こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第80回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
録音はこちらからどうぞ↓
今回は「フリーテーマ」でした。
今回のメニューはこちら
1人目は@程々な薬剤師
Mayo Clin Proc . 2025 Mar 5:S0025-6196(24)00480-4.
PMID: 40047759
こちらは、コントロール不良の高血圧治療における自己血圧測定とモバイルアプリによるフィードバックの有効性を評価した非盲検RCTです。
対象患者は、フィードバック機能付きの血圧管理アプリとフィードバック機能なしの血圧管理アプリに割り付けされております。
結果としては、24週後の平均在宅収縮期血圧の変化で、フィードバック機能付き群が-22.4mmHg、フィードバック機能なし群が-17.2mmHgとなり、フィードバック機能付き群の方が有意に血圧が低下しました。また、降圧薬のアドヒアランスに関しても、95%以上の服薬アドヒアランスの割合がフィードバック機能付き群で多くなったとこの都です。
全文が読めないので詳細は分かりませんが、フィードバック機能がつくことで高血圧治療には有利に働いたようです。
日本でも高血圧管理のアプリである「CureApp HT」が承認されておりますが、アプリで血圧管理を行うだけでなく、さらにフィードバックがあることでより効果的な治療に繋がるのかもしれません。
ただ血圧を下げるといっても、薬で血圧を下げることと、薬以外で血圧を下げることにハードアウトカムへの影響が異なるのかどうかも気になるところです。
参考:日本高血圧学会「高血圧治療補助アプリ」保険適用と適正使用指針 作成のお知らせ
2人目は@リンコ
Clinical Outcomes of Tirzepatide or GLP-1 Receptor Agonists in Individuals With Type 2 Diabetes
JAMA Netw Open . 2024 Aug 1;7(8):e2427258.
PMID: 39133485
こちらは、2型糖尿病患者におけるチルゼパチドとGLP-1RAの有効性を評価した後ろ向きコホート研究です。ベースラインは、HbA1cが7.6%とさほど高くはなく、BMIが36とかなり高めになっております。
結果としては、追跡期間の中央値10.5カ月において総死亡、MACE、MAKEのいずれにおいてもGLP-1RA群よりもチルゼパチド群で有意に少なくなっており、ハザード比としてはかなり小さな数値となっております。
また、HbA1cの変化および体重変化もチルゼパチド群の方が低下しており、特に体重変化においては長期間減少傾向が続くことも示唆されました。
GLP-1RAの内訳については記載がありませんでしたが、市場のシェアから考えるとセマグルチドが多くなっているようにも思います。有効性の差に関しては、体重の影響が大きいように思いますが、チルゼパチド特有の何かがあるのかもしれません。
今回はベースラインのBMIがかなり高めになっているため、解釈には注意が必要だと感じております。マンジャロ🄬の添付文書には「投与開始時のBMIが23kg/m2未満の患者での本剤の有効性及び安全性は検討されていない。」とも記載されております。
現在、2型糖尿病患者における主要心血管イベントに対するチルゼパチドとデュラグルチドとのランダム化比較試験である「SURPASS-CVOT試験」が進行中であり、結果が待たれるところです。
-
3人目は@Fizz-DI
Lack of effect of grapefruit juice on the pharmacokinetics and pharmacodynamics of amlodipine
Br J Clin Pharmacol . 2000 Nov;50(5):455-63.
-
PMID: 11069440
こちらは、グレープフルーツジュース(GFJ)がアムロジピンの薬物動態に及ぼす影響を評価したクロスオーバー試験です。内服および静注にて検討されており、水またはGFJ(240mL)は経口薬と同時またはアムロジピン点滴開始直前に摂取しております。アムロジピン投与後の各8日間、GFJ200mlまたは水を朝食とともに摂取しております。
結果として、経口薬のAUC、Cmax、tmax、kelはGFJ摂取による影響を受けず、AUCに関しては水群81%、GFJ群88%とややGFJ群で高くなりましたが、有意差はありませんでした。
もちろん今回の試験デザインでの結果ですので、GFJの量や種類が変われば結果が異なることも考えられますが、それを言い出したらキリがありませんので、基本的には影響がないということでいいのではないかと個人的には思います。
ちなみに、アムロジピンとGFJの相互作用についてはこちらの論文ともう一つ(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8911887/)がIFに載っております。有意差はないことが分かっているので、添付文書の相互作用から消してもいいように思いますが…そうじゃないと患者指導はした方がいいのか、しなくてもいいのかよく分からず…
4人目は@たけちゃん
Sleep Med . 2024 Oct:122:27-34.
