こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!
第50回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。
今回の録音はこちらからどうぞ↓
今回は「フリーテーマ」でした。
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まずは@たけちゃん
Lancet . 2022 Sep 10;400(10355):832-845.
PMID: 36049498
こちらは、スタチンによる筋症状の発現率を評価した大規模RCTのメタ解析です。
結果として、スタチンとプラセボとの比較ではRR1.03(1.01-1.09)と、わずかにスタチン群で筋症状の発現が多くなりました。特に服用開始1年目では、筋肉痛または脱力感発現RRは1.07(95%CI:1.04-1-10)でスタチン群で有意に多く、これは1000人年あたり11件の絶対過剰率に相当し、スタチン群の筋肉関連の報告の15分の1だけが実際にスタチンに起因していたことを示していると述べられております。それ以降では、RR 0.99(95%CI:0.96-1.02)と有意差はありませんでした。1年目での発現率はスタチン群14.8%、プラセボ群14.0%となっておりました。
また、ストロングスタチンとそれ以外のスタチンとの比較ではRR 1.05(1.01-1.09)と、こちらもわずかにストロングスタチン群で発現が多くなりました。
差はかなり少なそうですし、2年目以降に関しては有意差がないという結果でした。医療者側から提供する副作用情報としてのノセボ効果も大きいのではないかと思います。重篤な副作用についての解析結果は報告されておりませんが、イントロには【スタチンは、ミオパシー(1万人年当たり約1例の増加)、またはより重症の横紋筋融解(10万人年当たり約2-3例)を増やすことが知られている】と記載されております。
筋症状をフォローすることは重要なのかもしれませんが、それだけで有害事象を判断するのは困難かと思います。CKフォローのための採血をしているかどうかや尿の変色等を合わせて確認していく必要があるのではないかと思います。
@たけちゃんのブログでの解説↓
次は@猫になりたい薬剤師
Dapagliflozin in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction
N Engl J Med . 2022 Aug 27.
PMID: 36027570
こちらはダパグリフロジンのHFpEF患者における有効性と安全性を検討したRCTです。
結果としては、主要評価項目である心不全の悪化+心血管死の複合アウトカムを改善しましたが、個別のアウトカムを見ていくと、心不全の悪化のみが有意であり、心血管死、総死亡は減少傾向であるものの有意差はつきませんでした。
これは、エンパグリフロジンのHFpEF患者を対象とした「EMPEROR-Preserved試験」と同じような結果でした。
いわゆるハードエンドポイントである心血管死や総死亡を改善できなかったのは残念ですが、心不全入院や悪化を予防することができるのであれば、その分有意義な生活ができるのではないかと思うと、十分なのかなという気もします。心不全の入退院の繰り返しは本当に多いですし、QOLが下がるのは間違いないですので。
あとは、どの程度の年齢まで有効に安全に使えるかということが気になります。本試験の対象者の平均年齢は71歳ですが、80歳、90歳の患者さんも多いので、どこまで使えるのかなーと。
HFpEFは治療薬がほとんどないので、有効活用していきたいですね。
@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓
次は@zuratomo4
Ind Health . 2021 Oct 5;59(5):325-333.
PMID: 34421100
こちらはサージカルマスクによる熱中症リスクを評価したクロスオーバー試験です。
試験環境がスライドに書いてありますが、かなり過酷、、、しかもクロスオーバー試験なので、2回やってるんすね。つらい。。。ツイキャスではzuratomo先生が試験方法を詳しく解説してますが、これは大変そうです。
結果として、直腸温や外耳道温度に両群で差は見られませんでした。ただ、サージカルマスク群で口周囲湿度が上がっているので、これが不快感に繋がっている可能性はありそうです。
熱中症へのサージカルマスクの影響は少なそうですね。気にしすぎなくてもいいとは思いますが、やっぱり外せるときは外してしまった方がいいですよね。
キャス中に紹介していただいた関連論文を置いときますね。
(布製または使い捨ての手術用フェイスマスクの着用は、健康な人の激しい運動パフォーマンスに影響を及ぼさない)(PMID: 33153145)
・The effects of wearing facemasks on oxygenation and ventilation at rest and during physical activity
(安静時および身体活動時のフェイスマスク着用による酸素化および換気への影響について)(PMID: 33626065)
(コロナウイルス症2019(COVID-19)のパンデミックが日本における熱中症・熱疲労の発症に与える影響)(PMID: 35145700)
次は@リンコ
J Epidemiol . 2022 May 7.
PMID: 35527000
- こちらは、希望寿命と死亡率との関連を検討した前向きコホート研究です。
- 1990年に宮城県の40-64歳の住民約4万人を対象に、平均寿命よりも長く生きたいか、平均寿命くらい生きたいか、平均寿命よりも短い方がいいかをアンケート調査し、25年後にその回答によって死亡率に影響があったかを評価しております。25年がかりの研究ってすごいですね。
- 結果としては、長生きを希望した人よりも短命を希望した人で死亡率が有意に高く、長生きを希望した人と平均を希望した人とでは死亡率に差がありませんでした。
- 死因別では、癌と自殺での死亡が有意に高かったですが、心血管死や肺炎死、事故死に差はありませんでした。
- 自殺が有意になっていることも含めて交絡因子が残存する可能性は大きい気がしますが、短命を望めば短命となる傾向がありそうです。
- 個人的には、どんな人たちがどれを選択したのかが気になりまして、それが「Supplementary material」に載っています。喫煙経験者(ever smokers)が、長生きよりも短命で割合が高くなっているのが興味深かったですね(キャスでは間違って逆のことを言ってしまいました)。Ever drinker(飲酒経験者)は女性のみで同様の傾向になっていますし、睡眠時間や朝食の有無、婚姻、運動習慣、朝食を摂るかどうかでも傾向があったのが気になりました。個人的には子供の有無も調べてほしかったなと思いました。
- 短命を望むことは自由ですのでその意見を変えさせようとは思わないのですが、短命を選んだ理由があるのであれば、そこに必要なサポートをあてがう必要があるのではないかと感じました。
-
最後は@程々な薬剤師
Factors Associated with Physician Tolerance of Uncertainty: an Observational Study
J Gen Intern Med . 2022 May;37(6):1415-1421.
PMID: 33904030
こちらは、医師を対象に不確実性の許容度と幸福度指標との関連性を検討した観察研究です。
結果としては、不確実性の許容度が低いと燃え尽き症候群になるリスクが高く、またキャリア満足度が低くなる傾向が示されました。
特に医師は不確実性の高い職業だと思いますし、ある程度許容しないと長続きしないのかなと感じました。きっとどの職業でも同じで、受け入れすぎるのも問題だとは思いますが、やはりある程度は不確実性を許容しないとしんどくなりますよね。
個人的には、Table1に載っている専門医よりもプライマリケア医で許容度が低かったことが気になりました。各分野の専門医の方が限界をよく理解しているということなのでしょうか。確かにプライマリケアという分野は幅が広く、考え出したらキリがないようにも思いますし、何とかしてあげたいという医師が多いような気がしています。どこかで妥協点を見つけないとしんどくなりますし、燃え尽きないよう気を付けないといけませんね。
今回は以上になります!
参考になれば嬉しいです!
次回は10/26(水)22時より、テーマは「泌尿器科」にて配信する予定です。
よろしければご視聴くださいませ!