リンコ's diary

田舎の地域医療を志す薬剤師

多職種連携の会 第6弾:「フリーテーマ」だったので「ポリファーマシー」について語りました!

10月の多職種連携の会は「フリーテーマ」。テーマを絞ってしまうと話が広がらなかったり、本来伝えたいことが伝えられなかったり、テーマにも限りがあるのでちょっと違ったことをしたくてこういったテーマにしました。逆に難しくなった面もあったようですが…

 

看護師からは、10月より始まった「地域包括病棟の現状と問題点」について。これがなかなか悩ましくて。1か月目ということで課題山積ということでした。薬剤師としても加算が取れなくてやる気が…という部分もあるのですが。ケアマネ等にも理解をしてもらわないといけませんし。しばらくはそれぞれに悩ましい状況が続くのかな、と。

リハからは「リハビリ部門での取り組みについて」。院内だけでなく院外での地域の公民館での活動も頻繁に行っているようで、大変だけど大切なことだな、と。栄養課からは「濃厚流動食の選択」について。普段は何気なくみている食事内容ですが、その選択のポイントや種類を教えていただきました。当院では採用のない種類の栄養剤もあるみたいですし、退院すれば薬剤が選択されることもあります。薬剤師も知っておいて損はないかなと思いました。

 

さて、私からは「ポリファーマシー」について話をさせてもらいました。今回もスライドとともに話した内容を紹介していきます。

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参加していただいた皆さんに質問してみました。

5剤と7剤に分かれましたが、7剤が大勢でした。職種によっても少し違ったかな、と思います。私は最近、7剤で多いなと思うことが多いですね。

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「ポリファーマシー」という言葉が市民権を得てきて、他職種でも聞いたことがある人が増えてきたり、時々カルテに書いたりもしていますが、剤数だけを指しているわけではないことは理解しておいてもらう必要があるかと思います。

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これが一番よく見るグラフですね。そういえば、しっかり吟味したことないですね。。。

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ポリファーマシー関連の文献をいくつかピックアップしてみました。

詳しくはこちらのブログで。今回紹介した論文はすべて含まれています。

以上をまとめると以下のようになります。

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最近は私見の一番下に書いた「看護職・介護職の手間が増える&インシデントが発生しやすくなる」ってことを意識する機会が多いですね。院内で発生するインシデントで薬関係は多くの部分を占めますが、その中には誤薬が含まれることもよくあります。そもそも薬がなかったら誤薬は発生しませんし、それにかかる手間もリスクも省けます。だから特に自分で管理できない方の薬に関しては、よりシンプルにしていく必要があると思いますし、そこに薬剤師の果たす役割は大きいように思います。

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個人的に一番好きなのは「START/STOPP criteria」ですね。「Beers criteria」と「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」は何でもかんでもダメって書いてある気がして、個人的には無責任なように感じております。あと最近は「リハ薬剤」という概念も登場しております。リハ職が来ていたので挙げてみましたがみんな知らなかったようでした。この概念については賛否あるようですし、私はどちらかというと「否」に近い立場ではあります。でも、薬剤師以外の職種が参考にするツールとしては「あり」なのかなという気もしています。まだ概念がふわふわしているような印象ですので、今後の進展に淡い期待を。。。

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こちらの文献も先ほどのブログで取り上げております。

改めて読み直してみましたが、「アンダーユース」の問題は悩ましいですね。PIMsの割合よりアンダーユースの方が多いという文献が多いですし。実は薬がまだまだ足りないかもしれないという…まあただ、状態を考えて本当にその薬剤の投与が必要かどうかというのはしっかり考えないといけないですね。criteriaを妄信するのでは意味がないですし。難しいですね。

そして、「アンダーユース」なのか「アンダーユーズ」なのかというどうでもいい問題も気になります。。。

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こちらは「https://www.nps.org.au/australian-prescriber/articles/the-prescribing-cascade」から引用したものですが、これも他職種の方々と共有したい、ポリファーマシーにとっては重要な概念ということで取り上げました。いつの間にかこうなっていることもありますからね。。。

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 Reducing inappropriate polypharmacy: the process of deprescribing.(JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):827-34.PMID:25798731」からの引用になります。当たり前のことですが、なかなか難しい。。。

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地味に稼いでます。入院は私が気づけば算定していますが、外来で算定するのが難しいですね。医師がなかなか…

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(先日コクランレビューも出ておりましたが、他職種へ伝えるという意味では解釈が難しかったので今回は省きました。こちらです→Interventions to improve the appropriate use of polypharmacy for older people.【PMID:30175841】)

結局減らして良かったかどうかが分からないんですよね。まあ、本当に重大な影響のある薬が含まれている可能性はすごく低いと思うので、そんな劇的な結果は出ないと思いますが。薬剤費が減るというのはあると思いますけどね。でもそれもそんなに大きくはないかと。ポリファーマシーの薬剤の中には、「どちらでもいい薬」が多いのかな、と個人的には思います。そして、その「どちらでもいい薬」に介入するのはすごく面倒で、、、

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他職種のみなさんに一番伝えたかったのはこれですね。薬が多い=ダメ!なイメージが多いですが、そうとも限らないことが今回の話を通じて少しは理解いただけたかな?と。

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これはポリファーマシーの捉え方で私の一番好きな言葉であり、私のスタンスを表す言葉でもあります。ポリファーマシーは一つの指標としてはとても分かりやすい概念だとは思いますが、決してそれが全てではなくて。薬が出ているということは、そこには必ずきっかけがあって。そこには医師、患者、家族などの気持ちがあるはずで。そしてそこに悪意はないはずです。そういったことも考慮して、見直していくことを検討しないといけないのではないかと考えております。

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今回、「多職種連携の会」で取り上げることを決めてスライドを作っていたら、ふとこのことを思ったのです。薬剤師がみている患者さんの姿というのは日常の生活のうちごく一部で、なんならそれは「仮」の姿なのかもしれません。この会に出席している看護師、栄養士、リハ職やその他の医療介護職種はそれぞれの場での患者さんの姿を見ています。薬を調整する上では、そういった方々からの情報は大変貴重で重要なのではないかと考えました。いいことを気付かせてもらいました。

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最後はこんな感じで薬剤をピックアップして紹介しました。漫然投与となりやすい薬剤や副作用が出やすい・注意すべき薬剤など。私見が多く含まれているスライドなので、詳細は割愛します。。。

 

今回、多職種が集まる場で話をすることで、より自分達の役割が明確になった気がしますし、他職種との連携の必要性についてもよく理解できました。ポリファーマシーに対する理解も深まった気がしますし、新たな気づきもありました。そして、自分たちが普段考えていることを少しでも理解していただければありがたいです。