リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第22回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2020.5.27)(フリーテーマ)

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第22回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

録音はコチラから↓

今回は「フリーテーマ」でした。

メニューはコチラ↓

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今回は、前回コラボした薬剤師ONAiRから@きむにいにご参加いただきました!

 

それでは、まずは@程々な薬剤師

Comparison of Straining During Defecation in Three Positions: Results and Implications for Human Health

Dig Dis Sci . 2003 Jul;48(7):1201-5.

PMID: 12870773

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一発目から下ネタですみません。。。

この論文は和式トイレと洋式トイレ(便座の高さ2種類)での排便までの時間を調査したものです。結果として、和式トイレでしゃがんで排便した方が、様式トイレで座って排便するよりも排便に要する時間は短く、排便が容易だったようです。

確かにこれは実体験からも分かる気がしますね。肛門が開くというか、座った瞬間というか(以下自粛)。。。

キャスでは排便の姿勢についても話題になりましたが、洋式トイレでは踏み台を置いて、やや姿勢を前かがみにして背骨と大腿が35度くらいになるといいようです。以下、ご参考にされてください↓

 

忍者薬局ブログでの論文の解説↓


 

次は@zuratomo

Comparison of Dietary Macronutrient Patterns of 14 Popular Named Dietary Programmes for Weight and Cardiovascular Risk Factor Reduction in Adults: Systematic Review and Network Meta-Analysis of Randomised Trials

BMJ . 2020 Apr 1;369:m696.

PMID: 32238384

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こちらは種々のダイエットの効果の比較を検討したネットワークメタ解析です。

数々のダイエットが取り上げられていますが、そこから5つをピックアップしていただきました(研究自体が少ないダイエット法もたくさんあるみたいで)。

本研究にて一番効果があったのはSouth Beach(低GI食)だったようです。半年で約10kgの減少が認められているので、かなりインパクトがあります。ただし、ベースとなっている体重はかなり重いので、その辺りは注意が必要かもしれません。

しかしまあたくさんのダイエット法が考えられているようで。

BMJのページにはビジュアルアブストラクトがあったので、それを貼り付けておきます。血圧への効果も認められているようです。

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次は@たけちゃん

Randomized Trial of Tibetan Yoga in Patients With Breast Cancer Undergoing Chemotherapy

Cancer . 2018 Jan 1;124(1):36-45.

PMID: 28940301

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がしかし、たけちゃんは急用ができて参加できませんでした。

次回に発表してもらいましょうかね。

簡単に説明すると、評価項目がいくつかあって、ヨガやストレッチによる効果は認められなかったものが多かったですが、スライドに示している項目では群間に有意差が認められたようです。少しは睡眠に対する効果があるのかもしれません。こういったことをすることで多少リラックスできることはあると思いますし、副作用はほとんどないでしょうし、やってもいいのかな、とは思います。

たけちゃんのブログでの解説↓

 

 

次は@にいやん

Randomized Trial of Switching From Prescribed Non-Selective Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs to Prescribed Celecoxib: The Standard Care vs. Celecoxib Outcome Trial (SCOT)

Eur Heart J . 2017 Jun 14;38(23):1843-1850.

  • PMID: 27705888

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※配信時のスライドはOn-treatment解析のハザード比が間違っておりましたので訂正しました。

こちらはセレコキシブへの切り替え群と非選択性NSAID継続群を比較することでセレコキシブと心血管イベントとの関連を明らかにした研究です。

結果としては有意差は認められなかったものの、On-treatment解析での95%信頼区間が非劣性マージンの1.4を超えていることから、明確には非劣性が示されていないこととなります(非劣性試験であり、どちらかというとITT解析より、On-treatment解析の結果を重視するほうがいいかと思います)。イベント発生率がかなり低く、検出力不足の印象は否めないですが。あと、脱落率が多かったのがLimitationのようです。

類似の研究として、セレコキシブvsナプロキセンvsイブプロフェンの心血管イベントの比較であるPRECISION試験(PMID:27959716)があります。

キャスでも少し触れましたが、個人的には今までいくつか論文を読んで、「セレコキシブは非選択的NSAIDと比較して心血管イベントのリスクを上昇させない」と考えております。どれを読んだかを忘れましたが…

さて、セレコキシブの添付文書には冒頭に警告として、

外国において、シクロオキシゲナーゼ(COX)‐2選択的阻害剤等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象のリスクを増大させる可能性があり、これらのリスクは使用期間とともに増大する可能性があると報告されている。

と記載されております。

IFには詳しく記載されております。

外国で実施された大腸ポリープ切除患者でその再発予防(本邦での本剤の効能・効果ではない)を検討した 臨床試験において、本剤200mg1日2回又は400mg1日2回を約3年間連日投与したところプラセボと比較して、心血管系血栓塞栓性事象の発現に用量相関的な増加(プラセボに対するリスク比:本剤200mg投与群2.6、本剤400mg投与群3.4)が認められている 4) 。また、他のCOX-2選択的阻害剤(ロフェコキシブ)の外国において実施された大腸ポリープ長期予防投与試験結果より、重篤な心血管系血栓塞栓性事象発現 のリスクがプラセボと比較して増加することが示されている 59) 。さらにイブプロフェンやナプロキセン等の本剤よりもCOX-2選択性の低い非ステロイド性消炎・鎮痛剤の安全性データに関する外国での研究報告 60,61)等においても心血管系血栓塞栓性事象発現リスクの増加がみられている。このように、COX-2 選択的阻害剤やCOX-2選択性の低い非ステロイド性消炎・鎮痛剤の投与により、投与期間及び投与量に依存した心血管系血栓塞栓性事象発現のリスクが否定できないことから設定した。

