リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

最近読んだ本;「「3ステップで推論する副作用のみかた・考えかた」&「すべての医療は「不確実」である」&「地域医療と暮らしのゆくえ」&「ここが知りたい 循環器の薬と使い方」

最近読んだ本をまとめておきます。

今回は4冊紹介します。

 

副作用に関する書籍はいくつか読んだことがありますが、この書籍は症例を用いた推論ベースで進んでいくのが他の本にはないところかと思います。本書のそれぞれの症例では、疾患や薬、副作用のことがとても丁寧に記載されていますのでその分物足りなさを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、特に若手の薬剤師にとっては推論の方法も含め、勉強になるのではないかと思います。

副作用を疑う症例には度々遭遇しますが、本書を読んで自分のアセスメントの浅さを知った気がします。今よりもっと深めていかないといけないのかもしれません。また、副作用を疑うことは薬剤師の役割として大きいとは思いますが、同様に疑われた副作用を根拠を持って否定する役割もあるのではないかと個人的には考えております。ある症状が発現した時、安直に副作用が疑われるケースが時折見られ、「えっ、それは副作用じゃないでしょ。。。」と思うこともありますので。

そしてこのような副作用は貴重な症例であることもあると思います。本書の中の症例には論部として症例報告されているものもありました。論文化することで、次につなげることができると思いますし、その必要性を感じました。

残念だったのが、化学療法の症例が多いように感じたことです。副作用マネジメントの重要性は分かりますが、うちの病院で化学療法はほとんど行いませんので…本書に関しては考え方が重要だとは思いますので、そこを気にしてもいけないのかもしれませんが…

最近よく考える個人的な課題としては、一症例をもっと大切にしないといけないということです。それは患者さんにとってもそうですし、自分の経験、知識として深め、身につけていかないといけないという意味もあります。そういった意味では、こういった副作用が疑われるような症例は十分なアセスメント&ディスカッションをし、自分の糧としていきたいものです。

 

 

そうなのです。すべて「不確実」なのです。でもこれは一般の方にはなかなか理解しにくいことなのかなと感じています。

いくつか引用して紹介していきます。

 

健康な個人が、いつどんな病気にかかるかは、医師でもわからない。病気にかかった個人に、個別の治療がどの程度効果があるのか、あるいは効果がないのかも、実際に治療を施してみないとわからない。不治の病を患った個人が、あと何年生きられるか、ピタリといい当たてられる医師はいない。

「現代の医学は進歩しているのだから、自分の病気も直せるはず」と、患者はだれしも思いたくなる。しかし、あえて指摘しよう。どんなに医学が進歩しても、すべての病を克服することはできないし、老化を止めることもできない。生物であるヒトはいずれ死ぬ。その意味で、医療は永遠に不確実である。(P4)

医療の不確実性を理解しないと、医療をうまく活用することもできないし、誤った選択でかえって病気を悪化させることにつながりかねない。医療のリスクはなるべき避けるべきだが、ゼロ・リスクはありえない。例えば、どんな薬にも副作用がある。まれな副作用リスクを恐れて、必要な薬の服用を回避すれば、その薬の効果という恩恵を逃すことになる。(中略)このようなリスクを「悪」ととらえ、医療自体を否定することは非合理的である。(P37)

医療の世界にいると「不確実」だとよく感じます。よく言う、「太っている人は不健康な人が多く、病気にもなりやすい」ということ。確かにそれはそうですが、太っていても健康な人もいるし、太っていなくても不健康であることも多くある。余命なんてのはあくまで平均値で、当たる場合も当てはまらない場合も、大いに外す場合もあります。ドライな言い方をすると、すべては確率なのです。

確率なんてあてにならないのはパチンコやスロットに夢中になっていた時期のある私にはとてもよく分かります。90%ループなんて単発で終わることもありますし、スロットの北斗の拳で100連以上した友人がいるのに、私は20連以上を1回しか経験したことがないですし、設定6でも負けるし、0.01%なんて引くときは引くし。不謹慎かもしれませんが、そんな考え方でもいいような気がしています。

 

また、メディアの情報発信についても意見されているところが私としてはすごく感銘を受けましたので、引用して紹介いたします。

「メディアがワクチンの「副作用」の可能性を報道することは自由だ。「副作用」の「被害者」を前面に出して、弱者の味方に立つことも自由だ。問題は、報道内容が著しくバランスを欠いていることである。新聞記者は科学的根拠を徹底的に調査して書くよりも、センチメンタルな記事の方が書きやすいのだろうか。」(P144)

「臨床研究を経ていない、動物実験・細胞実験の段階で誇張報道が繰り返されることは、人々が接する機会を増やすだけであり、むしろ人々の医療へのリテラシーを下げてしまうことにならないだろうか。報道する側にはそうしたことまで考えて欲しいと言うのは、果たして高望みだろうか?」(P164)

メディアのみなさん、どうですか?売れればいい、読まれればいい、話題になればいい。そんな記事が後を絶ちません。メディアのみなさんは本当にそれでいいのですが?そうではないと言っていただけることに期待しています。

 

 

 

高山先生といえば、厚労省で勤めた経験ももたれる、沖縄の感染症内科&地域ケア科医としてご高名な医師です。私自身、学会などで何度かご講演を拝聴したことがあり、感染症や在宅医療、地域包括ケアシステムについて勉強させていただきました。

本書は沖縄における超高齢者の地域医療がメインのテーマですが、実症例をもとに様々な問題提起をされており、とても考えさせられました。「地域包括ケアシステム」という言葉の聞こえはいいですが、それを成り立たせるのは本当に大変です。本書を読んだ上でも普段の業務を通した上でも思いますが、医療者と地域住民や患者には疾患・介護・看取り・知識への隔たりが大きいように思います。そういった部分を埋めるような働きかけもしていかないといけないと実感しました。

また、本書の中で時折みられた在宅ならでは、沖縄ならではの医療スタッフと患者さんのやり取りには心が和みました。一番心に残っているのが、CPAのおじいちゃんの心マをおばあちゃんが行うシーン。とても暖かい気持ちになりました。

 

 

 

循環器で使われる薬剤ってわかりにくいし、勉強の仕方もわからないし…

って悩んでいた時に出会ったのがこの本でした。

特に抗不整脈薬とその周辺の病態に関しての苦手意識が強かった私ですが、本書を読んでかなり理解が深まった気がします。また本書はたくさんの文献を引用して書かれているのが印象的です。時間のあるときにその引用文献もじっくり読んでいきたいと思います。

この分野を苦手にしている方に超絶お薦めです。ちょっと価格は高めですが、だまされたと思って買ってみてください!補償はしません!w

 

 

私的2018年発売の本でのベスト3はこちらから↓