リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第86回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2025.9.17)(フリーテーマ)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第86回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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録音はこちらからどうぞ↓(3回に分かれております)

 

今回は「フリーテーマ」でした。

 

今回のメニューはこちら

 

 

1人目は@たけちゃん

Association of GLP-1 receptor agonists with risk of intestinal obstruction in patients with type 2 diabetes mellitus: a retrospective cohort study

Acta Diabetol . 2025 Jun 5.

PMID: 40471297

こちらは、2型糖尿病患者におけるGLP-1RAと腸閉塞リスクの関連性を評価した後ろ向きコホート研究です。GLP-1RAと各種糖尿病薬とで、それぞれPSマッチ後にリスクが比較されております。1年後、3年後、5年後のリスクが評価されており、5年後のみをこちらでは見ていきます。

結果としては、SGLT2阻害薬、メトホルミン、SU剤、チアゾリジン系では腸閉塞リスクに有意差はなく、DPP-4阻害薬やインスリンではGLP-1RA群の方が有意に少なくなっておりました。

個人的には、GLP-1RAは胃内容物の排出を遅らせる作用などがあるので、腸閉塞のリスク要因になるのかなと思っていただけに、意外な結果でした。

先日報告されたDSU No.339では、腸閉塞を含むイレウスが各種GLP-1RAの重大な副作用として記載されております。医薬品・医療機器等安全性情報 No.422にはその詳細が記載されており、各薬剤で数例の服用報告があったとのことです。

スライドに載っている他の論文も簡単に読んでみましたが、異なる結果となっているようなので、今回の結果を鵜呑みにするのは避けた方がいいかもしれません。(ただ、むしろDPP-4阻害薬のリスク上昇が個人的には気になりましたが…)

 

 

※スライド修正済み

こちらは、上部消化管内視鏡検査におけるレミマゾラムの有効性と安全性をプラセボと比較して評価した二重盲検RCTです。

先日、レミマゾラムが有効成分である「アネレム静注用20mg」が初めて「消化管内視鏡診療時の鎮静」の適応を取得しました。現在は、適応外にてミダゾラムやジアゼパムが使用されております(内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版))。

試験デザインとしては、初回投与量をレミマゾラム3mgとし、2分間隔で1mgの追加投与が可能となっております。

結果としては、アネレム群では92%で鎮静が成功しており、プラセボ群とは大差がついております。追加投与はあまり行われなかったようです。検査終了後から歩行可能になるまでの時間の中央値は5分となっておりました。

また、医師満足度や患者満足度も評価されており、レミマゾラム群では医師、患者のいずれにおいても評価は高い傾向にありました。

これまでは適応外使用で鎮静剤を使用しておりましたので、適応がついたことは大きいです。有効性も十分ですし、半減期は40分程度と短いことも使いやすそうです。満足度も高そうですね。なお、大腸内視鏡についても同様の臨床試験が行われております(PMID: 39068917)。

ただ、実際使用するとなると規格が20mgしかないのはデメリットだなと。せっかくなので、もう少し使いやすい規格を用意していただきたいですね。

 

 

3人目は@程々な薬剤師

Proton pump inhibitors for the prevention of non-steroidal anti-inflammatory drug-induced ulcers and dyspepsia

Cochrane Database Syst Rev . 2025 May 8;5(5):CD014585.

PMID: 40337979

こちらは、PPIがNSAIDS誘発性消化性潰瘍の予防できるかどうかを評価したRCTのメタ解析です。対照群としては、プラセボ、H2ブロッカー、ミソプロストールが選択されております。

結果としては、プラセボ群との比較ではリスクの低減が示唆されましたが、H2ブロッカー群とは差はなく、ミソプロストール群との比較ではむしろリスクの上昇が示唆されました。ただし、H2ブロッカーとの比較は1試験(参加者26名)、ミソプロストールとの比較は1試験(参加者402名)だったため、解釈に注意は必要です。

PPIに十分な効果はありそうですが、保険適応は胃潰瘍潰瘍歴のある人に限定されていることには注意が必要です。潰瘍歴のない人に効果はあるのか、NSAIDの種類によって違いはあるのか、PPIによる差があるのかも気になります。

ちなみに、消化性潰瘍ガイドライン2020では、様々なケースでのNSAIDs潰瘍予防に関する評価がなされておりますので、またそちらもご参考にされてください。NSAIDs潰瘍予防フローチャートは以下にご紹介しておきます。

 

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4人目は@zuratomo4

Traditional Wisdom for Modern Sustainability: A Dish-Level Analysis of Japanese Home Cooking in NHK Today's Cooking

Nutrients . 2025 Aug 21;17(16):2712.

PMID: 40871740

 

こちらは、NHK『きょうの料理』における家庭料理の一皿単位の分析を行った研究です。SHD(持続可能な健康的な食事)との関連が評価されております。『きょうの料理』はギネスに載っている世界一の長寿料理番組なんですね。

結果として、たんぱく質源は豚肉、魚介、鶏肉が多く、また大豆食品も多かったようです。塩分量は2.16gと、主菜1品としてはやや多めでした。発酵や旬の食材を重視する点は環境効率的といえる一方、過剰な塩分摂取や水産資源の持続性が課題として挙げられたようです。

あまりこのような観点で料理を考えたことは無かったなと。私はyoutubeを見て料理を作ってるので、料理系youtuberの番組でも検証してほしいですね。

 

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5人目は@猫になりたい薬剤師

P2Y12 inhibitor or aspirin after percutaneous coronary intervention: individual patient data meta-analysis of randomised clinical trials

BMJ . 2025 Jun 4:389:e082561.

PMID: 40467090

                  • こちらは、PCI後の抗血小板療法としてのDAPT後(中央値12か月)のP2Y12阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)とアスピリンとの有効性を評価したRCTのメタ解析です。5試験、16,117名が対象となっております。
                  • 結果としては、P2Y12阻害薬群で有意にMACCE(主要心血管・脳血管イベントの複合)リスクが低下しております。一方、大出血リスクとしては差が認められなかったようです。
                  • 有効性に関しては、ハザード比が大きく下がっておりますが、NNTとしては追跡期間5.5年で45ですので、それほど小さくなく、メリットは多くないのかもしれません。ただ、アスピリンを優先させて投与させる患者群はあまり思いつきませんので、積極的にP2Y12阻害薬を使用すればいいのではないかと思います。
                  • あとは、P2Y12阻害薬の使い分けですね。日本人の20%程度がCYP2C19のPM(Poor Metabolizer)と言われておりますが、果てさて…
                  • @猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は10/15(水)22時より、「テーマ:痛み止め」にて配信予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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