リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第69回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2024.4.17)(テーマ:副作用)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第69回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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録音はこちらからどうぞ↓

 

 

今回のテーマは「副作用」でした。

 

 

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1人目は@にいやん

Comparative Risk of Harm Associated with Zopiclone or Trazodone Use in Nursing Home Residents: a Retrospective Cohort Study in Alberta, Canada

Can Geriatr J . 2023 Mar 1;26(1):9-22.

PMID: 36865408

こちらは、介護施設入居者におけるゾピクロンとトラゾドンの転倒・骨折リスクを比較した後ろ向きコホート研究です。

ITT解析とper protocol解析がなされており、per protocol解析では両方が開始された患者は除外されております。アウトカムの転倒や骨折は、「転倒に関連した救急外来受診(すなわち、傷害性転倒)、または股関節、骨盤、上腕骨、または前腕の骨折として定義された主要骨粗鬆症性骨折の複合」と定義されております。

Table1.を見ると、年々トラゾドンの新規使用者が増えて、ゾピクロンの新規使用者が減っているのが分かります。

結果としては、ITT解析、per protocol解析のいずれにおいてもゾピクロン群とトラゾドン群で有意差はありませんでした。

複合アウトカム発生率が比較的高い印象で、おそらく日本ではこんなに高くならないような気がしています。ITT解析とper protocol解析では発生率がかなり違うので、ITTはおそらく併用することでリスクが高まっているのかなと思います。

キャスでは少し話しましたが、ゾピクロンの光学異性体であるエスゾピクロンでは他の睡眠薬と比較して転倒率が低いというような研究が国内外で散見されますね。

〇非ベンゾジアゼピン系催眠鎮静剤と転倒関連損傷のリスク

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26943470/

〇睡眠導入剤と転倒率の関係性~再転倒患者に対するエスゾピクロンへの変更の有用性~

日本病院薬剤師会雑誌 54(6): 749-754, 2018.

 

 

2人目は@リンコ

Effectiveness of suvorexant versus benzodiazepine receptor agonist sleep drugs in reducing the risk of hip fracture: Findings from a regional population-based cohort study

PLoS One . 2023 Apr 24;18(4):e0284726.

PMID: 37093840

こちらは、スボレキサントと他の睡眠薬との大腿骨骨折リスクを比較した後ろ向きコホート研究です。静岡県国保データベースを用いた研究です。

傾向スコアマッチング後、6,855組が研究の対象となっております。

結果としては、スボレキサント群で大腿骨骨折が多く発生しておりました。発生率はさほど多くはなかったようです。

サブ解析では、75歳以上で同様の傾向が認められましたが、85歳以上、95歳以上では差がなかったようです。また、男性、女性のいずれの性別においてもスボレキサント群で有意に大腿骨骨折が発生しておりました。

この研究の他にも類似の研究がいくつかありますが、スボレキサント群と他の睡眠薬でリスクは同等だったり、スボレキサント群が高かったりと、スボレキサント群の方が低い研究が見つかりません。

近年、ベンゾジアゼピン系薬からオレキシン受容体拮抗薬への処方の切り替えが進んでおりますが、もしかするといいことをしているつもりで、骨折を増やしているのかもしれません。今回は対照群が睡眠薬と幅広かったので、絞り込めばまた違う側面が見られるかもしれませんし、スボレキサントとレンボレキサントでは結果が異なるかもしれませんので、他の研究を待ちたいと思います。また、誤嚥性肺炎のリスク等も気になります。

〇スボレキサントとZ剤の投与を開始した地域在住の高齢者における骨折リスクの比較

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32916693/

〇オレキシン受容体拮抗薬と入院中の転倒との関連性

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35229895/

〇転倒の危険因子としての非GABA睡眠薬、スボレキサント:症例対照研究および症例クロスオーバー研究

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32916693/

 

 

              PMID: 33537133

こちらは、アリピプラゾールによる持続勃起症に関する症例報告です。

zuratomo先生が実際に先日経験されたようで、関連の文献を紹介してくださいました。

薬剤性の持続勃起症の50%が抗精神病薬によるもので、不可逆性のEDの原因となることもあるようです。この薬剤性の持続勃起症は、薬剤のα1親和性との関連が示唆されているようですが、アリピプラゾールの抗精神病薬の中でのα1親和性は最も低い部類になるようです。

