リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

最近読んだ本;健康・医療情報の見極め方・向き合い方ー健康・医療にかかわる賢い選択のために知っておきたいコツ教えますー

こんにちは!リンコ(@manabunoda)です!

 

今回読んだのは、

「健康・医療情報の見極め方・向き合い方ー健康・医療にかかわる賢い選択のために知っておきたいコツ教えますー」

です。

 

 

 

著者の大野智先生は、嵐の…ではなく、補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、日本緩和医療学会ガイドライン統括委員(補完代替療法分野担当)も務められております。(本文より)

また、朝日新聞apitalでは「これって効きますか?」という統合医療をはじめとした医療情報に関する連載を2週間に1回されており、これが本当に分かりやすくて。毎回楽しみにしております。

 

さて、本書はこの朝日新聞apitalで連載されていた、「健康・医療情報の見極め方・向き合い方」をテーマに2017年6月から2018年2月まで連載された原稿に加筆修正したものです。残念ながら、もう連載記事は消えてしまってますね。。。

 

医療者として、一般の方に健康・医療情報の取り扱い方を伝えるのは非常に難しいです。本書を実際に話をする際の参考にさせていただこうと思い読み進め、たくさんのヒントをいただきました。特に、「医療の不確実性」や「価値観・意思決定」については非常に参考になりました。積極的に活用させていただこうと思います。それでも、研究の手法等についてはなかなか説明が難しく感じました。

もちろん本書は一般の方向けであり、わかりやすい平易な言葉で書かれておりますので、本書を読んで少しでもうまく健康・医療情報と付き合っていけるようになってもらえればと思います。

 

 

それでは気になった10か所を引用して本書を紹介をしていきたいと思います。

 

2015年に総務省が実施した調査によると、健康や医療について調べたいことがある場合、GoogleやYahoo!などのインターネット検索サイトを利用すると回答した人が約75%に上ることが明らかになっています。

※参考:総務省|平成27年版 情報通信白書|情報収集

 

「令和元年度健康食品試買調査結果」によると、125品目中116品目に不適正な表示・広告が認められたことが明らかとなっています。

不適正な表現の具体例として、「緑内障や不妊症、がん治療にも」 「冷え性が改善する」「代謝アップ」「免疫力を高める」「悪玉コレステロールの減少」「アレルギー改善」などが挙げられています。

※参考:令和元年度健康食品試買調査結果|東京都

 

「健康食品を含むすべての食品は、病気の予防・治療を目的に用いるものではない」ということです(特別用途食品、疾病リスク低減表示特定保健用食品は除きます)。つまり、食品であるにもかかわらず、病名を記載したり、病状の改善効果を記載したりして商品を広告・販売している企業は、もしかすると法律違反を厭わない企業姿勢・経営理念なのかもしれません。

 

極論が散りばめられた書籍を筆者自身、手に取って読んでみたことがあります。中には、医学的観点から明らかに「虚偽」「捏造」などの誤った情報も散見されました。これら極論の内容が含まれる書籍には多種多様なものがありますが、ここでは便宜上、「希望」系と「恐怖」系に分類してみました。

 

本当は効果のない薬でも、多くの人が試しているうちに、「症状が改善した時期」と「薬を使った時期」がタイミングよく重なるケースが出てきます。すると、その薬はたちまち特効薬のように考えられるようになってしまうことがあります。「3た」論法で説明できるのは、「薬を使った時期」と「病気が治った時期」が、時間軸でとらえたら、ただ単に関連があったということだけです。

 

「カラーテレビと平均寿命」の関係と同じように、因果関係はないのに強い相関関係がある事例ばかりを集めた面白いウェブサイトがあります。

※参考:Spurious Correlations

 

私自身、厚生労働省の事業として健康・医療に関する情報の見極め方のコンテンツ作成にも取り組んできました。しかし、自分でこのようなことを言うのはおかしいですが、ポイントやコツが少し多すぎるかもしれません。(中略)逆説的な提案になるかもしれませんが、人が情報にだまされないようになるためには、「人はもともとだまされやすい」ということを常に意識しておくことが重要なのだと思います。

 

ランダム化比較試験で有効性が立証された治療をおこなっても、治る人もいれば治らない人もいることになります。これを「医療の不確実性」と言います。

最も信頼性の高い情報であるランダム化比較試験の結果がそうであるように、情報は「白か黒か」で明確にできるものではありません。色で言うなら、正確な情報も「灰色(グレー)」ということです。ランダム化比較試験やシステマティックレビューの結果は、「白に近い灰色」なのか「黒に近い灰色」なのかを示してくれるものにすぎないのです。

一方で、その治療を「する・しない」といった現実の決断・行動は、「するか・しないか」白黒つけなければなりません。これは、「灰色(グレー)」の情報をもとに、「白黒」はっきりつけて、決断・行動の意思決定を行わなければならないことを意味しています。つまり、情報を自身の意思決定に取り入れるのか取り入れないのか、情報との向き合い方を考える必要性が出てきます。

 

降水確率が50%で「傘をもっていかない」と判断した人は「正しい」のでしょうか、それとも「間違い」なのでしょうか?ともすると、人間は、自分の取った行動が正しかったのか、間違っていたのかを意識してしまいます。(中略)

降水確率が50%なら普段は「傘をもっていかない」と判断する人でも、「友人の結婚式に参加するために普段は着ない値段の高い服を着ていて、雨に濡れたくない」という場合には、「今日は念のためにもっていこう」と判断することがあるかもしれません。

このように、同じ人であっても、決断・行動の意思決定に影響を及ぼす価値観は、時と場合によって変化します。ですから、「私に価値観はこうだ!」と決めつけてしまわずに、少し心に余裕をもって価値観をとらえてもらえたらと思います。

  

なぜ、多くの患者が補完代替医療に関心をもつのでしょうか。もしかすると、患者は病院が提供している医療だけでは不安を払拭できず、自分でも何かできないかと気が気ではない状況にあるのかもしれません。そうなると、患者が補完代替医療に関心を持つのは、医療側に問題がある可能性すら考えられます。そして、不安を抱えたままの状況で重大な意思決定をしなければならないとき、人はしばしば不合理な判断をしてしまうことがあります。 

 

 

 

今回は以上になります!

参考になれば嬉しいです!

 

 

 

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