リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第46回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2022.5.18)(テーマ:胃腸薬)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第46回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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今回の録音はこちらからどうぞ↓


 

今回のテーマは「胃腸薬」でした。

 

今回のメニューはこちら

 

 

まずは@たけちゃん

Effects of Elobixibat on Constipation and Lipid Metabolism in Patients With Moderate to End-Stage Chronic Kidney Disease

Front Med (Lausanne) . 2022 Jan 17;8:780127.

PMID: 35111776

こちらはCKD患者へのエロビキシバット(グーフィス®)の有効性を検討した前後比較試験です。対象患者のうち4割程度が透析患者だったようです。

結果としては、1日の排便回数が0.5回から4週後には1.1回へ増加しておりました。2日に1回が毎日になった感じですね。前後比較試験のため解釈が難しいところですが、それなりに効果はあるのかなという印象です。便秘は精神的な因子も関わってきますので、ある程度プラセボ効果もあるのではないかと感じております。

また副次的評価項目のLDL-Cは減少、HDL-Cは増加しておりました。これは第3相試験でも示唆されておりますので、それが再現された形かと思います。どちらかというとメリットのある副次的評価項目だと思いますので、知っておいて損はないと思いますし、プラスαで狙うのもありかと思います。

@たけちゃんのブログでの解説↓

 

 

次は@リンコ

Effect of Prophylactic Subcutaneous Scopolamine Butylbromide on Death Rattle in Patients at the End of Life: The SILENCE Randomized Clinical Trial

JAMA . 2021 Oct 5;326(13):1268-1276.

PMID: 34609452

今回は、死前喘鳴に対するブチルスコポラミンの予防的皮下投与の有効性を検討したRCTを紹介します。

死前喘鳴は,中咽頭および気管支に貯留した分泌物を空気が潜り抜けることで起きる大きな呼吸音で,しばしば数時間または数日以内に起こる死亡の前兆である。死前喘鳴は,臨死患者における不快感の徴候ではないが,家族や介護者を不安にさせることがある。死前喘鳴を最小限に抑えるために,介護者は患者の水分摂取量(例,経口,静注,経腸)を制限し,患者を横向きまたは半腹臥位にするべきである。

MSDマニュアルプロフェッショナル版より

論文中に紹介されているSR(PMID:23790419)によると、死前喘鳴の発生率は12~92%(重み付け平均35%)だったと報告されております。

本研究では、臨死期にある患者に対しブチルスコポラミン20mgの1日4回の皮下注の有効性をプラセボと比較しております。

結果としてグレード2以上の喘鳴は、E群13%、C群27%と大幅に減少しておりました。サブ解析では、死亡までの時間の延長も認められました。

また、抗コリン性の有害事象は症状によりややばらつきが見られておりますが、さほどプラセボ群との差が大きなものはなかったようです。

効果は十分にありそうですので、適応外ではありますが使ってみる価値はあるのかなと感じております。特に在宅等で家族が看取る際に、家族や介護者の不安にならないように対してのニーズが大きいのかもしれません。

ただ1日4回の投与は大変だと思いますので、投与回数を減らしたり、持続投与にしたりすることも検討の余地はあるのではないでしょうか。

 

次は@猫になりたい薬剤師

Cytoprotective agent for peptic ulcer prevention in patients taking dual antiplatelet agents: A randomized, double-blind placebo-controlled trial

J Gastroenterol Hepatol . 2019 Sep;34(9):1517-1522.

PMID: 30919492

こちらは、DAPT実施患者における消化性潰瘍に対するレバミピドの効果を検討したRCTです。

結果としては、レバミピド群にてプラセボ群よりも12か月間の食道胃十二指腸内視鏡検査における新たな粘膜障害の発症率が減少傾向にありました。有意差はついていないですが小規模の研究であり、20%以上減少していることからも効果は期待できるのではないでしょうか。

また、5mm未満または色素班を伴う5mm以上の消化性潰瘍の発生も大幅に減少しております。

十分な効果は期待できそうですが、PPIやH2RAと比較すると劣るんじゃないかなと(RCTがあるわけではないですが…)。なので、キャス中に議論もしましたが、PPIやH2RAを使えないときに使うことに検討することになるとは思いますが、いずれも使えないケースはかなり稀有なのではないかと。

キャス中にはクロピドグレルとPPIの相互作用の話にもなりましたが、結局まだ結論は出てなさそうですね。未だに結論が出てないということは、影響があったとしてもさほど大きくはないのかもしれません。オメプラゾールとエソメプラゾールを避ければいいだけのような気もしますが。ボノプラザンとクロピドグレルのうわさも出てきていますね…

@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓

 

 

次は@zuratomo4

Randomised phase 3 trial: tegoprazan, a novel potassium-competitive acid blocker, vs. esomeprazole in patients with erosive oesophagitis

Aliment Pharmacol Ther . 2019 Apr;49(7):864-872.

PMID: 30843245

こちらは、びらん性食道炎に対するテゴプラザンの有効性を検討した第3相試験です。

日本で発売されているボノプラザンと同じ作用機序で、韓国で先行発売されているようです。日本では第1相試験段階とのことです。

本試験では、テゴプラザン50mgまたは100mgとエソメプラゾール40mgとでびらん性食道炎の治癒率を比較しております。

結果としては、いずれの群も有効率は98.9%となり、非劣性が示されました。いずれの群も対象者約90名のうち治癒しなかったのが1名のみだったようです。

ボノプラザンの時もそうでしたが、そもそも既存のPPIの有効率がかなり高く、示せたとしても非劣性になってしまいますね(むしろボノプラザンの有効性の方がが下回っているアウトカムもありましたし…)。さほど重症ではない症例に関しては、既存のPPIで十分な気もしますし、使いどころが肝心なように思います。

 

 

次は@程々な薬剤師

Association of proton pump inhibitors and concomitant drugs with risk of acute kidney injury: a nested case-control study

BMJ Open . 2021 Feb 15;11(2):e041543.

PMID: 33589451

こちらは、六君子湯の機能性ディスペプシアの症状への効果を検討したRCTです。

機能性ディスペプシアの定義

症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患

有効性はレスポンダーとしての割合として、スライド中にある質問への回答で判定をしたようです。

結果として、主要アウトカムである8週間後のレスポンダーの割合では有意差こそ付かなかったものの、10%程度プラセボ群よりは改善が認められました。副次的アウトカムでは4つのアウトカムのうち心窩部痛のみ改善が認められたようです。

また、ピロリ感染患者でより効果が高いかもしれないというサブ解析も出ております。

全体的に有意差がついていないのは症例数が少ないことが要因のようにも思います。絶対数をみるとそれなりに効果が期待できるのかなという印象です。

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は6/15(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信する予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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