この論文で紹介されている他の症例報告の中からいくつかがスライドにまとまっておりますが、自然治癒、減量、他剤での変更により改善したようです。

キャスでは、このような副作用をどのように聞き取ればいいのかという話題になりました。患者さんのキャラによるとは思いますが、珍しい副作用ですし、直接的な表現ははばかられるので難しいですね。同性なら話しやすいかもしれませんが。

 

 

    • 4人目は@たけちゃん

      Effects of pubic hair grooming on women's sexual health: a systematic review and meta-analysis

      BMC Womens Health . 2024 Mar 11;24(1):171.
    • PMID: 38468306

      こちらは、女性の陰毛のグルービング(陰毛の一部または全部を除去すること)が性感染症と関連するかどうかを検討した研究のメタ解析です。

    • 本文には、「中東では、女性の陰毛の除去は、何世紀にもわたってイスラム教によって推奨されている長年の衛生の伝統に根ざしており、文化的慣習の不可欠な側面である。イスラム教の宗教儀礼によると、『初潮時に陰毛の除去を開始し、少なくとも40日ごとに1回繰り返す』ことが規定されている。」と記載されております。
    • さて結果としては、グルーミング群で淋菌とクラミジアは有意に増加しておりましたが、性器ヘルペスと尖圭コンジローマに有意差はありませんでした。信頼区間が広いので、検出力不足かもしれません。
    • なお本文中にはその他の副作用として、「性器のかゆみ、性器の発疹、性器の毛嚢炎、性器のアレルギー、および性器の痛みと灼熱感」との記載もありました。
    • 宗教上の理由や見栄えからグルーミングを行うことが多いようですが、こういったリスクも十分に考えなければならないのでしょう。
    •  

 

5人目は@程々な薬剤師

Perception of burden of oral and inhaled corticosteroid adverse effects on asthma-specific quality of life

Ann Allergy Asthma Immunol . 2023 Dec;131(6):745-751.e11.

PMID: 37643678

こちらは、経口ステロイド(OCS)および吸入ステロイド(ICS)の副作用がQOLに及ぼす負担の認識を評価したアンケート調査です。参加者は、OCSによる25項目とICSによる9項目からなる既知の有害事象(AE)リストを、最も負担の少ないものから最も負担の大きいものまで1~5の5段階で評価するよう求められました。

結果として最も負担となる副作用は、OCSでは体重増加/肥満、骨密度低下、感染症の順、ICSでは肺炎、嗄声、口腔カンジダ症の順でした。なお、それぞれ質問のあった全ての順位は本文中に記載されておりますので、参考にされてください。

個人的には、体重増加/肥満が経口ステロイドの1位なのが意外でした。米国の研究なので、あまり体重は気にしていないのかなと思いましたが、気になるんですね。

こういった順位付けがなされると服薬指導の際に役立ちそうです。

今回は米国の研究でしたので、日本で研究したらまた違う結果が出るのかなと感じました。

 

 

 

6人目は@猫になりたい薬剤師

Acetaminophen Use During Pregnancy and Children's Risk of Autism, ADHD, and Intellectual Disability

JAMA . 2024 Apr 9;331(14):1205-1214.

PMID: 38592388

こちらは、妊娠中のアセトアミノフェン使用と子供の自閉症、ADHD、知的障害との関連を評価したスウェーデンのコホート研究です。

兄弟姉妹対象分析モデルが用いられており、10歳児のリスク差も評価されております。

結果としては、自閉症、ADHD、知的障害ともにアセトアミノフェン使用と未使用で有意差はありませんでした。10歳児のリスク差はわずかな差で、有意差はありませんでした。

規模が大きく、また兄弟姉妹対象分析モデルや10歳児のリスク差も評価されており、信頼度は高い研究のような気がしています。妊娠中でも安心して服用できそうですね。

@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓

 

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は5/15(水)22時より、「フリーテーマ」にて配信予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

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