リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

第17回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)(2019.12.16)(お題:抗菌薬)

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第17回エビデンス展覧会(略して、エビテン!)の開催報告です。

 

録音はコチラから↓(今回も配信トラブルがあり3つに分かれております。。。)

今回のテーマは「抗菌薬」でした。

 

メニューはコチラ↓

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まずは@たけちゃん

Effect of Combined β-Lactam/Macrolide Therapy on Mortality According to the Microbial Etiology and Inflammatory Status of Patients With Community-Acquired Pneumonia.

Chest. 2019 Apr;155(4):795-804.

PMID: 30471269

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市中肺炎へのβラクタム+マクロライドとフルオロキノロン(+βラクタム)における肺炎球菌性肺炎、高CRPでの解析です。全体として30日の死亡率はβラクタム+マクロライドで低く、また肺炎球菌性肺炎+高CRP群ではOR0.28という結果でした。

ありがちな症例だとは思いますので、試してみる価値はあるかもしれません。

以下に、「成人肺炎診療ガイドライン2017」より関連しているCQを転記します。

CQ07

CAPのエンピリック治療において、非定型病原体をカバーした抗菌薬の使用は推奨されるか?

A.実施することを弱く推奨する

 

CQ08

CAPのエンピリック治療において、βラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することは推奨されるか?

A.実施しないことを弱く推奨する

※CO08におけるメタ解析:Beta-lactam plus macrolides or beta-lactam alone for community-acquired pneumonia: A systematic review and meta-analysis.(PMID:27338144)

非定型のカバーや マクロライドの併用は、それほどエビデンスレベルの高いものではないかもしれませんね。

 

 

次は@程々な薬剤師

Prulifloxacin versus levofloxacin in the treatment of chronic bacterial prostatitis: a prospective, randomized, double-blind trial.

J Chemother. 2007 Jun;19(3):304-8

PMID: 17594926

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論文の中身はあまり褒められるものではなかったようですが…

結果としては、レボフロキサシンとプルリフロキサシンは同等だったようです。他の試験では、シプロフロキサシンとレボフロキサシンでの試験もありましたが、それも結果は同等でした。

他にも論文を探してみましたが、この分野は報告が少ないようでイマイチ掴めず…

ちなみに、サンフォード感染症治療ガイドでは、

第1選択

・シプロフロキサシン経口500mg1日2回4週または

・レボフロキサシン経口750mg1日1回4週

第2選択

・ST経口2錠1日2回1~3か月または

AZM(C. trachomatisが疑われる場合)

となっておりました。

主な起因菌は腸内細菌科細菌ということですので、抗菌薬はそれに合わせればいいと思いますし、あとは移行性ですかね。でも、前立腺への移行性の良い抗菌薬って何があるのでしょうか??

 

 

次は@リンコ

Outcome measurement of extensive implementation of antimicrobial stewardship in patients receiving intravenous antibiotics in a Japanese university hospital.

Int J Clin Pract. 2012 Oct;66(10):999-1008.

PMID: 22846073

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感染制御チームの治療への介入の論文を取り上げました。こちらは岐阜大学病院からの報告です。

介入の種類としては、抗菌薬の種類、用法用量、治療期間、TDMの推奨、de-escalation、培養推奨等があったようです。3day bandleを用いて3日ごとに見直しをしたり、全例に週2回の介入を行っていたようで。すごい…

結果としては、AUDとしては有意な減少、また14日以上の長期使用、入院期間、静注抗菌薬のコスト減少に寄与したようです。短い期間なので、耐性率への差は出なかったのではないかと思います。

もちろん治療効果を高めることが最も大切な介入の効果だとは思いますが、抗菌薬の適正使用の推進にて将来的には耐性菌の減少に寄与するのではないかと思います。市中病院でここまで取り組むのは難しいですが、少しでも近づくことができればいいなと。

その他、フリーで読めませんが感染制御チームでの介入といえば!ということで、神戸大学での感染制御チームの介入に関する論文を紹介しておきます。

・いわゆる「Big Gunプロジェクト」

Long-term efficacy of comprehensive multidisciplinary antibiotic stewardship programs centered on weekly prospective audit and feedback.(PMID:29134582)

・3世代セフェムの不適切な使用を減少させるための教育介入の効果

Efficacy of educational intervention on reducing the inappropriate use of oral third-generation cephalosporins.(PMID:31605309)

 

 

次は@zuratomo4

Clinical outcomes of extended versus intermittent administration of piperacillin/tazobactam for the treatment of hospital-acquired pneumonia: a randomized controlled trial.

Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2017 Mar;36(3):459-466.

PMID: 27796647

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 βラクタム系薬は、Time above MICが一定以上あると治療効果が高まると言われているので、PIPC/TAZの長時間投与や持続投与が試みられることがあります。

こちらもその効果を間欠投与と比較した論文ですが、やや質としては良くなかったようです。

TAZ/PIPCの関する長時間投与や持続投与に関しては他にたくさん論文が出ております。サンフォードを参考にして、2つ紹介しておきます。

Piperacillin-tazobactam for Pseudomonas aeruginosa infection: clinical implications of an extended-infusion dosing strategy.(PMID:17205441)

1日用量の少ない長時間投与の方が1日用量の多い短時間投与より治療成績が上回っていた

 ・Identification of optimal renal dosage adjustments for traditional and extended-infusion piperacillin-tazobactam dosing regimens in hospitalized patients.(PMID:19858253)

腎機能別の短時間投与と長時間投与での血中濃度のモンテカルロシュミレーション 

 

 

最後は@にいやん

Serious bleeding events due to warfarin and antibiotic co-prescription in a cohort of veterans.

Am J Med. 2014 Jul;127(7):657-663.e2.

PMID: 24657899

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やはり抗菌薬との併用で出血は増えるようですね。ただ、抗菌薬開始後数日でINRを測定した症例では出血リスクが低下したようです。やはりINRは延長しやすいので、こういったチェックは重要ですね。それに、特にWFを服用している患者においては、不用意な抗菌薬は慎みたいものです。

他にも、WFと抗菌薬の併用に関する論文はこんなのがありまして

Warfarin interactions with antibiotics in the ambulatory care setting.(PMID:24445404)

こちらを読むと、WFと抗菌薬の相互作用はCYPの影響というよりも抗菌薬によるVK産生低下の影響が大きそうです。

 

 

今回は以上になります。

次回は1/22(水)の22時から「フリーテーマ」で行う予定です。

よろしければご視聴くださいませ!

また、エビテンに関するアンケートを作りましたので、よろしければお答えくださいませ。