リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第24回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2020.7.15)(フリーテーマ)

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第24回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

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録音はコチラからどうぞ↓(途中で落ちたから2つに分かれています)

 

今回は「フリーテーマ」でした。

メニューはコチラ↓

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今回は以上の6名で配信を行いました。

 

それでは、それぞれの論文を紹介していきます。

 

まずは@リンコ

Angiotensin-neprilysin inhibition versus enalapril in heart failure

N Engl J Med . 2014 Sep 11;371(11):993-1004.

  • PMID: 25176015

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先日承認を受けた「サキビトリルバルサルタン錠(エンレスト®)」の海外第3相試験である【PARADIUM-HF試験】の論文になります。作用機序はちょっとややこしいのですが、最終的にはスライドにあるようにナトリウム利尿ペプチドの作用を亢進させることで、「全心血管抵抗↓」「線維化・心室肥大↓」「ナトリウム利尿・利尿↑」の作用を示し、心保護作用を発揮し、心不全の予後改善薬として期待されております。

利尿剤やβブロッカー等の標準治療を行っているHFrEF患者を対象に投与し、エナラプリル群と比較したところ、心血管死および心不全による入院を大幅に減らす結果となり、試験は早期中止されております。有害事象はエナラプリルとほぼ同等といえるのではないかと思います。ブラジキニンの分解を抑制するので、ACEIのような空咳も起こり得ります。

大いに期待してもいいのかな、と思ったのですが、IFに記載のある国内第3相試験(PARALLEL-HF試験)では参加者が約200人と少なかったこともあり、エナラプリル群との同等性は示されましたが、優越性は示されませんでした。また、HFpEF患者を対象とした国際共同第3相試験である【PARAGON-HF試験】でも同様に優越性を示せませんでした(惜しかったんですけどね…っていう言い方は良くないのかもしれませんが。)

効果の期待できる患者は限定的なのかもしれませんし、発売後にどのような立ち位置になるのか注目していきたいと思います。

参考↓


 

次は@たけちゃん

Estimating lifetime benefits of comprehensive disease-modifying pharmacological therapies in patients with heart failure with reduced ejection fraction: a comparative analysis of three randomised controlled trials

Lancet . 2020 Jul 11;396(10244):121-128.

PMID: 32446323

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こちらの論文は新たに心不全に対して承認された薬剤と従来治療の効果を比較した3つのRCTのメタ解析です。

結果としては、大幅にCVD死および心不全入院を減らすことが示唆されました。

アブストラクトのみしか読めなかったので詳細は分かりませんが、なぜこの3つの論文を選んだのかが気になります。いわゆるチャンピオンデータを集めてきたという気もします。そのためこの結果をそのまま鵜呑みにすることはできませんが、他にもトルバプタン、イバブラジン等の薬剤も登場しており、心不全治療の大きな分岐点にいるのかもしれません。

 

 

次は@にいやん

Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and bullous pemphigoid: A systematic review and adjusted meta-analysis 

Australas J Dermatol . 2020 Feb;61(1):e15-e21.

PMID: 31215644

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こちらはDPP-4阻害剤と水疱性類天疱瘡との関連についての論文のメタ解析です。

これはもう有名な副作用かと思いますが、その関連が示された結果となっております。特に気になったのは薬剤によって差があり、ビルダグリプチンのオッズ比が高くなっていることです。私自身全然知らなかったのですが、キャス中にも話があったようにビルダグリプチンとの強い関連は様々な論文で指摘されているようです。

全体的にI²は大きめですが、ブロモグラムは一致しており、ある程度信頼できる結果なのではないかと思います。 

薬剤師としては必ず頭に入れておきたい副作用ですね。

 

 

次は@zuratomo4

Facemasks for prevention of viral respiratory infections in community settings: A systematic review and meta-analysis 

Indian J Public Health . 2020 Jun;64(Supplement):S192-S200.

PMID: 32496254

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こちらはマスクの着用とILI(インフルエンザ用疾患;influenza-like illness)発症との関連を調査したRCTのメタ解析です。

マスクのみでは有意差はつかず、マスク+手指衛生でも有意差はつきませんでしたが、バイアスのリスクの大きな1つの研究を除けば有意な減少が認められました。effect size -0.34ということで、まずまずの効果がありそうですし、I²は0%となっております。

つまりは、マスクのみでは効果がなく、手指衛生が追加で必要ということが示唆されております。最近、一般の方とトイレが一緒になった時、手洗いの甘さが目につくことがあります。せっかくマスクをしていても手洗いがなされてないと意味がないかもしれません。この論文を読んで手指衛生の重要性を再認識したとともに、一般の方に十分に啓蒙していかないといけないと感じました。

 

 

次は@猫になりたい薬剤師

Effects of Allopurinol on the Progression of Chronic Kidney Disease 

N Engl J Med . 2020 Jun 25;382(26):2504-2513.

PMID: 32579811

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こちらは先日より話題になっていた論文ですね。

結果はアロプリノールによる有効性を示せませんでした。注目され、期待もされていただけに残念な結果と言えると思います。

キャスでも話しましたが、このアウトカムとしてのeGFRの妥当性や追跡期間の妥当性が気になりました。ただよく考えてみると、今回の結果では1年あたり3ml/min/1.73m²程度ずつ減少しており、この勢いで下がっていけば末期腎不全となりますので、妥当といえそうです。

尿酸低下薬の使いどころは難しいですね。。。

@猫になりたい薬剤師のブログでの解説↓


 

最後は@程々な薬剤師

Urinating standing versus sitting: position is of influence in men with prostate enlargement. A systematic review and meta-analysis 

PLoS One . 2014 Jul 22;9(7):e101320.

PMID: 25051345

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さて、キャス中には大いに盛り上がったこの論文ですが、、、

男性の排尿時に立ったままかそれとも便座に腰を掛けて行うのかによってのアウトカムの差を検討した論文のメタ解析です(メタ解析できてしまうのがすごいw)。

結果としては残尿量のみに差が認められ、立って排尿した方が残尿量が少ないという結果になりました。

複数アウトカムが設定されているので偶然という可能性もありますが、残尿量が多い方には排尿の状況を確認してもよいのかもしれません。

私自身は立って排尿をしますし、それが当たり前だと思っていましたが、配信者同士でも意見が分かれる結果に。

てことで、zuratomo先生がtwitter上でアンケートを取ってくださいました!その結果は…

拮抗しましたが、座る派が優位な結果に!!

座る人多いんですね…う〇こ出そうになるやん…

 

 

今回は以上になります。

何かの参考になれば嬉しいです♪

 

次回は8/26(水)の22時00分から「痛み止め」をテーマに行う予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

 

引き続き参加者は募集中ですので、ご希望がございましたらご連絡ください!