リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

月刊ブログ 田舎の地域医療を志す薬剤師(2022.3)(2021年度のJAGESのプレスリリース10選!)

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

 

先日、ソーシャルキャピタル(社会的つながり)に関する勉強会に参加し、重要性を再確認しました。

勉強会の中でJAGESの論文が多く引用されていたのですが、そういえば最近、JAGES関連の論文を読んでないなと思いまして。

そこで今回はJAGESを紹介するとともに、2021年度にプレスリリースされた報告から気になったものを紹介していきたいと思います。

 

まずは、JAGESの紹介から。

 

JAGESとは?

JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)は、健康長寿社会をめざした予防政策の科学的な基盤づくりを目的とした研究です。2019年調査には全国の25都道府県の64市町村と共同し、要介護認定を受けていない高齢者を対象に調査を行い、約25万人の高齢者に回答していただきました。全国の大学・国立研究所などの60超の機関に所属する研究者が、多面的な分析を進めています。文部科学省、厚生労働省、米国National Institute of Health(国立衛生研究所)を始めとする多数の研究助成を受けて進められています。

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JAGESの研究目的

世界一の健康長寿を誇る日本の高齢者の実態を多面的に描き出すことにあります。この研究を進めることで、以下の効果が期待されています。

① 「健康の社会的決定要因」の重要性を示す

② 「健康格差」の実態を明らかにする

③ 介護予防戦略見直しの方向性を見出す

 

JAGESからは毎年いくつもの研究結果が報告されています。

これまで報告された代表的なものを以下に紹介しておきます。

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高齢者における社会参加やソーシャルキャピタルが注目されているのがポイントですね。経済格差や教育歴、また歯との関連の報告も多い印象です。

この他にも多くのプレスリリースが出ておりますので、興味がありましたら是非一度見てみてください!

JAGESのプレスリリースページ↓

 

 

さて、2021年度にはJAGESプロジェクトからは約50件のプレスリリースが発表されております。

今回は、この中から個人的に気になったものを10件選びましたので、それを紹介していきたいと思います。

 

 

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【原著論文】
J Epidemiol . 2021 Feb 6.
PMID: 33551388
【コメント】
趣味があるということは、人との交流も生まれますし、目標もできるでしょうから、生き甲斐にはなるでしょうね。それが複数あるのは素晴らしいことだと思います。元気な証拠ですね。
趣味が仕事にならないように、いろんな趣味を見つけていきたいものです。
 
 
BMC Public Health . 2019 Feb 19;19(1):209.
PMID: 30782149
【コメント】
JAGESの論文を読んでいると、低学歴と好ましくないアウトカムとの関連を示唆した報告を時々目にしますし、こちらもそういった内容となっております。
要因としては、医療介護へのアクセスや制度への理解不足や金銭的な余裕がないことが挙げられるのかなと感じています。学歴まで確認することは難しいかもしれませんが、対象者にはより手厚い医療介護の介入が必要なのかもしれません。
 
 
Int J Environ Res Public Health . 2020 Dec 11;17(24):9276.
PMID: 33322467
【コメント】
ギリギリ差がついているという印象もぬぐえないですが、同様の報告が他にもあるので、再現性はあるのかなと思っております。緑があるというのは目に優しいですし、ほっとしますよね。必要以上に生えると大変ではありますが。これが、うつ病が減るというレベルまで落とし込まれるのは大変興味深いように思います。
 
 
Sci Rep . 2021 Apr 12;11(1):7966.
PMID: 33846416
【コメント】
そうですよね、という結果かとは思います。フレイルを予防することも大切だとは思いますが、ある程度仕方ないことだとは思いますので、口腔ケアを強化するなどして肺炎を予防していくことも必要ではないかと思います。
 
 
Soc Sci Med . 2021 May;277:113895.
PMID: 33882441
【コメント】
イギリスの状況はよく分かりませんが…
これもやはり社会的環境と関連しているように思います。義歯は高いですからね。歯が減ることで外出が億劫になることもありそうです。
JAGESには歯に関する研究がいくつかあるので、合わせて読んでみるといいかもしれません。たかが歯なのかもしれませんが、歯から分かることも多いようです。
 
 

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【原著論文】
Int J Environ Res Public Health . 2021 May 19;18(10):5414.
PMID: 34069391
【コメント】
これも類似の論文がJAGESから報告はされておりますが、改めて老後の社会参加の重要性を痛感させられた報告です。医療介護費の削減は急務ですので、このような機会を作る側として何か取り組みたいなと感じております。
 
 

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【原著論文】
Sci Rep . 2021 May 19;11(1):10612.
PMID: 34011984
【コメント】
個人的によく分かるのですが、スポーツ観戦はストレス発散に適していますね。もちろん推しのチームが負けてしまって逆にストレスが溜まることもありますが、、、
プロスポーツに限らないとのことですが、時々少年野球を見に来てるおじいちゃんとかいますよね。そういったことも一つのストレス発散や生き甲斐になっているのかもしれませんね。特に子供が頑張っている姿っていいですよね。
 
 

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【原著論文】
BMJ Open . 2021 Jun 17;11(6):e043723.
PMID: 34140341
【コメント】
これはどうですかね、交絡因子な気もするのですが…でもBMJだし…
社会参加の中でワクチンの話をしたり、社会参加する人はより健康への意識が高かったりする可能性はありそうですけどね。自分の分野なだけに、まだ腑に落ちないですね。
 
 

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【原著論文】
J Epidemiol Community Health . 2022 Feb;76(2):182-189.
PMID: 34341149
【コメント】
これも興味深いですねー
ソーシャルキャピタルには地域差があるとは思いますが、それがもろにアウトカムに影響するかもしれません。定期的に何かしらのイベントを作って、みんなが参加する機会を作っていくことで、地域ぐるみでフレイルの発生を予防できる可能性がありそうです。
 
 

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【原著論文】
【コメント】

今回紹介した中で、こちらだけは和文の報告となっておりました。

私自身も通いの場でお話させていただくことがあり、その重要性を再認識しております。コロナ禍で回数が減っておりますが、早く再開できるように願っております。

ただこの通いの場には男性がなかなか出てこないのは問題点だと感じております。男性向けの取り組みも考えていきたいところです。

 

 

紹介は以上となります。

 

なお、JAGESプロジェクトではこれまでに2010年度、2013年度、2016年度、2019年の4回にわたって「健康と暮らしの調査」が実施されており、次は2022年度となっております。

2022年度の調査の案内がこちらに出ておりますので、興味のある方はご覧ください。

私の住んでいる町は初期からJAGESの調査に参加しており、この質問票を見せてもらったことがあるのですが、なかなかボリュームがあるんですよね。

でもこうやって様々なことがこの研究から明らかになってきますので、対象者の方には頑張って調査に参加していただきたいと思います。

 

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

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