リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第54回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2023.1.18)(フリーテーマ)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

第54回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

f:id:gacharinco:20200825222540p:plain

今回の録音はこちらからどうぞ↓(2回に分かれております)

 

今回は「フリーテーマ」でした。

 

今回のメニューはこちら

 

 

まずは@猫になりたい薬剤師

Metformin treatment in heart failure with preserved ejection fraction: a systematic review and meta-regression analysis

Cardiovasc Diabetol . 2020 Aug 5;19(1):124.

  • PMID: 32758236

こちらは、HFpEF患者(EF>50%)へのメトホルミンの影響を評価した後ろ向きコホート研究のメタ解析です。

結果として死亡リスクは、メトホルミン群では非メトホルミン群と比較してHR 0.82(95%CI:0.74~0.90;I2=58%)と有意に減少しておりました。また、併用薬としてインスリン、ACEi、β遮断薬においても死亡リスクの減少が示されましたが、逆に女性では死亡リスクが上昇することが示唆されました。

メトホルミンは未だに心不全を含む多くの疾患で禁忌となっており、やや過剰なのかなという印象があります。実際にレセプトで査定されたことも当院ではありましたが、最近は耳にしていない印象です。

2.禁忌(次の患者には投与しないこと)

2. 1次に示す患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい。]

・乳酸アシドーシスの既往のある患者

・ 重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)のある患者又は透析患者(腹膜透析を含む)

・重度の肝機能障害のある患者

・ 心血管系、肺機能に高度の障害(ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等)のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態にある患者[嫌気的解糖の亢進により乳酸産生が増加する。]

・ 脱水症の患者又は脱水状態が懸念される患者(下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者、経口摂取が困難な患者等)

・過度のアルコール摂取者

本メタ解析ではHFpEF患者における有効性が示されました。HErEF患者も解析されておりますが、有意差は付かないものの非メトホルミン群と比較して差はありませんでした。ただ、女性でのリスク上昇が指摘されており、これが本当なのかどうかは気になるところです。少し研究の質を疑いたくなります。含まれた試験が観察研究のみでしたので、RCTをしないと分からないことも多くありそうです。

いずれにしろ、こういった知見の積み重ねで禁忌が撤回される可能性もあるので、さらなる研究報告に期待したいです。

@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓

 

 

次は@程々な薬剤師

Efficacy and safety of vibegron for the treatment of irritable bowel syndrome in women: Results of a randomized, double-blind, placebo-controlled phase 2 trial

Neurogastroenterol Motil . 2022 Dec;34(12):e14448.

PMID: 35975404

こちらは、ミラベグロンの過敏性腸症候群への有効性と安全性を検討した第2相プラセボ対照2重盲検試験です。

ミラベグロンは現在、「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」への適応にて承認されておりますが、本文によると、「β3アドレナリン受容体は、消化管全域に発現・分布しており、非血管平滑筋や大腸の腸管ニューロンなど、いずれも消化管運動に重要な役割を果たしている。したがって、β3-アドレナリン受容体の活性化は、IBS患者の疼痛治療および消化管運動調節の新規標的として期待されている。」とのことで、パイロット試験にて女性への投与でIBS関連の疼痛の改善が認められているようです。

さて本試験の結果として、主要評価項目である下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)の女性患者における腹痛強度スコア(API)のベースラインから30%以上改善した患者の割合は、ビベグロン群42.9%、プラセボ群40.9%(CMH差:-1.9%;95%CI:-16.1 to 12.3)となり、プラセボ群と差はありませんでした。

他の評価項目を見てもどれも差がないので、この後に進んでいくのは難しそうな印象ですね。

治療薬が少ない分野だけに、残念ですね。。。

なお、キャス中に話題にしていたイリボー錠(ラモセトロン)が当初女性に適応がなかったことについては、イリボー錠のインタビューフォームに詳細が記載されておりましたので、ご参考にされてください。

製造販売承認申請時に行われた第Ⅲ相試験では、女性においてイリボー錠 5μg はプラセボに比べて IBS 症状の全般改善効果の月間レスポンダー率に統計的有意差は認められず、男性に比べ女性で有害事象(便秘、硬便、腹部膨満)の発現割合が高い傾向が認められた。また、健康成人を対象とした性差試験では、イリボー錠 5μg 単回投与時における女性の Cmax 及び AUC は男性のそれぞれ約 1.5 倍及び約 1.7 倍と、男性に比べ女性で高い値を示した。以上のことから、製造販売承認申請時には男性のみに承認され、女性の下痢型 IBS患者に対する有効性及び安全性については、今後追加の検討が必要であるとされた。
そこで、女性の下痢型 IBS に対する効能又は効果の追加を目的に、新たに RomeⅢ基準の女性下痢型 IBS患者を対象として、プラセボ、イリボー錠 1.25μg、2.5μg、5μg での用量反応性を確認した第Ⅱ相試験、その結果推奨用量として選択された 2.5μg とプラセボを比較し有効性及び安全性を検討した第Ⅲ相試験、及び長期投与試験を実施した。
その結果、女性に対する有効性、安全性が確認され、既に承認されている「男性」と合わせ、「下痢型過敏性腸症候群」を効能又は効果として、2015 年 5 月に承認された。

 

 

次は@たけちゃん

Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease

N Engl J Med . 2023 Jan 12;388(2):117-127.

