一般の方向けにサプリメントや健康食品の話をしてほしいという依頼を受け、何を話そうかと考えていました。おそらく一番興味があるのは「効果」についてではないかと思うのですが、商品数が多すぎるので全てを網羅して話すのは実質不可能です。
時々知り合いから、「〇〇って効くの?」って聞かれるんですけど、傷付けないように当たり障りのないことをいう事が多いです。ネットを見ればたくさん情報が出てるのに…でも、その情報の分別が難しいのかな…と。
そんな時にふと頭をよぎったのが「ヘルスリテラシー」でした。
「ヘルスリテラシー」とは簡単に言えば、「健康情報についての情報リテラシー」です。2012年Sorensenらによると、「健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力であり、それによって日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの。「入手」「理解」「評価」「活用」の4つの能力にまとめられ、さらにそれらの能力を発揮する場として「ヘルスケア」「疾病予防」「ヘルスプロモーション」の3つの領域が挙げられる。」と定義づけられています。
サプリメントや健康食品等に関する情報は世の中に溢れています。しかし、それらの情報を利用者がうまく活用できているかと言われれば、そうではないと思います。こういったものにはやや誇張した表現が多いように思いますが、その区別ができてないのではないかと感じています。サプリや健康食品だけでなく、がんや薬のことなどにもそういった情報がかなり出回っているように思います。
(「日本のインターネットのがん情報の半分以上は信頼できない」というような趣旨の報告もあります。こちら→Differences in the quality of information on the
internet about lung cancer between the United States and Japan.J Thorac Oncol. 2009
Jul;4(7):829-33.PMID:19550244 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19550244)
ヘルスリテラシーについて調べていると、「日本のヘルスリテラシーはヨーロッパよりも低い」という大変興味深い論文が発表されていることを知りました。
(こちらです→Comprehensive
health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language
assessment of health literacy.BMC
Public Health. 2015 May 23;15:505.PMID:26001385 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26001385)
(この文献に関しては、先日こちらで取り上げて色々考察してみました。よろしければご参考に)
その理由としては、以下の4つが記載されていました。
①日本とヨーロッパとの比較で最も差が大きかったのは「病気になった時、専門家(医師、薬剤師、心理士など)に相談できるところを見つけるのは?」で、日本では6割が難しいと回答したのに対してEUでは1割と差が開いた。
②ジェネラリストとして訓練されているゲートキーパー(すなわち、プライマリケアの医師または看護師)が不足している。
③情報についていえば、日本の調査での項目の中で、「気になる病気の治療に関する情報を見つけるのは」「気になる病気の症状に関する情報を見つけるのは」「メディア(テレビ、インターネット、その他のメディア)から得た健康リスク(危険性)の情報を信頼できるかどうかを判断するのは」で難しいという割合でも差が大きくなっている。これらからは、インターネットを含めた情報の入手先の問題が指摘できる。
④日本の健康科学・医学系の論文を無料で検索できないという問題もある。世界で出版されている論文は、アメリカ国立医学図書館がPubMedというサイトで、無料で論文のデータベースを検索できるようにしていて、要約を読むこともできるし、無料で公開されている論文ならすぐに読むこともできる。しかし、日本語で書かれた論文の多くは検索対象外になっている。
全て納得できる考察ですし、これ以外にも要因はあるのではないかと思います。
じゃあ自分はどこに貢献できるのだろうか?と考えたところ、上記③のような情報の入手や活用についてだと考えました。
先日、高齢者サロンで、少しだけヘルスリテラシー関連の話をしてきました。週刊誌、書籍、ネットの‘偽’医学情報についての話でした。スライドはこんな感じで。
お聞きしてみると、実際にこういったものを読んだ方もいらっしゃいましたし、それを読んでの不安もあったようです。私の話で少し和らいだのではないかと思っています。このような情報に対して、医療者側が発信していく場というのはとても重要なように感じました。
住民に向けてヘルスリテラシーに関する取り組みをするとなれば、このような「場」をどうやって作るのかが重要なように思います。地域のヘルスリテラシーを高めるにはこういった「場」を多く作り、こちらが発信する情報に触れてもらう必要があります。そういった意味では、病院薬剤師の私からすると、薬局という「場」が羨ましかったりします。
情報の発信に関しては、不特定多数ではなく特定の方々にしていきたいなと考えています。面と向かって対話をしていく方が自分には合っていると思いますので。そして、それを受けた人が周りの方々に伝えてもらえれば、ヘルスリテラシーの高い地域になっていくのではないかなと妄想しております。そんな簡単に上手くいかないでしょうけど。
(こういったことを相互作用的ヘルスリテラシーと呼ぶようです。ちょっと使い方が変かもしれませんが。相互作用的ヘルスリテラシーについてはこちらをご参照ください。ちなみにこの戦略(?)『ヘルスリテラシー-健康教育の新しいキーワード-』のP129~P140に記載されている福岡県古賀市の取り組みを参考にさせていただきました。ほぼパクリかもしませんが。)
こんな感じで、何か地域に向けてできればなぁと考えております。動く前に地域のニーズを調べたいですねぇ。たぶんあると思うのですが。あと地域診断もやってみたいなぁ。。。
最後に、お薦めのヘルスリテラシー関連について書かれているサイトや書籍を紹介して終わりにしたいと思います。本文も大いに参考にさせていただいております。
インターネットサイト
・【健康を決める力】このサイトでヘルスリテラシー(健康や医療に関する情報を探し、理解し、活用する力)を身につけましょう
・朝日新聞アピタル 大野智先生による連載 これって効きますか?
・Pharmatribune「薬剤師目線で考える 今月、世間を賑わした健康情報」
書籍