リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第79回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2025.2.19)(テーマ:2024年の新薬)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第79回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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録音はこちらからどうぞ↓

 

 

今回のテーマは「2024年の新薬」でした。

 

今回のメニューはこちら

 

 

1人目は@猫になりたい薬剤師

Tapinarof cream for the treatment of atopic dermatitis: Efficacy and safety results from two Japanese phase 3 trials

J Dermatol . 2024 Nov;51(11):1404-1413.

PMID: 39269202

こちらは、アトピー性皮膚炎治療薬であるタピナロフクリームの有効性を評価したRCTです。「ブイタマークリーム1%」として発売されております。

IFによると作用機序は以下となります。

タピナロフは、リガンド依存的な転写因子である AhR を活性化することにより、種々の遺伝子発現を調節する。本作用機序に基づき,炎症性サイトカインを低下させ、抗酸化分子の発現を誘導して、アトピー性皮膚炎及び尋常性乾癬における皮膚の炎症を抑制するとともに、皮膚バリア機能を改善する。

本試験では、IGA(医師による皮膚病変の全般的な評価(Investigator’s Global Assessment)(IGA<0:消失,1:ほぼ消失,2:軽症,3:中等症,4:重症>)が主要評価項目となっており、IGAスコアが0または1であり、8週目にベースラインから2グレード以上改善したと定義された。

結果としては、基剤群と比較してタピナロフ群でIGA治療成功率が有意に高くなっておりました。副次的評価項目であるEASI(湿疹面積および重症度指数)も有意に改善しておりました。

有害事象としては、頭痛や適用部位毛包炎、適用部位ざ瘡が多くなっているのが気になるところです。

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」によると、「現時点において,アトピー性皮膚炎の炎症を十分に鎮静するための薬剤で,有効性と安全性が多くの臨床研究で検討されている外用薬は,ステロイド外用薬,タクロリムス軟膏(カルシニューリン阻害外用薬),デルゴシチニブ軟膏(JAK 阻害外用薬),ジファミラスト軟膏(PDE4 阻害外用薬)の4種類である」とのことで、そこに1剤加わったことになります。有害事象等で脱落してしまう症例も多いようで、一つでも選択肢が多くあるといいですね。

@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓

 

 

2人目は@リンコ

Efficacy of high-dose versus standard-dose influenza vaccine in older adults

N Engl J Med . 2014 Aug 14;371(7):635-45.

PMID: 25119609

こちらは、高齢者における高用量インフルエンザワクチンと通常用量インフルエンザワクチンの有効性を比較した第3b相~第4相RCTです。

2024年に高用量インフルエンザワクチンである「エフルエルダ筋注」が承認されました。まだ発売はされておらず、おそらく来シーズンからの発売になると思います。通常用量ワクチンは株あたりの赤血球凝集素が15μgですが、高用量ワクチンは60μgとなっております。

本試験は10年以上前に行われたものであり、本製品は25か国以上で承認されているようです。当時は3価でしたが、現在は4価が発売されており、おそらく4価でも問題ないと思います。

結果としては、インフルエンザ陽性率において相対的有効性として高用量ワクチンが24.2%上回っておりました。陽性率が両群とも1%台と低いのが気になるところではありますが…一方で、有害事象は増加しておりませんでした。

入院等のアウトカムについては検討されておりませんでしたが、いくつかコホート研究が報告されており、こちらのフランスのコホート研究(PMID:39187126)では入院リスクが23%低減したことが報告されております。

十分な有効性は期待できそうですので、使わない手はないのではないかと思います。前向きに検討していきたいと思います。

参考:今後期待される新形式インフルエンザワクチン(IASR Vol. 45 p198-200: 2024年11月号)

 

 

こちらは、週1回のインスリンイコデクと毎日のインスリングラルギンの有効性と安全性を評価したRCTです。インスリンイコデクは初めての週1回タイプのインスリンとして承認され、先日1月末に「アウィクリ注フレックスタッチ」として発売されました。

アウィクリ注は週1回製剤であり、1日の単位の7倍を目安に投与されることとなります。イコデクは1mL当たり700U入っておりますので、これまでのインスリン(100U/mL)よりは濃度が濃くなっております。

さて結果としては、イコデク群は8.50%から6.93%に低下(平均変化量 -1.55%ポイント)、グラルギン U100 群は8.44%から7.12%に低下(平均変化量 -1.35%ポイント)、群間差の推定値(-0.19%ポイント;95%CI:-0.36 to -0.03)となり、イコデク群で有意に低下しました。1週間当たりのインスリン量は両群とも220単位前後で、同等でした。

