先日の急患センターでのお話。
小児にイナビルが処方されて吸入指導をしたのですが…
- 吸うことがなかなか理解できず、何度言っても吹き続けた事例
- 苦すぎて吐き気を催しながらも何とか吸えた事例
この2つの事例を経験しました。
これらを通して、まずは自分自身がリスク管理をできていなかったことに反省しました。正直なところ、小児への指導が久しぶりであり、その辺の感覚が鈍っていたのです。普段は主に高齢者を対象として指導や調剤をしていますので、高齢者であれば想定は容易なのですが…まあでもこれは言い訳で、薬剤師であればこのくらいは想定できないといけませんし、代替案や対処法を用意しておかないといけなかったと思います。
1つ目の事例は、笛付きの練習機があるのを失念していて、いきなり実薬を使ったのが1番の反省点です。お恥ずかしい…
2つ目の事例はについては、事前に苦みがあることを伝えておく必要があったかもしれませんが、小児だから理解はできなかったかもしれません(以前、自分が罹った時に吸いましたが、かなり苦かった記憶があります)。あまりに辛そうだったので声掛けはしましたが、頑張れる、とのことだったので最後まで続けてもらいました。苦いこともあり吸入が弱めだったので、計10回以上吸ってもらいましたが、なかなか見ているのが辛かったです。内服に変更するという手段もありましたが、タミフルDSは苦いので、そちらに変更すると5日間苦しまないといけないといけなかった可能性も、、、
処方医が気を利かせるべきだという意見もあると思いますが、それができるのは少数であることは理解していますし、そこには薬剤師が役割を果たさないといけないと思います。極論を言えば、処方箋に「抗flu薬のうちどれでもいいから一番合いそうなものを選んで処方ヨロ!」って書いてもらって、薬剤師が選ぶくらいでもいいのではないかと思います。
ちなみに高齢者であればどういったことが想定できるかというと、5日間の内服や吸入は可能か?、内服できるか?、カプセルは飲めるか?、(呼吸機能、認知機能を考慮して)吸入できるか?、介護者に過度な負担がかからないか?などが挙げられるかと思います。
ちょっと話がずれますが、、、このような視点で捕らえると、ゾフルーザ®というのは利便性が高く、使用しやすい薬かもしれません。服用が1回で済み、内服なので吸入ミスは起こらず、目の前で服用してもらえば内服の確認ができ、看護・介護者にかかる負担は極めて少ないです(顆粒はおそらく来年発売かと思います)。ただ議論になっているのが耐性の問題と新薬ゆえのリスクの不透明さです。それと、シ〇ノギの若干行き過ぎたプロモーションとそれに乗っかるアホな医療者。。。
そういったことを考えると、現段階では他の抗flu薬を使えない患者に限定しての使用でいいのではないかと思います。確かに画期的な薬ではありますが、代替薬はたくさんあり、飛びつく必要はないように思います。コストもオセルタミビルのGEと比べるとかなり高いですし。
ゾフルーザのリスクに関しては、EARL先生のブログがとても参考になりますのでご紹介いたします。
また、抗flu薬の効果は限定的です。種々の文献から、一般的には有症状期間を半日から1日減らす程度の効果であることがいえると思います(ハイリスク患者はちょっと別の話)(文献を紹介せずにすみません)(イナビルは効かな…というのはちょっと置いといて)。
このあたりに関しては、藤原先生のツイートをご参考に。
インフルエンザは薬を飲まなくても3-4日あれば熱は下がる。
— 藤原崇志 (@TFujiwarbi) January 12, 2019
薬飲んで熱が下がると「薬効いた!」と思うだろけど、薬の効果は症状が治まるのを1日早くしてくれるぐらい
横軸:インフルエンザになってからの日数
縦軸:発熱とかの症状が持続してる人数
(検査なしで、自分の病気を推理する方法 p176) pic.twitter.com/LZxmSj7A1C
なので、特に抗flu薬を使用しなくてもさほど困らないかもしれません。まあでも私がインフルエンザに罹れば抗flu薬を使用すると思いますし、今までも使用してきました。高熱等の辛い期間はできるだけ短い方がいいですし、オセルタミビルであれば予防投与を含めて今まで何度か服用して副作用が出ていないので比較的安全に服用できそうですし、6日以上休むことになったら職場に迷惑をかけますし(解熱後2日以上経たないと復帰できないルールですので)、せっかく5日間休めるのに自由時間が増えた方がいいですし(おい!)。まあでもせっかくなので、今度罹った時は使用しない、ということを試してみましょうかね。
何が言いたいのかよく分からなくなってきましたが…話を戻してそろそろ〆ます。
薬が処方されたとき、それを使用することで患者さんにどういったベネフィットがあり、リスクがあるのか、そしてそれが適切に使用できるのか、服用できるのかを薬剤師は考える必要があります。これは抗flu薬だけではなく、すべての薬において、よくよく考えると当たり前のことだと思います。場合によっては疑義照会しなければなりません。
今回の症例を経験し、当たり前であり大切なことを思い出し、考えるきっかけとなりました。今後に活かしていきたいと思います。