4) N Engl J Med . 2006 Aug 31;355(9):873-84. (PMID:16943400)

59) N Engl J Med . 2005 Mar 17;352(11):1092-102. (PMID:15713943)

60) Arthritis Res Ther . 2006;8(5):R153. (PMID:16995929)

61) Arch Intern Med . 2005 May 9;165(9):978-84. (PMID:15883235)

その他、ロフェコキシブと心血管イベントに関しては、以下の2試験が有名なようです。

VIGOR試験N Engl J Med . 2000 Nov 23;343(21):1520-8, 2 p following 1528.(PMID:11087881)

APPROVe試験:Lancet . 2008 Nov 15;372(9651):1756-64.(PMID:18922570)

こういった背景があることは頭に入れておいた方がいいかと思います。 

 

 

次は@リンコ

Tolvaptan, a Selective Oral Vasopressin V2-receptor Antagonist, for Hyponatremia.

N Engl J Med . 2006 Nov 16;355(20):2099-112.

PMID: 17105757

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先日、日本でのトルバプタンの低Na血症への適応が審議中というニュース(薬食審 5月29日に第一部会 経口GLP-1作動薬、保存期適応の経口腎性貧血薬など審議 | ニュース | ミクスOnline) がありましたので、こちらの論文を読んでみました。海外ではかなり前から適応になっているようですね(むしろ心不全への適応がないとか)。

Na濃度が135mmol/L未満の低Na血症患者を対象に2つの試験(SALT-1,SALT-2)がなされており、それぞれが別で解析されております。

プライマリアウトカム「ベースラインから4日目,30日目までの血清な濃度の1日AUCの変化」でしたがよく意味が分からず、副次的アウトカムのNa濃度の変化、尿量や飲水量の変化を今回は取り上げました。

結果として血清Na濃度は4日目までで両試験とも5mmol/l前後上昇し、その後30日後までにもう少し上昇しておりました。また、服用初日の尿量は1L以上増加しておりました。

スライドには載せませんでしたが、有害事象としては口渇やのどの渇きがトルバプタン群で多くなっておりました。

今までの経験上もう少し上昇するのかなと思っておりました。投与初期である程度上がりきるようですね(用量調節をするとは思いますが)。

本文中には30日の投与終了後の経過についても書かれておりましたが、中止後7日くらいでプラセボ群と同じくらいとなったようです。となると慢性期では長期間使わないといけないのですが、薬価がひっかかりますね…(薬価:7.5mg 1,084円/錠、15mg 1650円/錠。これでもかなり安くなりましたね…)。本試験は初回投与量が15mgでしたが、経験上7.5mgでも、その半量の3.75mgでも十分に効果が表れることがあるので、うまく調節したいものです。日本の承認にあたって別の第3相試験があったらそれも読んでみたいです。

また、本剤はもちろん利尿剤としての効果がありますし、尿量は1L程度増えるようなので脱水には注意していかないといけません。

ちなみにスライドの右上に食塩のイラストを入れたのは、この低Na血症の時にとりあえずNaClが処方されることが時々あります。それを「塩対応」と言うんだそうで…(以前、偉い人が言ってました…)

 

 

最後は@きむにい

Remdesivir in Adults With Severe COVID-19: A Randomised, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multicentre Trial

Lancet . 2020 May 16;395(10236):1569-1578.

PMID: 32423584

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ゲストでの参加だったのにトリを任せてすみません。まあでも、この話題はそうせざるを得なかったので。

てことで、現在COVID-19の流行の真っ只中ではありますが、先日日本にて緊急承認されたレムデシビルの有効性と安全性に関する論文です。レムデシビル群とプラセボ群に2:1で割り付けられた2重盲検比較試験ですが、カレトラ(ロピナビル/リトナビル)やインターフェロン、ステロイドの併用が認められており、カレトラはE群で28%,C群で29%、インターフェロンはそれぞれ16%,17%、ステロイドは65%,68%が併用されておりました。

さて結果は、臨床的改善やウイルス陰性化の日数に有意差がありませんでした

また、つい先日発表されたACTT-1試験(N Engl J Med . 2020 May 22. PMID:32445440)では、レムデシビル群で回復までの日数の中央値は有意に減少しておりましたが、死亡率には有意差がなかったようです。

個人的な印象では、レムデシビルはCOVID-19に対して少しは効果があるのかなと思います。ただ、さほど大きな効果は期待できないかなと。

あとは有害事象はまだまだ分からないこともあると思いますので、使うのであれば十分に注意して使わないといけないかなと思います。

最後に少しだけ宣伝を。

きむにいこと木村先生はyoutubeの薬剤師ONAiR COVID-19特別チャンネルにてCOVID-19に関する情報を発信されております。今回取り上げたレムデシビル(ベクルリー®)についても動画がございますので、是非ご覧ください!

 

 

 

今回は以上になります。

きむにい、ご参加ありがとうございました!

 

6/17(水)の22時00分から「眠剤」をテーマにて行う予定です。

よろしければご視聴くださいませ!