血糖値が70~180mg/dLの割合はイコデク群で多くなっておりました。臨床的に意義のある低血糖と重度の低血糖を合わせた発生率は、52週の時点でイコデク群0.30件/人年、グラルギンU100群0.16件/人年であり(推定発生率比 1.64;95%CI:0.98~2.75)、83週の時点でそれぞれ0.30件/人年、0.16件/人年(推定発生率比 1.63;95%CI:1.02~2.61)でした。ややイコデク群で多くなっておりますが、臨床試験によってもばらつきがあることには注意が必要です(PMID:39425483)。

週1回の投与が可能となれば、患者さんにとってはかなり利便性が向上しそうです。1日1回タイプと有効性や安全性は遜色なさそうなので、十分代替できると思います。ただ、低血糖等が懸念されますので、処方側は慣れるまでは心配な点が多くなってしまう気がしますし、薬剤師が十分フォローしていきたいものです。

 

 

4人目は@にいやん

Effect of Fruquintinib vs Placebo on Overall Survival in Patients With Previously Treated Metastatic Colorectal Cancer: The FRESCO Randomized Clinical Trial

JAMA . 2018 Jun 26;319(24):2486-2496.

PMID: 29946728

こちらは、転移性大腸がんに対するフルキンチニブの有効性と安全性を評価したRCTです。「フリュザクラカプセル」として2024年に発売されております。

作用機序は以下です。

フルキンチニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR-1、2 及び3)のキナーゼ活性を阻害し、腫瘍における血管新生を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

患者用のホームページが充実してますね。↓

本試験は、転移性大腸がんの患者で2次治療以降も進行した患者を対象にプラセボが対照群となっています。

結果として、全生存期間および無増悪生存期間でプラセボよりも有意に改善されております。有害事象としては、高血圧や手足症候群が目立ったようです。

普段抗がん剤を扱わないので、詳しい事はよく分かりませんが…

カプランマイヤー曲線を見ていると、かなり厳しい状態で使われていることが分かりますし、プラセボとの差は大きくないようにも見えます。ただ、こうやって少しでも有効な薬剤が登場したのは喜ばしい事かなと思います。

参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル(HFS;手足症候群)

 

 

5人目は@zuratomo4

Brexpiprazole treatment for agitation in Alzheimer's dementia: A randomized study

Alzheimers Dement . 2024 Nov;20(11):8002-8011.

PMID: 39369280

こちらは、日本人のアルツハイマー型認知症における興奮に対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を評価したRCTです。「レキサルティ錠」としてすでに発売されておりますが、「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動」の病名で適応追加されております。

この論文は私が以前のエビテンで紹介した論文でしたので、そちらのリンクを貼って解説に代えさせていただきます。気づくのが遅かった…すまん、ズラタン…

 

 

6人目は@程々な薬剤師

Randomized, multicenter, active-controlled open-label study of NPC-25, zinc histidine hydrate, (non-inferiority to NOBELZIN™, zinc acetate dihydrate) for patients with hypozincemia

J Trace Elem Med Biol . 2025 Feb:87:127558.

PMID: 39705879

こちらは、低亜鉛血症患者を対象としたヒスチジン亜鉛水和物(NPC-25)の有効性を酢酸亜鉛二水和物と比較した非盲検化RCTです。

ヒスチジン亜鉛水和物は「ジンタス錠」として昨年発売となりました。対照となった酢酸亜鉛二水和物は「ノベルジン錠」として発売されており、すでにジェネリックが発売されております。

ジンタス錠の開発経緯について、IFには以下のように記載されております。

ヒスチジンを含むアミノ酸などの低分子は亜鉛イオンと錯体化することで亜鉛の吸収を向上させることが報告されており、ヒスチジン亜鉛水和物は比較的安定な錯体構造であるため、消化管で解離する亜鉛イオンは無機亜鉛塩よりも少なく、亜鉛イオンによる直接的な副作用(悪心、嘔吐等)が低減すると考えられている。
一方、国内において低亜鉛血症の効能又は効果を持つ薬剤であるノベルジン製剤は、主な副作用である悪心・嘔吐などの消化器系副作用に配慮して、開始用法は1日2回投与とし、1回あたりの投与量を少なくすることで開発が行われた。本剤は、ノベルジン製剤の1日亜鉛投与量を1日1回で投与でき、服薬アドヒアランスの改善が期待できる薬剤として開発した。

本試験の結果としては、主要アウトカムである8週間血清亜鉛濃度維持割合が同等であることが示されました。有害事象としての胃腸障害は9.3% vs 11.9%と、ヒスチジン亜鉛水和物群の方でやや低い傾向となりました。

アウトカムとしての評価が亜鉛濃度のみですので、実際の低亜鉛欠乏に伴う症状がどの程度改善したのか気になります。また、酢酸亜鉛二水和物はすでにジェネリックが発売されている状況で、このヒスチジン亜鉛水和物がどの程度必要なのかが疑問ではあります。薬価がかなり高いですからね。

参考:亜鉛欠乏症の診療指針2018

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は3/19(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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