬の使用によるAKIリスクを検討しております。
- 結果としてPPIの現在の使用は、過去の使用と比較してOR2.79とAKIリスクの有意な増加が認められました。また、NSAIDsの併用はNSAIDsを併用しない場合と比較してOR3.12と有意に増加しておりました。
- AKI症例が317例と少なく、結果のばらつきの大きさになっている印象です。全体的にオッズ比が高すぎる気もします。症例対象研究であることも含めて割り引いて考える必要があると思います。
- キャスでzuratomo先生が以下のPPIの腎障害リスクに関する研究のメタ解析を紹介してくれていました。こちらではPPIの使用によるAKIリスクはRR 1.44(95%CI:1.08-1.91)となっております。
-
The association between proton pump inhibitor use and the risk of adverse kidney outcomes: a systematic review and meta-analysis(PMID:28339835)
- PPIと有害事象との関連を評価した観察研究では、あれもこれも有意差がついている印象がありますが、大規模RCTにて多くの有害事象の発現が否定的だった研究を、先日参加した勉強会で教えていただいたので、最後に紹介しておきます。ただし全文読めないので詳細は確認できていませんが…
-
Safety of Proton Pump Inhibitors Based on a Large, Multi-Year, Randomized Trial of Patients Receiving Rivaroxaban or Aspirin(PMID:31152740)
-
最後は@にいやん
Neurogastroenterol Motil . 2014 Jul;26(7):950-61.
PMID: 24766295
こちらは、六君子湯の機能性ディスペプシアの症状への効果を検討したRCTです。
機能性ディスペプシアの定義
症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患
有効性はレスポンダーとしての割合として、スライド中にある質問への回答で判定をしたようです。
結果として、主要アウトカムである8週間後のレスポンダーの割合では有意差こそ付かなかったものの、10%程度プラセボ群よりは改善が認められました。副次的アウトカムでは4つのアウトカムのうち心窩部痛のみ改善が認められたようです。
また、ピロリ感染患者でより効果が高いかもしれないというサブ解析も出ております。
全体的に有意差がついていないのは症例数が少ないことが要因のようにも思います。絶対数をみるとそれなりに効果が期待できるのかなという印象です。
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は6/15(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信する予定です。
よろしければご視聴くださいませ!