リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第9回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2019.4.17)

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第9回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

録音はこちらから↓

前回同様、5人で1時間枠にて行いました。

 

今回のメニューはこちら

テーマは「オピオイド関連」でした!

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では早速論文の紹介を。

まずは@たけちゃん

Low-Dose Tramadol and Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug Combination Therapy Prevents the Transition to Chronic Low Back Pain.

Asian Spine J. 2016 Aug;10(4):685-9.

PMID:27559448

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デザインとしては、急性腰痛にて1か月NSAIDを服用したにも関わらずVASが5以上の方への低用量トラマドールの使用・非使用による疼痛の改善を検討した研究のようです。

2か月疼痛が改善しなければ慢性疼痛と診断されるようで、トラマドールの併用にて慢性腰痛への移行の確率が抑えられることが示唆されました。

比較的大きな差がついている印象です。オピオイドを開始しているので、副作用はある程度仕方ないと思いますので、やってみる価値はあるのかなと。

 

コメントにて「急性腰痛の自然治癒率1週間で50%、2週間で80%、2ヶ月で90%が自然に改善」(Am J Med. 1997 Jan 27;102(1A):16S-22S. PMID:9217555)という論文の紹介もありました。おそらく対象患者の背景が異なるとは思いますが、とても興味深いです。

たけちゃんのブログ↓

 

 

 

次は@にいやん

Naldemedine versus placebo for opioid-induced constipation (COMPOSE-1 and COMPOSE-2): two multicentre, phase 3, double-blind, randomised, parallel-group trials.

Lancet Gastroenterol Hepatol. 2017 Aug;2(8):555-564.

PMID:28576452

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ナルデメジン(スインプロイク®)の海外第3相試験です。

2つ試験がありますが、同じような結果となっております。プラセボ効果というか、たまたま排便回数が増えたというケースもあるとは思いますが、NNTでみるとCOMPOSE-1は8、COMPOSE-2は6と、まずまず効果的なのかなと思いますが、薬価が高いのでまずは既存の便秘薬を使った方がいいような気がします。

ちなみに国内第3相試験は、PMID:29912271(がん患者でのオピオイド誘発性便秘症)、PMID:30613161(非がん性慢性疼痛患者でのオピオイド誘発性便秘症)のようです。

以下添付文書の抜粋

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こうやってみると、国内の試験の方が有効率が高いように思いますが、どうでしょうか。

 

 

 

次は@zuratomo

Reasons for non-medical use of prescription opioids among young adults: Role of educational status.

Prev Med. 2019 Apr 2. pii: S0091-7435(19)30123-9.

PMID:30951735

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こういった論文は初めて読みましたが、なかなか興味深いです。こういった研究があること自体が海外ならではですね。学歴による差があると思っていましたが、意外とないようです。 アブストしか読めない論文だったのが残念です。。。類似の研究があるようなので、また機会があれば読んでみたいです。

 

 

 

次は@程々な薬剤師

Efficacy of immediate-release oxycodone for dyspnoea in cancer patient: cancer dyspnoea relief (CDR) trial.

Jpn J Clin Oncol. 2018 Dec 1;48(12):1070-1075

PMID:30260399

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こちらも大変興味のある分野ではありますが。、実際に携わってみると難しいなーと思いながら。本試験は前後比較であり、アブストのみしか読めなかったので、正直なところ結果がよく分からず。それなりにオキシコドンでも効果がありそうな気もしますが…

キャス中に紹介しましたが、「がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2016年版」での記載は以下のようになっております。(P70,71)

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今回紹介された論文より、規模の大きな試験もあるようで、それをもとに検討されております。よろしければご参考に。

 

 

 

最後は私@リンコ

Morphine for the relief of breathlessness in patients with chronic heart failure--a pilot study.

Eur J Heart Fail. 2002 Dec;4(6):753-6.

PMID:12453546

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 心不全への緩和ケアが少しずつ盛り上がってきていて、私自身も興味があるので今回はこの論文を読んでみました。正直、パイロットスタディを読むつもりはなかったのですが、検索してみると思いの外論文が少なかったのが驚きでした。

この試験では、モルヒネの呼吸苦への効果が示唆されました。ベースラインがずれていることもあり、QOLや鎮静の評価はこの試験では難しい気がします。

有害事象としてはモルヒネ群で4例、プラセボ群で1例観察されたようですが、それは妥当かと思います。(4日間の投与なので、便秘の評価は難しそうですが…)

もう少し規模の大きな試験をみてみたいですね。

ちなみに「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」では、このパイロット試験をもとにして以下のように書かれています。(P114)

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これ以外にも心不全へのモルヒネの効果をみた研究の論文を読みましたので紹介しておきます。

Short-term opioids for breathlessness in stable chronic heart failure: a randomized controlled trial.

Eur J Heart Fail. 2011 Sep;13(9):1006-12.

PMID:21712288

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この試験では4日間のモルヒネ投与による呼吸困難への効果は認められませんでした。

ただ、ベースラインのずれなどをどう評価していいか分からず…プラセボで改善しすぎな気が…

追跡試験(PMID:23368980)では、効果があることが示唆されておりますが…

この分野はまだ研究が進んでいないことがよく分かったので、今後の研究に期待したいです。

 

ちなみに、先月のエビテンにて「変形性関節症患者におけるNSAIDと比較してのトラマドールの総死亡との関連(PMID:30860559)」について取り上げましたので、よかったらこちらのブログもご覧ください。

 

今回は以上になります。

次回は「フリーテーマ」で5/22(水)の22時からを予定しております。よろしければご視聴ください。

また、参加の希望があればご連絡ください♪