リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

月刊ブログ 田舎の地域医療を志す薬剤師(2022.9)(中学校での医療介護特別授業2022)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

 

先日、地元の中学校で医療介護特別授業を行ってきました。コロナ禍前は毎年行っていたのですが、コロナ禍による中断にて4年ぶりの開催となりました。

4年前の授業の様子↓

この取り組みは、中学生への早期暴露を行うことで医療介護職に興味を持ってもらい、将来の選択肢に医療介護職を入れてほしいという思いで開催しております。

一つの学年を対象としており、まず全体で集まり動画にて職種の説明をしました。その後、各職種のブースに分かれ、そこに5-6人1組の生徒達がやってきて1組10分で職業体験をしてもらいました。職業体験は6セット行いました。終わったころには声が出ない…

今回は町の様々な事業所から、医師、看護師、理学療法士、臨床検査技師、放射線技師、管理栄養士、介護福祉士のブースを用意しました。

 

 

薬剤師ブースでの職業体験

それでは、薬剤師ブースでの職業体験の様子を当日使ったスライドを示しながら紹介していきます。

まずは薬剤師の仕事内容の紹介をしました。

いきなり職業経験に入ってもよかったのですが、私自身は高校で進路を考えるまで薬剤師のことを全く知らなかったんですよね。せっかくの機会ですので、職業紹介を簡単に行いました。

 

 

最初のスライドで、薬剤師の仕事は薬を毒にせずに薬にするのが仕事であることを説明しました。メリットとしての効果がデメリットとしての副作用や医療費を上回るようにしないといけません。次のスライドでは薬局や病院での薬剤師の仕事内容の紹介をしました。3枚目のスライドでは様々な薬剤師の職能を紹介しました。私がスポーツファーマシストであり、中学生が相手なのでアンチドーピングの話をもっとしたかったのですが、時間が足りず断念。。。

そして4枚目のスライドは、私の働く福井県の薬剤師の少なさをアピールしたスライドです。対人口当たりの薬剤師数は沖縄に次ぐワースト2位です。福井県で薬剤師として働いたら仕事はいっぱいあるよー、と。

 

次はコロナ禍での薬剤師の仕事内容について紹介しました。

 

コロナ禍では、消毒薬の管理、コロナワクチンやコロナ治療薬に関する情報収集・情報提供が薬剤師の大きな役割となりました。

正直このスライドはなくてもよかったのかもしれないですけど、中学生のコロナワクチンの接種率が低いこともあり、どうしても話題に入れたかったのです。当院では薬剤師がワクチンに関する研修会を行い、最終的には90%以上の職員が接種していることを伝えました。せっかくなので、ワクチンの情報を得るのに信頼できるサイトの紹介も行い、女子生徒のグループではHPVワクチンの話題にもほんの少しだけ触れておきました。

ワクチンのことはもっと話したかったのですが、あまり話すと反○○の方々からクレームが出そうな気がしたので止めておきました。。。

 

 

ここまでで5分!残りの5分で本題の薬剤師体験です!

薬剤師ブースでは処方監査体験をしてもらいました。地味すぎるけど、最高にカッコいい仕事だと個人的には思いますよ。医師ブースでは聴診、看護師ブースでは血圧測定やPPE着脱、理学療法士ブースでは松葉づえ体験などがされていました。

4年前の処方監査体験では、酸化Mgを常用している方に尿路感染症でレボフロキサシン錠が処方された時に何が起こるのか、どう対応すべきか、というのをAMRの観点も含めて体験してもらいました。

でも、キノロンを尿路感染症に使うのは時代遅れも甚だしいので、今回は題材を変更することにしました。

てことで、コロナの治療薬を題材にした処方監査体験をしてもらいました。

コロナの治療薬には2種類あり、飲み方は同じだけど、A薬は重症化を9割抑える、B薬は5割を抑えると仮定します(ほとんど実例ですが…)。この段階でどちらの薬を飲みたいかと言われるとA薬ですよね。

でもA薬には大きな欠点があります。

A薬は飲み合わせが悪い薬がとても多く、腎臓が悪い人には使えないです。でもやはりA薬を優先して処方したいんです。そこで薬剤師の出番です。A薬が使えるかどうかを判断したり、A薬が使えるように調整したりするのが薬剤師の仕事です、と紹介しました。実際に当院では薬剤師が薬剤の選択に大きく関わっていますので、この処方監査を体験してもらおうと思いました。

パキロビッドパックの添付文書を持っていけば伝わりやすかったのかもしれませんが、持って行くのを忘れてしまったのは反省点です。禁忌や併用注意がたくさんあることを視覚的に見せたかったのですが。

