こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第65回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
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今回のテーマは「出荷調整薬」でした。
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1人目は@にいやん
Intern Med . 2019 Sep 1;58(17):2459-2465.
PMID: 31178508
こちらは、急性上気道炎に伴う喉の痛みに対する桔梗湯とプラセボとを比較したRCTです。先行研究(PMID: 24356393)にて有効性が示唆されましたが、対照群がなかったため今回がその追試となっております。
結果としては、主要評価項目である服用前と服用10分後の咽頭痛重症度(VAS)の変化は、桔梗湯群とプラセボ群に群間差は認められませんでした。
副次的アウトカムもいくか検討されておりますが、いずれも有効性は認められなかったようです。
服用前と服用後では確かにVASの数値自体は下がっておりますが、群間差がなかったとのことですので、プラセボ効果なのか、飲水による効果なのかというところですかね。プラセボ効果をうまく利用して…という使い方はできるかもしれませんが。
ところで、どうして服用直後の効果を見てるんですかね?持続しなければ意味がない気はしますが…あまり調べる気がなく…
2人目は@程々な薬剤師
JAMA Pediatr . 2021 May 1;175(5):475-482.
- PMID: 33683325
こちらは、小児の市中肺炎に対する短期コース(5日間投与)のアモキシシリン投与を10日間投与との有効性を比較したRCTです。成人では短期投与の有効性がある程度確立しておりますが、小児ではまだ確立していなかったようです。
生後6か月から10歳の小児(中央値2.6歳)が対象となっており、市中肺炎の診断基準としては、48時間以内の発熱や頻呼吸、X線所見等となっております。アモキシシリンの投与量が気になったのですが、私が読んだ限りでは記載はありませんでした。
結果として、主要評価項目である14~21日後の臨床的治癒は5日間投与と10日間投与で有意差は認められませんでした。ただ、両群ともper protocol解析では治癒率が90%程度だったので、10%程度は治癒していなかったということになります。
結果を見る限りでは、ペニシリン系抗菌薬が出荷調整中でもありますので、5日間投与で十分なのかなと思います。ただし10%程度は治癒しなかったので、5日間程度でいったん様子を見て、それでも改善しなければ再度通院して診察を受けるのがいいのではないかなと思いました。
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3人目は@zuratomo4
Cognitive effects of individual anticholinergic drugs: a systematic review and meta-analysis
Dement Neuropsychol . 2023 May 29:17:e20220053.
- PMID: 37261256
こちらは、種々の抗コリン薬の認知機能への影響を検討した研究のSR&MAです。
全部で138研究が含まれており、アウトカムとしての認知機能としては、認知機能、記憶力、注意力等の様々なアウトカムが設定されておりました。各薬剤の研究数としては、スコポラミンは38研究と多かったようですが、その他の薬剤は多くありませんでした。
結果としては、スコポラミン、mecamylamine、アトロピン、ビペリデン、オキシブチニン、トリヘキシフェニジル、benzhexol、dicyclomineの認知機能への影響が認められましたが、他の薬剤は影響が認められませんでした。
研究数の多いスコポラミンは何かしらの影響がありそうですが、他の薬剤は詳細の報告がないため、よく分からない印象です。投与期間やアウトカムがそれぞれの研究で異なったり、手法が定まっていないのかなという印象があります。
抗コリン薬の認知機能への影響はACBスコアごとで評価している研究も多く、個別の薬剤についての研究が少ないのかなとも思います。
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4人目は@リンコ
J Med Econ . 2022 Jan-Dec;25(1):38-50.
PMID: 34842029
こちらは、医療従事者による抗インフルエンザ薬投与の服薬指導・支援にかかる費用を推計した研究です。対象となったのは、医師、薬剤師、介護士で、インターネットにて調査がなされており、ドライシロップを除く経口薬と吸入薬が調査の対象となっております。
- 結果として、服薬指導や服薬支援に要したコストは、医師・薬剤師においては経口薬と比較して吸入薬で多くなっておりましたが、介護士ではほとんど差がありませんでした。また恐怖感に関しても医師・薬剤師で吸入薬で割合が高くなっておりましたが、介護士では変わりがありませんでした。恐怖のコストに関しては4種類の質問から算出されており、特に薬剤師では吸入にて恐怖のコストが上がっておりました。介護士は内服も吸入も変わりはありませんでしたが、内服の場合も恐怖のコストを感じているようでした。
- なかなか興味深い結果だなーと思いました。薬剤師としては、吸入指導は時間がかかりますし、吸入指導時は暴露リスクが増加するので、恐怖のコストが増えるとは感じておりましたので、そのとおりの結果となりました。先日、抗インフルエンザ薬のフォーミュラリを作った際にこの論文を取り上げて、暴露リスクについての話を医師にしました。
- また、介護士は内服も吸入も時間や恐怖感が同じなのも興味深かったです。服薬介助は時間がかかるし、暴露リスクもあることが十分に理解できました。介護士にとっては、服薬介助の回数が少なくなるような薬剤の方がいいのではないかと思います。
- こういった面も考えながら処方に関わっていけるといいなと感じた論文でした。
5人目は@猫になりたい薬剤師
Aliment Pharmacol Ther . 2014 Oct;40(7):780-95.
PMID: 25100080
こちらは、低用量アスピリン(LDA)による胃十二指腸障害に対するラベプラゾール(5mg/日、10mg/日)の効果をテプレノンと比較したRCTです。患者は消化管出血既往のある方が対象となっております。
結果としては、主要評価項目である24週後の消化性潰瘍の再発は、テプレノン群で21.7%だったのに対し、ラベプラゾール群では10mgで1.4%、5mgで2.8%でした。また、出血性潰瘍発生はテプレノン群のみで、累積発生率は4.6%でした。
この分野におけるPPIの有用性が改めて理解できました。NNTは小さく、あえてテプレノンを使うことはないのかなと思います。このケースでテプレノンを投与されているケースを見ることはほとんど見なくなりましたが、十分に理解しておきたいと思います。また、NSAIDに対しては胃粘膜保護薬が使われていることはまだ多いですが、同様の結果だとしたら注意が必要ですね。
@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓
6人目は@たけちゃん
Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes
N Engl J Med . 2023 Nov 11.
PMID: 37952131
こちらは、非DMの肥満患者(BMI≧27)におけるセマグルチドの心血管イベントへの影響をプラセボと比較したRCTです。
セマグルチドは皮下注製剤を使用しており、週1回2.4mgを投与されております。平均曝露期間は34.2か月、平均追跡期間は39.8ヵ月でした。
結果として、主要エンドポイントであるMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)は、セマグルチド群6.5%、プラセボ群8.0%で、セマグルチド群にて有意に減少しておりました(HR 0.8;95%CI:0.72-0.90)。エンドポイント別では、CVD死に有意差はありませんでしたが、全死亡は有意に減少しておりました。
MACEの群間差は1.5%/3年ですので、1年間のNNTにすると200程度ですね。個人的にはもうちょっとインパクトのある数字になるかなと思っていたのですが、それほど大きくない印象です。体重の減少率は8.5kgの差がありますし、血圧やHbA1c、LDLもプラセボ群と比較して有意に低下しているようです。ベースラインの平均BMIが33程度なので、もっと体重を減らさないといけない気もしますが。
ウゴービ🄬がついに先日承認されましたが、2.4mgの薬価は1本10,000円ですので、高いですよね、、、
@たけちゃんのブログでの解説↓
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は12/13(水)22時より、「テーマ:出荷調整薬」にて配信予定です。
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