PMID: 39116704
こちらは、日本人患者を対象に行われたダンドレキサントの有効性と安全性を評価した二重盲検RCTです。ダンドレキサントはオレキシン受容体拮抗薬であり、クービビック🄬錠として昨年発売されております。
今回の試験では、ダンドレキサント25mgおよび50mgとプラセボが比較されております。
結果としては、25mg群および50mg群にて、sTST(主観的総睡眠時間)およびsTSO(主観的入眠潜時)のいずれにおいてもプラセボ群と比較して有意に改善しておりました。スライドの数字はプラセボとの差のためわずかな変化のようにも見えますが、プラセボ群においてもsTSTは20分、sTSOは5分改善しておりますので、それも含めるとそれなりに改善しているようにも思います。
有害事象は、傾眠がぞれぞれ25mg群3.7%、50mg群6.8%、プラセボ群1.8%で認められていたようです。Supplementaryを見てみると、やや女性の方に傾眠が表れやすい傾向があるようです。
いずれの群においても、65歳以上は50名程度とそれほど多くないので、高齢者への使用においてはまだ不明な点があるかもしれません。
3つ目のオレキシン受容体拮抗薬ですが、論文を読んでいる限りではあまり違いが見えず…
5人目は@にいやん
Lancet . 2015 Oct 3;386(10001):1341-1352.
PMID: 26211827
こちらは、早期乳癌におけるアロマターゼ阻害薬(AI)とタモキシフェンを比較したRCTのメタ解析です。AI5年投与 vs タモキシフェン5年投与、AI5年投与 vs タモキシフェン2~3年投与後、5年までAI投与、タモキシフェン2~3年投与後、5年までAI投与 vs タモキシフェン5年投与のRCTが対象となっております。
結果としては、AI5年 vs タモキシフェン5年のみ取り扱いますが、乳癌の再発や乳がんによる死亡、総死亡においてAI群で有意に低下しておりました。一方、有害事象としての骨折はAI群で有意に増加しておりました。こちらはタモキシフェンにSERM用の作用があることが影響していると考えられます。
乳癌診療ガイドライン2022年版の「CQ3 閉経後ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後内分泌療法として何が推奨されるか?」では「アロマターゼ阻害薬の投与を強く推奨する。」「タモキシフェンの投与を弱く推奨する。」と記載されており、アロマターゼ阻害薬を優先投与することが推奨されており、「タモキシフェンは,何らかの理由によりアロマターゼ阻害薬の投与ができない患者に勧められる。」とも記載されております。
骨折予防に関しては、「BQ11 アロマターゼ阻害薬使用患者における骨粗鬆症の予防・治療に骨吸収抑制薬(ビスホスホネート,デノスマブ)は推奨されるか?」の項もあります。
骨折リスク等に配慮しながら、アロマターゼ阻害薬を優先的に使用していく必要がありそうです。
Fizz先生のブログにこの辺りの解説がありますので、ご参考に。
6人目は@猫になりたい薬剤師
World J Urol . 2024 Mar 2;42(1):113.
PMID: 38431689
- こちらは、過活動膀胱を有する高齢女性におけるミラベグロンとビベグロンを比較したランダム化クロスオーバー試験です。各薬剤群で8週間の治療が行われましたが、ウォッシュアウト期間はありませんでした。半減期は、ミラベグロンで30時間、ビベグロンで60時間くらいなので、ウォッシュアウト期間は入れた方が良かったように思いますが、、、
- 結果として、主要アウトカムであるOABSSのベースラインからの変化は両群で改善しており、群間差は認められませんでした。その他のアウトカムについては、日中の頻尿頻度の平均変化で、ビベグロンの方が有意に改善が認められたようです。
- また、56人の患者のうち、15人はミラベグロンを、30人はビベグロンを好んだようで、残りの11人は好みを示さなかったとのことです。
この両剤を比較した試験はあまりないようですが、この試験だけで判断するのは難しい気がします。ただ、大きな差は認められなかったので、どちらでもいいのかなという印象です。ベタニス🄬錠の添付文書には禁忌薬剤や禁忌疾患が記載されておりますが、ベオーバ🄬錠には記載されていないことから、ベオーバ錠の方が使いやすいのは事実ですし、効果に差がないのであれば、ベオーバを優先してもいいのではないかと思います。
Fudingはアステラス製薬だったようで、、、
@猫になりたい薬剤師のブログでの解説
7人目は@zuratomo4
JAMA Psychiatry . 2025 Mar 1;82(3):218-227.
PMID: 39693081
こちらは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)におけるブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用治療の有効性を評価した二重盲検RCTです。
日本ではSSRIであるセルトラリンとパロキセチンがPTSDに対して承認されております。ただ、42%で反応が得られなかったとイントロには記載されております。
結果としては、PTSD尺度であるCAPS-5において介入群で有意に改善しておりました。ただCAPS-5の臨床閾値は10点と言われているようで、実際の有効性は少ないのかもしれません。有害事象の群間差はほとんどなかったようです。
現状はあまり選択肢がないようなので、一つでも有効な薬剤が登場してくるのは喜ばしい事だとは思いますが、どれほど有効かは、、、
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は4/16(水)22時より、「テーマ:新人に読ませたい論文」にて配信予定です。
よろしければご視聴くださいませ!