 

血中濃度に関する解説も簡単に行いました。薬には「無効域」「治療域」「中毒域」があり、薬は少なすぎたら効果が出ないし、多すぎたら副作用が出ますね。だから治療域に収める必要があるのですが、A薬を一緒に服用すると中毒域に入ってしまい、副作用が出てしまいますね。って感じです。

 

代謝と阻害のことも説明したかったのですが、時間が足りずに断念。せっかく準備したのでスライドだけ晒しておきます。

 

 

てことでようやく問題へ!残り3分!全然時間足りない(汗)

この問題を中学生と一緒に考えたのですが、なかなかの難問ですね。

まずは血中濃度が3倍になるとどのようなことが起こりうるのかを考えました。

眠剤に関しては、「よく寝てしまう」という答えは多くのグループで聞かれましたが、それ以降まではなかなか難しいようでした。起きた後にも効果が残りがちになりふらついたり、転倒して骨折したり、運転すれば眠気が原因で事故を起こす可能性があることを伝えました(コロナの治療中に運転することはないと思いたいのですが…)。

コレステロールの薬に関しては、"コレステロール"が何かを知らない生徒が多かったです。時間もなかったのでほとんどこちらで解説を行いました。コレステロールの薬は血中濃度が上昇したところでコレステロールが下がり過ぎるくらいなので、血中濃度上昇による副作用の起こる可能性は低いことを説明しました(実際はもう少し考えないといけないこともありますが…)。

抗血小板・抗凝固薬に関しては、比較的想像しやすかったようで、「血がよく流れる」という答えはよく返ってきました。その後どうなるかは難しかったようで、出血した際に血が止まらなくなったり、脳や心臓の血管で出血してしまうと命に関わってしまうことも話しました。

さて、次は対策についてです。時間が足りず一緒に考えることはできなかったので、ほとんどをこちらから説明しました。

睡眠薬に関しては、①②③のいずれかを選択しようと説明しました。③は5日眠れないのは許容できるかもしれません。④はリスクが高いですし、⑤は避けられる選択肢が多くあるので選ぶ必要性は低そうです。

コレステロールの薬は、③④のいずれかを説明しようと説明しました。①②でもいいのですが、ひと手間かかるので大変です。血中濃度上昇の影響が少ないのであれば④でもいいですし、中止による影響が少ないと考えると③でもよさそうです。

抗血小板・抗凝固薬は、①②⑤から選択しようと説明しました③に関しては、中止すると逆に血管が詰まってしまう可能性があるので、選択すべきではないことを説明しました。①②が難しければ⑤を選択することも必要かもしれません。

解答・解説のスライドを準備してなかったのですが、あった方がよかったかなと反省。

 

 

全体を振り返って

久々だったのですごく疲れましたが、とても楽しかったです。体験の時間が短くなってしまったのは反省点ですが、最低限のことは伝えられたかなと考えております。

薬剤師の職能や魅力を、体験も含めて10分間で伝えるというなかなかの難問でしたが、コロナ禍ということも踏まえてこの企画にたどり着きました。今回授業をした生徒たちが薬剤師になってくれたとしたら約10年後ですから、10年後の薬剤師の姿も想像しながら企画しました。

今回の体験は難しいかな思ったのですが、難しいことをした方が興味をそそり、薬剤師にすごく興味を持ってくれる子が出てくるのではないかなと考えました。授業の趣旨としてはいけないのかもしれないのですが、全ての生徒の心に刺さらなくてもいいのかなと。数人でも興味を持ってくれたら作戦成功かなと考えておりました。

 

後日、今回の授業のアンケートの結果が返ってきました。授業前は、薬剤師に興味があったのは1人だったのですが、授業後では10名以上増えていました!嬉しいですねー!感想を読んでみると、しっかり私の意図が伝わり、薬剤師の役割を理解してくれたようでよかったです!

一番感動した感想がこちら↓(一部修正しています)

ただ患者に薬を渡すだけでなく、飲み合わせを確認したり、リスクがある中で仕事をしているのがかっこよかった。

素晴らしい!やってよかった!

「医療介護に興味が持てた、身近に感じた」「思っていた仕事違って勉強になった」という肯定的な感想や、「他人から尊敬され、頼られる職業を選びたい」という職業観につながるような感想も見られました。そこまで考えてくれたら大成功ですよね。中には「自分には合わない」と素直に書いてくれている子もいましたね。それはそれでいい経験になったのではないかと思います。

 

今回授業を受けた生徒の中で果たして薬剤師になってくれる子がいるのか。楽しみに10年間待ちたいと思います!

 

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

 

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