PMID: 36331190

こちらは、慢性腎臓病(CKD)患者へのエンパグリフロジンの治療効果を評価した二重盲検RCTです。すでにカナグリフロジンやダパグリフロジンでは有効性が認められ、保険適応がありますね。

さて結果としては、主要評価項目である腎臓病の進行(末期腎不全、eGFR<10mL/分/1.73m2未満への低下の持続、eGFR のベースラインから40%以上の低下の持続、腎臓が原因の死亡)または心血管系の原因による死亡が、エンパグリフロジン群13.1%、プラセボ群16.9%であり、ハザード比 0.86(95%CI:0.64-0.82)とプラセボ群で有意に減少しました。

アウトカム別で見てみると、心血管死亡や全死亡には両群に差はなく、腎疾患の進行において差が認められました。キャス中にコメントもありましたが、死亡に差がついていないのは追跡期間が2年であり、死亡をアウトカムとするには短かったのではないかと思います。長期的な有効性も見てみたいですね。

今後はどのような患者を対象として治療していくのか、薬剤による使い分けは必要なのかといったところが課題なのかなと考えております。

@たけちゃんのブログでの解説↓

 

 

 

次は@zuratomo4

Experience of annual events in the family and social adjustment of school-age children

Child Adolesc Psychiatry Ment Health . 2022 Jun 3;16(1):39.

PMID: 35659280

  • こちらは、小学5年生を対象にした家庭における年中行事の経験と学齢期児童の社会適応の関連を調査した研究です。年中行事としては誕生日、正月、節分、バレンタイン、ひな祭り、お彼岸などが含まれています。
  • 結果としては、年中行事の回数は、家族構成や親の学歴と有意に関連しており、年中行事の経験が多い家庭の子どもは、向社会的行動が高く、外面化問題や内面化問題が少ないことがわかりました。
  • そりゃそうですよね、という結果かもしれませんが。できるだけ子供にはたくさんの行事ごとを経験させてあげることが重要かもしれませんね。一人親だったり、学歴も関連しているので、そこは悩ましいところだなと感じました。
  •  
  •  
  • 次は@リンコ

    Cardiovascular and Cancer Risk with Tofacitinib in Rheumatoid Arthritis

    N Engl J Med . 2022 Jan 27;386(4):316-326.

    PMID: 35081280

こちらは、関節リウマチに対するトファシチニブに伴う心血管リスクと癌リスクを検討した非盲検RCTです。先日発売された「EVIDENCE UPDATE 2023」を読んで気になり、今回選択しました。

トファシチニブは脂質の上昇や癌リスクの増加がこれまでの試験で報告されており、それを検証するために行われたようです。対照群としては、TNF阻害薬であるアダリムマブやエタネルセプトが用いられました。

結果としては、MACEは対照群と比較して差はありませんでした(ギリギリな気もします…)が、がんに関してはトファシチニブ群で有意な増加が認められました。またその他の評価項目としては、帯状疱疹が用量に関わらず有意な上昇が認められ、高用量では他の評価項目も有意な増加が認められております。全体的に用量の増加とともにリスクも増えてそうな印象です。ただし、NNH(/年)としてはさほど大きくない印象も受けます。帯状疱疹はNNH(/年)が2桁になるので、やはり注意が必要ですね。

なお、有効性に差は認められなかったようです。

バイオ製剤は注射という手技がつきものですのでJAK阻害薬への期待は大きいのですが、種々のリスクが上昇するのであれば、その選択には十分な配慮が必要なのではないかと思います。クラスエフェクトなのかどうかが気になるところですが、どうしてもバイオ製剤が使えない場合(注射が嫌とか、注射のアドヒアランスが悪いとか…)には選択してもいのかもしれません。

類似の論文が最近発表されていたので、合わせて紹介しておきます。↓

Malignancy risk with tofacitinib versus TNF inhibitors in rheumatoid arthritis: results from the open-label, randomised controlled ORAL Surveillance trial

Ann Rheum Dis . 2023 Mar;82(3):331-343. PMID: 36600185

 

こちらは、NSAIDやRAS阻害薬のバラシクロビル(VACV)への併用で急性腎障害リスクが増えるかどうかを検討した、JADERを用いての研究です。

JADERは自発報告ゆえに解釈が難しく、私自身もまだしっかりとは理解できておりませんが…JADER警察も取り締まりをしているようなので、注意したいものです。

以下の論文が参考になるかもしれません。

自発報告に基づくシグナル検出ができること、できないことーその理論と実践ー

さて結果としては、VACVへのNSAIDの併用でリスク上昇のシグナルが検出されましたが、アセトアミノフェンとの併用ではリスク上昇のシグナルは検出されませんでした。また、VACVとRASiやVACVとRASi+NSAIDの併用でもVACV単独と比較してリスク上昇のシグナルが検出されました。

JADERを用いた解析ゆえに解釈には注意が必要ですが、NSAIDやRASiによるリスク上昇が示唆される結果であり、併用時には十分な注意が必要ですし、さらなる研究に期待したいものです。

 

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

次回は2/15(水)22時より、「テーマ:飲食物」にて配信予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

 

 ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村